第20話「暴魔族はるな」(1989年7月8日)
サブタイトルから、大体の内容が分かって、そのオチまで読めてしまうような作品である。
「マスクマン」の41話「女強盗ハルカ&モモコ」と同じと言えば、もうお分かりであろう。
あと、「ゴーグルファイブ」の26話「ブラック!大逆転」も入ってる。

冒頭、港近くの公園(?)の道路上に、勝手にネットを張って、全力でバレーボールを楽しんでいるはるなたち。
さすがに、そんな奴はいないと思うんですが……
そんな彼らの様子を植え込みの陰からズルテンが見ていた。

ズルテン「やれ、モードクボーマ」
ズルテン、連れて来た、いかにも恐ろしげな暴魔獣に攻撃を命じる。
5人もすぐ変身して応戦するが、モードクボーマはかなりの強敵で、一太刀浴びせることもままならない。
やがて、頭部から生えた、サソリの尻尾のような器官をピンクターボに向けて伸ばすが、ブルーターボが割って入り、ピンクの身代わりとなって、首筋を思いっきり噛まれてしまう。
その威力は凄まじく、強化スーツ越しに噛まれたと言うのに鮮血が溢れ出し、ブルーターボは猛毒による激痛に悶えてのたうちまわる。
ズルテン「モードクボーマに噛まれたものは、体中が腐り、やがて死ぬのだ」
ブラック「なんだと!!」
ブルー「ぐわーっ、苦しいーっ!!」
4人は何とかモードクボーマを撃退し、洋平を太宰博士の研究所に連れて行く。
だから、病院行こうよ……
太宰博士は医者でもなんでもないんだから。

はるな「洋平、しっかりして!! 洋平!!」
噛まれた箇所が真っ赤に腫れ上がり、ベッドの上でもがき苦しんでいる洋平を心配そうに見守るはるなたち。
それでも何とか治療を試みる太宰であったが、
太宰「ダメだ、洋平の体内の毒は我々にはまったく未知のものだ。どうしようもない」
と、あっさり匙を投げる。
続いて「喪服あったかな」とでも言い出しそうな軽さであった。

大地「そんなっ!!」
はるな「私のせいだわ、私を庇って……」
洋平「うう……
頼むから病院連れてって」
自分のせいでこんなことになったのだと、強く自分を責めるはるな。
俊介「なんとかならないのか」
シーロン「24時間以内に解毒剤を飲ませなければ洋平は死んでしまいます……でも解毒剤の作り方は暴魔百族の秘密なんです」
力「じゃあ奴らは知ってるのか、解毒剤の作り方を?」
しかし、一応戦隊ヒーローだからうっかり見逃してしまいがちだが、まだ高校生である彼らにはちゃんと両親がいる筈で、洋平が生死の境を彷徨っているというのに、家族にそのことを連絡した形跡が見えないのは不自然だよね。
かと言って、親が心配して様子を見に来る戦隊ヒーローではサマにならないからねえ。
一方、暴魔城では、
ジンバ「ターボレンジャーは5人揃って初めて本当の力を発揮する、一人欠ければ最早我々暴魔の敵ではない」
ジャーミン「そう上手く行くかな」
ズルテン「あ、心配ご無用、この暗闇スズランと金色ヤモリから作った解毒剤を飲ませぬ限り、ブルーターボは必ずくたばる」
ズルテンに手柄を立てられたくないジャーミンが懐疑論を呈すが、シーロンが言ったように、ズルテンは小瓶に入れた解毒剤を見せびらかして断言する。
このまま何もせずに暴魔城でUNOでもしていればズルテンの大勝利だったのだが、

ラゴーン「残りのターボレンジャーを始末し、一気に人間どもを地獄の炎で焼き尽くせ」
例によって例のごとく、首領の余計な一言が、すべてを台無しにしてしまうことになる。
何故、悪の人たちは、「黙ってコトの推移を見守ること」が出来ないのか?
ともあれ、ズルテンとモードクボーマは操車場に出現し、作業員や笑いながら逃げる女性事務員たちを追い掛け回す。

はるな「えい」
ズルテン「あいたーっ」
自分の足の裏で顔を隠しつつ、はるなが強烈な飛び蹴りをズルテンに食らわす。
しかし、ジュンやさやかやめぐみと違って、この衣装ではまかり間違ってもチラがないから、キャプしてても夢がないんだよね。
はるな「解毒剤は何処なの? 今すぐ渡しなさい!!」
ズルテン「ばーかめ、お前に渡すのはコイツさ!!」
ズルテン、車両の上で仁王立ちするはるなの足元にパチンコを撃つ。
その爆発で、はるなの体が宙を舞い、運悪く電柱に激突して気絶する。
そこへ力たち三人が駆けつけ、抱き起こすが、

力「はるな」
はるな「誰、誰なの?」
三人の顔を見たはるなは、安堵するどころか、不安そうに目を見開いて誰何し、警戒するようにあとずさる。
力「えっ?」
俊介「はるな!!」
はるな「離して!!」
俊介の手を振り払うと、痴漢の集団に遭遇したJKのように飛び退き、電柱の陰に隠れる。
俊介「どうしたんだよ、はるな、俺たちだよ、忘れたのか」
はるな「分からない!! 一体私は誰なの、あなたたちは誰なの?」
三人が懸命に呼びかけるが、はるなは両手で頭を抱え、線路の上にしゃがんで震えるばかり。
そう、頭を打ったショックで、大変分かりやすい記憶喪失になってしまったのである。
無論、それはズルテンを騙すための芝居なのだが、木之原さんの演技の上手さに舌を巻いた管理人であった。
演技力では、多分、5人の中で一番じゃないかなぁ。
状況を把握したズルテンは、かっとびズルテンに変身してはるなのそばに行き、

ズルテン「乗れ、はるな、俺はお前の仲間だ」
力「騙されるな、はるな」
はるな「分からない、何も思い出せない!!」
ズルテン「なぁもう、さっさと乗れってんだ」
混乱しているはるなを無理やり自分の背中に乗せ、そのまま連れ去ってしまう。
すべて、はるなの思惑通りであった。
それでもまだ、ズルテンが変な欲を出さずにさっさとはるなを殺していれば、暴魔百族の勝利は揺るがなかったろうが……
一方、洋平の容態は刻々悪化し、紫色の腫れが全身に広がり、息もつけないほどの凄まじい苦痛に苛まれていた。
あまりの激痛に、
洋平「殺してくれ!! 殺してくれーっ!!」 と、
チューリップ熊美(分かるやつだけ分かれ)みたいな絶叫を迸らせるのだった。
太宰「頑張るんだ、洋平、みんな解毒剤を手に入れるために戦ってるんだ。お前も戦うんだ、洋平!!」
その体を押さえながら、病人にムチャなことを言う太宰博士であった。
いや、治療は無理でも、せめて鎮痛剤くらい打ってやれよ。
そこへ力たちから連絡があり、はるなが記憶喪失になって行方不明だと知らせてくる。
彼らの態度から、はるなの策略は力たちも太宰博士も与り知らないことが分かる。

と、はるなを捜索していた大地と俊介の前に、突然、全身黒ずくめのライダーがあらわれ、背中に背負ったマシンガンをぶっ放してくる。
ちなみにサブタイトルの「暴魔族」と言うのは、「暴走族」のもじりなんだろうな。
大地たちも反撃しようとするが、相手の凄まじいバイクテクニック&体術の前に手も足も出ない。
しかし、不意を衝かれたとは言え、本気で戦っている男子メンバー二人に勝っちゃうって、いくらなんでも、はるな、強過ぎないか?
ついで、バイクを飛ばしてきた力と遭遇し、ヌンチャク振り回して戦うが、力の強烈な右回し蹴りを食らい、

倒れてヘルメットが脱げるが、その下から出てきたのは険しい表情をしたはるなだった。
大地「はるな!!」
俊介「そんな馬鹿な……」
廃墟の塀の上に大地たちがあらわれ、敵の正体を知って唖然とする。
はるな、手榴弾を二人に投げつけ、地上に引き摺り落とす。

はるな「ターボレンジャー、お前たちに死を!!」

さらに、マシンガンを容赦なく撃って来る。
ま、ドラマだから三人は平気な顔してるが、ほんとにマシンガンを足元に撃ったら、三人とも足が穴だらけになってる筈だよね。
三人は再び廃墟の上に飛び上がり、
力「よせ、はるな、忘れたのか、お前はターボレンジャー、俺たちの仲間だ」
なんとかはるなを正気に戻そうとするが、

はるな「馬鹿め、お前たちのような醜い生き物と一緒にするな、私は誇り高き暴魔百族の戦士!!」
はるなは、凛とした声を張り上げ、信じ難い言葉を口にする。
それにしても、悪役に扮したはるなが、実にクールで美しい。
客観的に見て、誰がどう見てもはるなも力たちの同類なのに、これだけ綺麗だと、男子たちを「醜い生き物」呼ばわりするのも、妙に納得できてしまう。
木之原さんも、普段、お上品なヒロインを演じている分、こういう、ある意味、ストレスが発散できるキャラを演じられて、ちょっと嬉しかったのではあるまいか。
あと、彼女に限らず、特撮ヒロインが(別の番組で)悪役を演じると、えもいわれぬ魅力を発揮することが多いような気がする。
森永奈緒美さんとか、萩原さよ子さんとか、牧れいさんとか……
「真・仮面ライダー
永遠の序章」の塚田きよみさんもクールだった。
それはともかく、そこへズルテンがあらわれ、力たちの狼狽振りを嘲笑う。
力「ズルテン、貴様、はるなに何を吹き込んだ?」
ズルテン「はるなは生まれたときから暴魔百族、お前たちを地獄に送る使者なのだ」
俊介「はるなの記憶喪失につけ込みやがって」
ズルテン、パチンコを三人の足元に撃ち込むが、
はるな「ズルテン様、そんな攻撃では甘い」
と、横から割り込んだはるなが、三人目掛けて手榴弾を投げつける。
無論、ズルテンを信用させるためだが、これもねえ……
武器はズルテンが用意したのだろうから、その威力を手加減できるはずがなく、いくら直撃しないようにコントロールしたとしても、至近距離で二つの手榴弾が爆発したら、生身の人間が無事でいられる訳がないのである。
然るに、CM後、

大地「どうすればいいんだっ」
案の定、傷らしい傷ひとつしてない大地たちが、太宰博士の研究所にいるのだった。わおっ!!
ターミネーターか、お前らは?
あと、ズルテン、せっかくはるなと一緒にターボブレスを手に入れたのなら、それを分析して似たようなものを作るとか、それくらいのことはして欲しかった。
はるなを暴魔百族の戦士にするつもりなら、もう変身させる必要はないからね。
つーか、記憶喪失なんていつ治るか知れたものではないのだから、無理にはるなを自分の部下にする必要自体なかったような気もする。
ズルテンが、前々からはるなに惚れていたとかなら別だが、普通は、ラゴーンのイケニエに捧げてるところだよね。
しかし、若い力たちはともかく、老練な太宰博士まで、はるなの策略を見抜けなかったのは、ちと情けない。
力たちのいないところで、「ひょっとして……」みたいな思わせぶりな台詞を言わせておくのもありだったかも。
やがて、そのはるなからのビデオ通信が届く。

俊介「はるな」
はるな「だぁまれ!! 貴様たちに呼びつけされる覚えはない、虫けらども」
ドスの利いた台詞回しがめっちゃカッコイイ、ダークはるなさん。
力「目を覚ませ、お前はズルテンに騙されているだけだ」
はるな「黙らぬか、我ら暴魔百族、モアイの丘にて貴様たちに最後の決戦を挑む。今度こそ逃さぬぞ、ひとり残らずこの手で八つ裂きにしてくれるわ。はははは、ははははっ」
はるな、力たちに挑戦状を叩き付けると、哄笑を響かせながら通信を切る。
ところで、モアイの丘ってなぁに?
と思ったら、
文字通りの丘があったのである!! ある意味、今回管理人が一番驚いたのはこのシーンだったかもしれない。
はるなが芝居してるなんてのは、最初から見え見えだからね。

ズルテン「ここが奴らの墓場になるってワケかぁ」
はるか「このはるな、今度こそ奴らをひねり潰し、ズルテン様に永遠の忠誠を誓います」
はるか、ズルテンの前に跪き、改めて自分がすっかり洗脳されていることをアピールする。
もし自分がズルテンだったら、その立場を利用して、はるなにあんなことやこんなことをしていただろう。
が、幸か不幸か、これは健全なちびっ子向け番組なので、
ズルテン「可愛い奴だのう。とりあえず、○○○してもらおうか」
はるか「え……?」
ズルテン「ほれほれ、どうした、何でも言うこと聞くんだろ?」
などと言う、下品な展開になる筈もなく、

はるか「ズルテン様」
ズルテン「なに?」
はるな「……」
力「やめろ、はるな!!」
差し出されたズルテンの手に、こともあろうに口付けをしようとするはるなだったが、そこに力の鋭い声が飛んでくる。

はるな「……」
その声に振り向いたときのはるなの凛々しい顔、頂きました!!
ズルテンは、モードクボーマ、ウーラーたちを呼び、乱戦となる。
力たちはかなりキツいハンディキャップマッチを強いられ、苦戦するが、混戦の中、モードクボーマの触手が、間違ってはるなの首筋を噛んでしまう。
はるな「ズルテン様、解毒剤を……」
ズルテン「あ、家に忘れて来た」 はるな「うそぉおおおおんっ!!」 となったら、はるなの苦労が水の泡になるところだったが、

はるな「ズルテン様、解毒剤を……」
ズルテン「まだお前に死なれちゃ困るってんだ、ほれ」
はるな「……」
ズルいがお人好しのズルテンは、持っていた解毒剤をはるなに与えてしまう。
まあ、はるなを死なせたくない気持ちは分かるが、ここは一旦はるなを連れて引き揚げるべきだったろう。
別にはるなは今すぐ死ぬ訳じゃないのだから……
力「はるな、解毒剤を渡せ、洋平の命が懸かってるんだ」
はるな「取れるものなら取ってみろ」
ズルテン「渡すんじゃないぞ、はるなーっ!!」
はるな、解毒剤の残りを手にしたまま、バイクに乗ってその場から走り去る。
その後、色々あって、はるなは再び戦場に戻ってくるが、モードクボーマを跳ね飛ばし、レッドたちを助ける。

はるな「ピンクターボ参上!!」
ヘルメットを脱ぎ、キリッとした顔で名乗ってから、

はるな「なーんちゃって!!」
とろけるような笑みを浮かべて見せる。
……
めっちゃ可愛いんですけどぉおおおおっ!! 以前も書いたように、木之原さん、好みのタイプじゃないが、たまに見せるこういう笑顔が実にチャーミングだ。
特に、今回は、直前まで冷酷な悪役を演じてきただけに、そのギャップが堪らんのです!!

レッド「はるな!!」
はるな「……」
戸惑うレッドの声に振り向いて、「でへへ」と笑い、ウィンクしてみせるのも激烈に可愛い。
そして、はるなと一緒に、元気になった洋平も駆けつけていた。
ズルテン「これは一体どういうことだ」
はるな「はじめから全部芝居だったのよ」
ズルテン「なにぃ、お前は記憶喪失じゃ……」
はるな「ズルテン、お前の信頼を得て、解毒剤を手に入れるためにね」
ここでやっとネタばらしがされるが、冒頭に挙げた「女強盗ハルカ&モモコ」と「ブラック!大逆転」を足してニで割ったようなプロットだったのである。
こうなればもう書くことはない。
モードクボーマを倒し、事件解決。
ラスト、再び路上でバレーボールをしているはるなたち。
はるなの猛烈なしごきぶりに、大地たちはあえなくへばって座り込む。
はるな「だらしがないぞ、男ども」
大地「あかん、女のパワーには勝てまへん」

俊介「おまけにズルテンや俺達を騙した演技力、女は怖いよ」
はるな「何言ってるのよ、あれは洋平を助けるために仕方なく……」
さすがにはるなが決まり悪そうに言い訳するが、
力「いやいや、はるなは将来男を騙す悪女になるに違いない、な、洋平?」
洋平「俺には何も言えませ~ん」
はるな「うるさい!!」
はるな、バレーボールを地面に叩きつけて黙らせると、
はるな「もう一度特訓しますからね」

ネットの反対側に戻るはるなに、その場に正座して平伏する情けない男子たちであった。
しかし、なんでバレーの特訓せにゃならんのだ?
以上、ヒロインが悪の仲間になってしまう衝撃的なストーリーに、切れの良いアクションと、はるなの魅力を存分に詰め込み、最後は華麗などんでん返しで締めるという、文句なしの傑作であった。
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