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「気まぐれ天使」 第26回「マタハリ恋に死す」 前編



 第26話「マタハリ恋に死す」(1977年3月30日)

 のっけから、

 
 ビキニの水着からはみ出る尻肉が画面いっぱいに映し出され、管理人を小躍りさせる。

 企画部長「セクシーで爽やかな三角ブラのビキニ、鮮やかなインド洋ブルーが……」

 
 企画部長「エキゾチックな興奮を盛り立て……」

 プリンセス下着の、新作水着の社内披露会の進行役も務める企画部長を演じるのは、声優の山田康雄さん。

 山田さんは次作「気まぐれ本格派」にもテレビディレクター役で出演している。

 
 企画部長「え、次はシャープなカッティングの……」

 続いてワンピースを着たモデルが、観客である重役たちの前に出るが、これまた水着から尻肉がたっぷりはみ出しているのが尻フェチ的にはとてもありがたい。

 
 三人目はミニスカつきのワンピースであったが、こちらも、何故そこまで出すの? と叫びたくなるほど尻肉がはみ出ている。

 
 ついでにクローズショットもあって、管理人的には冒頭のこのシーンだけでお腹一杯と言う感じである。

 企画部長「以上で今年のプリンセス水着の説明を終わります、どうかお手元の資料を検討の上、宣伝営業のポイントを早急に決定して下さい」
 専務「企画部長、なかなか素晴らしいわ」
 企画部長「いや、ありがとうございます」

 恐縮した企画部長が、くれぐれも情報漏洩がないよう関係者に念を押すと、

 人事部長「そ、絶対に他者に漏れないように」

 関係者気取りでその場にいた人事部長がしたり顔で繰り返す。

 
 企画部長「人事部長がなんでこんなとこにいるんですか」
 人事部長「私、関係ございませんの?」
 企画部長「関係ないでしょ」
 人事部長「由利ちゃん、お茶ですよ」
 企画部長「それも余計でしょうが」

 企画部長に鋭く突っ込まれて、人事部長はとっとと退散する。

 人事部長が呼ばれてもいないのにいたのは、無論、水着ギャルの肢体を鑑賞する為である。

 その後、忍と榎本がハンバーガーショップで昼食を取っていると、

 
 忍「おい、あれ見ろ」
 榎本「……」

 路上で、由利が見知らぬ男と待ち合わせて、親しそうに腕を組んで歩いて行くのが見えた。

 榎本「うちの社の男じゃないですね」
 忍「ああ……」

 普段、由利が榎本への叶わぬ恋一筋に身を焦がしていることは部の人間ならみんな知っているので、由利に恋人らしい男がいるのを見て、二人とも意外そうな顔になる。

 OP後、宣伝部のオフィスで、さっきとはうってかわって険悪な顔で、企画部長が友江および榎本を追及している。

 
 企画部長「どういう訳ですかねえ、部長?」
 友江「……」

 忍は何も知らずに取引先と騒々しく電話していたが、

 榎本「いい加減にして下さいよ!!」

 突然、榎本の荒々しい怒声が響き、忍たちをドキッとさせる。

 友江「榎本さん……」
 榎本「部長、でもね」
 友江「榎本さん」
 榎本「わかりました」

 どうやら企画部長の発言にカチンと来たらしいが、友江になだめられて渋々引き下がる。

 基本、情報は人に教えられるタイプの忍は、状況がさっぱり飲み込めず、

 忍「なに、カリカリしてんだよ」
 朝子「あら、加茂さん、今日の事件を知らないの?」
 由利「プレジール社が発表した新しいボディースーツのことよー」
 朝子「うちのデザインとそっくりなんだって」
 忍「またか」
 信子「だからさ、部長たちも深刻なんだよねー」

 要するに、新作下着のデザインをライバル会社に盗まれ、自社の製品より早く発表されたらしいのだ。

 忍が「またか」と言ってるので、最近、同様のことが繰り返されていると思われる。

 企画部長「とにかくね、企画部から漏れるってことは絶対にないんだよ」
 榎本「うちの部だってね、マル秘の書類は厳重に管理しております」
 友江「デザイナー関係から情報が流れたってことは?」

 友江が別の可能性を指摘するが、

 
 企画部長「まあないね、他社にデザイン取られたら、奴ら自分の顎が干上がっちまうんだからね」

 企画部長は自信をもって否定する。

 榎本「先週、今週とプレジールに先手を取られっぱなし……今までこんなことなかったのになぁ。ちくしょう、誰が……」
 友江「軽々しい判断は禁物よ」

 企画部長が引き揚げた後、

 忍「こうなったらポスターも出来次第すぐに配布しましょうか」
 友江「そうね、これで水着の宣伝に負けたら責任問題になるわ」

 あたふたと対抗策を練る友江たちであった。

 そこへ珍来軒の出前持ちがラーメンを届けに来る。

 
 出前持ち「わっ、すっげー写真、これ一枚頂戴よ」
 由利「駄目よ、これ、広告に使うんだから」

 で、それを演じているのが、この翌年、若くして亡くなられた個性派バイプレーヤーの畠山麦さんなのだった。

 と、真紀から忍に電話がかかってきて、珍しく会いたいと言う。

 忍が喫茶ルームに行くと、パリの妙子から送られてきたと言うネクタイか何かをプレゼントされる。

 忍「あいつ、金もねえのに無理しやがって」
 真紀「手紙ぐらい出しといてよ……あんまり書いてないんでしょう」

 まだこの時点では、妙子との復縁の可能性もあったことがうかがえるが、その望みも少し後の30話で完全に打ち砕かれてしまうことになる。

 もっとも、妙子に未練があるというのは真紀に対する建前で、目下のところ、頭の中は友江のことで一杯なので、仮に今、妙子が帰国したとしても、忍はあまり喜ばなかったかもしれない。

 ところが忍は、真紀と話している途中、窓越しに、また由利があの男と逢引きしているのを目撃してしまう。

 それだけならともかく、由利は会社の封筒に入った資料のようなものを男に見せているではないか。

 忍「あっ……」

 あんなことがあった直後だけに、忍が由利こそデザイン流出の元凶ではないかと疑ったのも無理からぬことであった。

 忍はすぐそのことを榎本に話す。

 
 榎本「でも、まさか由利がね……」
 忍「わかんねえぞ、お前、だいたい探偵小説でもさ、一番犯人らしくない奴が犯人ってこと多いじゃねえか」
 榎本「女スパイって顔ですかね、由利が」

 が、榎本は甚だ懐疑的で、確かなことが分かるまで口外しないよう釘を刺す。

 ちなみに忍が「推理小説」と言わず、あえて古めかしい「探偵小説」と言う用語を使ったのは、当時日本を席巻していた横溝ブームの影響だろうか?

 関係ないけど、映画やドラマで、石立さんが金田一を演じることがあっても良かったんじゃないかと思うことがある。

 髪型も原作に近いし、石立さんの二枚目半的なキャラクターは金田一のイメージに合ってるような気がするのだ。

 余談だが、「金田一耕助の冒険」の文庫本のカバーイラストの金田一って、なんか石立さんに似てるんだよね。

 忍「スパイ、マタ・ハリか」
 榎本「先輩、古い人知ってますね、また」
 忍「しかし、女ってのはわかんねえぞ」

 第一次世界大戦でドイツ軍のスパイとして活躍した「こと」になっている、有名な踊り子の名前を口にする忍だったが、その連想から、

 
 突然、画面が、モノクロの、第一次世界大戦中の北アフリカっぽいセットになって、マレーネ・ディートリヒorグレタ・ガルボ風のゴージャスな雰囲気を漂わせた由利がしゃなりしゃなりとあらわれて、イギリス人将校らしい軍人といちゃいちゃしていたが、隠し持っていたピストルでその男を撃ち殺す。

 しかし、これじゃあ、女スパイじゃなくて、殺し屋である。

 
 一応、その後で、由利が将校の懐から機密書類を取り出すのだが、「マル秘」と書かれた表をカメラに向けると、なんか、「びっくりカメラ」のネタばらしの時に流れる「テッテレーッ」みたいな音楽が流れるのが、いかにも忍の見ている夢と言う感じであった。

 そう、いつの間にか忍は帰宅して、自分の部屋でそんな夢を見ていたのである。

 忍が悪夢にうなされているようにうわ言を言っていると、隣の部屋から渚と綾乃が飛んできて、枕元に正座する。

 二人「おはようございます」
 忍「ああ、おはよう」

 忍がガバッと上半身を起こすと、小鳥の囀りが聞こえて、すでに朝だと言うことがわかる。

 
 忍「なんだ、夢かー」
 綾乃「色つきでしたー?」
 渚「白黒でしたー?」
 忍「白黒でした」

 ちなみに今回、荻田夫婦と光政が一切登場しない。

 ついでに、荻田家の居間や古本屋のセットが一度も出て来ない。

 こういうのは、全編通してこれだけだったと思う。

 一方、友江のマンションでは、友江と真紀が朝食をしたためていた。

 
 真紀「あ、今日、『気まぐれ天使』だ、見なくちゃね」

 朝刊を見ていた真紀が、メタフィクション的なくすぐりを入れる。

 二人は実の姉妹のように気のおけない会話を交わしていたが、新聞を広げていた友江の目がある一点に釘付けになる。

 
 友江「あら……」
 真紀「なに?」
 友江「まただわ、ひどい……」

 それはプレジールの水着の広告で、今度は、宣伝用のキャッチコピーまで盗用されていたのである。

 例によって、まわりとワンテンポ遅れて生きている忍は、出勤後、同僚たちにその広告を見せられて、漸く「事件」のことを知る。

 忍「あれえ」
 信子「またやられたんだよ、プレジールにぃ」
 忍「これ、まったくおんなじじゃないか、うちの宣伝文に」
 由利「だから大変なのよ、今ね、部長と副部長が社長室に呼ばれてるわ。きっと大目玉よ」
 朝子「大目玉だけで済みゃいいけどさ」

 そこへ友江と榎本が暗い顔で戻ってくる。

 忍「おかしいんだよな、こっちが宣伝しようとする一日か二日前に必ず向こうが先手を打って来るんだよ」
 榎本「起こったことはしょうがない、こちらも対応策を考えないと……みんなも気をつけてくれよな、机の上に資料や宣材を不用意に置かないように」

 さすがの榎本にも妙案はなく、とりあえず、基本的な対策を徹底させるしかなかった。

 
 忍「……」

 一方で、由利に対する忍の疑惑はますます深まるのであった。

 榎本「部長、新しいキャッチフレーズを考え直しましょうよ、一日、二日遅れても」
 友江「ポスターはどうするの? 刷り直しても一週間は掛かるわ」
 榎本「部長、あまり気にしないほうがいいですよ、こういうことはよくあることですから」

 榎本は友江を慰めるが、この状況では気休めにしか聞こえず、友江は険しい表情のまま、

 友江「たまらないわ、こんなことが何度もあるんじゃ……情報を盗まれたのよ、それ以外考えられない」

 と、スパイの存在を確信する。

 二人のやりとりを聞いていた忍は、再び妄想モードに入り、

 
 今度は、どこかの山の中で、ドイツ風の軍服を着た由利を杭に縛り付け、それを榎本扮する軍人が銃殺刑に処そうとしているシーンとなる。

 
 ちなみに、ほんとの無声映画のように、ちょいちょいこういう画面が入る。

 しかし、このシーン、いささかスモークを焚き過ぎて視界が悪くなっており、せっかく男装の麗人となった由利の姿がはっきり見えないのが残念だ。

 なお、銃殺隊の中には忍自身の姿もあったが、狙いをつけていると、由利の背後の山から「アラビアのロレンス」みたいな恰好した渚と綾乃があらわれる。

 で、てっきり由利を助けに来たのかと思いきや、もの珍しそうに周囲を眺めているだけで、

 
 やがて、クラクションのようなジングルにあわせて、カメラ(忍)の方を向き、ニヤッとする。

 榎本はサーベルを振り回して二人を追い払うと、部下に命令を下し、忍たちは由利を容赦なく撃ち殺すのだった。

 まあ、ほんとのマタ・ハリも銃殺刑にされたらしいので、そこからの連想だろう。

 忍は喫茶ルームに榎本を連れて行き、由利犯人説を主張するが、相変わらず榎本は否定的だった。

 と、当の由利が、あの得体の知れない男を連れて二人のところにやってくるではないか。

 由利「ご紹介します、私の友達の両角さんです。こちら副部長の榎本さん」
 榎本「榎本です」
 由利「……と、部下の加茂さん」
 忍「加茂です」

 両角と言う男は如才なく名刺を二人に渡す。

 忍「両角……これでモロズミって読むんですか」
 榎本「ファッションデザイナーですか」
 両角「まだほんのかけだしですが」
 由利「とってもデザインにセンスがあるんですよ、是非うちでも使ってあげてください」
 両角「よろしくお願いします」

 何か下心があるのか、それとも単に売り込みに来たのか、相手の真意を図りかねて探るような視線を向ける榎本と忍。

 
 由利「……」

 対照的に、その横顔にそそぐ熱っぽい眼差しから、由利が両角に好意を抱いているのは明らかだった。

 一方、友江は人事部長に呼ばれ、しばらく休みをとってはどうかと勧められる。

 友江「辞表を出せって仰るんですね」

 人には厳しいが、自分にはもっと厳しい友江は、それをただちに辞職勧告だと受け取るが、

 人事部長「とんでもない、あなたのような新進気鋭の部長さんにやめられてましたら、会社困りますから……でもねえ、おえらい方の中には煩い方もおりましてね、ですから、ニ、三日でいいの、休養なさって、英気を養って……」

 
 友江「謹慎ですか、つまり」
 人事部長「休養よ……幸いね、宣伝部には榎本ちゃんというしっかりした子もおりますし、心配しないでね、旅行でもなさいな」
 友江「……」

 人事部長はあくまで休養だと言い張るが、友江にとっては謹慎処分を食らったも同然で、そのプライドを激しく傷つけられるのだった。

 その後、友江は珍しく自分から榎本を飲みに誘う。

 たぶん、愚痴でも聞いて欲しかったのだろうが、友江を憎からず思っている榎本は喜んで受ける。

 が、その直後、由利にも相談があるので今夜付き合って欲しいと頼まれ、困惑していると、

 友江「聞いてあげなさい、部下に相談されて断るのは管理職失格よ」

 当の友江からそう言われたので、やむなくOKする。

 横で聞いていた忍は、情報を盗まれないように注意しろと小声で忠告するが、

 榎本「ちょうどいいじゃないですか、ほんとに女狐だったら僕が尻尾を掴みますよ」

 榎本は逆に、由利がスパイかどうか確かめる良いチャンスだと意気込む。

 
 一方、誰にも誘われなかった忍はまっすぐ下宿に帰り、銭湯に行った後、机の前に座ってタバコを吸う。

 なお、この、空き瓶の中にマッチを入れておき、タバコを吸うときにはそれを取り出して瓶に巻いた紙やすりみたいなところでマッチを擦る仕草、劇中ではしばしば見られるのだが、当時、実際にそんなことをする習慣があったのだろうか?

 忍「だいじょうぶかな、エノの奴、あの女狐の尻尾を掴めるかな」

 由利がスパイだと決め付けている忍は、榎本のことに思いを馳せ、再び妄想モードになるが、

 
 ここでは、あの酒場にやってきた将校風の榎本が、エマニュエル夫人みたいに籐椅子に座ってしなを作っていた由利に撃ち殺されると言う、ごく短いもの。

 その頃、榎本はドイツ料理の店で、由利とディナーをしたためていた。

 由利は両角のことについてあれこれ話した後、

 由利「婚約しようかと思って」
 榎本「ええっ? 誰と?」
 由利「両角さんと」
 榎本「彼と?」

 いささか間の抜けた反応をする榎本だったが、まさかそこまで進んでいるとは夢にも思わなかったのだろう。

 
 由利「ねえ、どう思います、副部長さえ良いって言ってくれたら、私、お父さんたちにも話しちゃおうかと思うんです。だってえ、いつまでもこの調子じゃ、売れ残っちゃいますもの」
 榎本「そこまで行っていたとは……恋は盲目か」

 榎本は、由利がそこまで深入りしているのなら、本人はそれと気付かず、婚約者に情報を流すこともありうるのではないかと、少し考えを改めるのだった。

 同じ頃、友江は一通の手紙をしたためていた。

 友江「真紀ちゃん、ちょっと頼みがあるの」
 真紀「なにぃ」
 友江「私、明日会社休もうと思うのよ」
 真紀「風邪引いたの」
 友江「ううん、横浜のお寺でね、死んだお父さんの供養してくれるって言うもんだから」

 友江はそう説明すると、明日、榎本に宛てた手紙を届けてくれるよう真紀に頼む。

 ちなみに友江の台詞から、彼女の両親がすでに亡くなっていることがうかがえる。

 そう言えば、忍も、妙子も、そして渚も、両親と死別してるんだよね。

 主人公とヒロインが揃って親無しと言うのは、石立鉄男シリーズにおいてはこの作品だけである。

 後編に続く。
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コメント

無条件

バイプレーヤーの畠山麦さんがこの翌年に亡くなってしまうとは、病いは無条件で襲いかかるものですね😭

Re: 無条件

病気なら仕方ないですが……

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