続きです。 
全日本学生選抜大会の会場では、女子100メートル決勝が行われようとしていた。
ムッチムチの女子高生のおっぱいやお尻を目当てに、スタンドには大勢のおっさんが詰め掛けている。
大山も、忙しいスケジュールの合間を縫って、北川と共に見物に訪れる。
そして、当然、大山を警護している新田親子の姿もあった。

秀夫「……」
秀夫、目敏く友子に気付き、思わずニヤけてしまう。
無論、この時点では、彼女が大山の娘だとは知る由もない。

友子も秀夫の存在に気付き、Vサインを見せる。
なんだかんだで、トモエさんは可愛い!!
秀夫も、思わずVサインで答えてしまう。
雄作「あの子を知ってるのか?」
秀夫「綺麗なフォームで走るんだ、いい子だよ」
雄作「秀夫、大山から目を離すな」
やがてレースとなり、秀夫のコーチのお陰か、友子は見事優勝する。
大山はすぐグラウンドに降り、娘の頭を撫でる。
大山「うさぎ、良く勝った、いい根性だ」
友子「お父さん、見に来てくれたの、ありがとう」
それを見ていた雄作は、秀夫に、二度と友子と付き合うなと怖い顔で命じる。
秀夫もさすがにショックを受けたようで、友子に言葉も掛ける余裕もなく、倉皇としてその場を離れる。
その晩、大山一家は料亭で友子の祝勝会を開く。
大山「友子の優勝は我が大山家の誇りだ、うざき、本当に良くやったな、お前はワシにないものを手に入れた、名誉だ、一等賞だ」
鈴代「あなたがわざわざ応援に行って下すったからですよ、私はもう、友子が負けたらどうしようかと思って……」
大山「なんだ気の小さい奴だな、うさぎは絶対に勝つ、ワシは信じていたぞ」
気の早い大山、今度はオリンピックだと言うが、友子は謙遜して、
友子「オリンピックなんてとても無理です」
大山「何が無理だ、人間努力して出来んことはない。ワシを見てみろ、人の10倍20倍努力したからこそ今日があるんだ」
大山がそう言って励ますが、

政子「友子にはお父様の力も根性もないわ、今日勝てたのだってフロックじゃないの」
空気を読むことを一切しない政子が、横から口を挟んで友子の勝利にケチをつける。
案の定、
大山「政子、お前はなんだ、バレエ、ピアノ、生け花、みんな中途半端でやめたろう、一度でも賞を取ったことがあるのか、だまっとれ!!」
たちまち父親にやり込められる。
豊は、大学の恩師の壮行会があるとかで、早々に退席する。
酒が入り、すっかり上機嫌になった大山は、鈴代に三味線を弾かせながら、ノリノリで阿波踊りを踊り始める。

父親に誘われて、少し恥ずかしそうに踊る友子。
ほとんど「素」で楽しんでいるようなトモエさんが可愛いのである!!
その後、トイレに行った帰りに、友子は廊下に立っていた秀夫と会う。

友子「こんばんは」
秀夫「君か」
友子「同じ日に三回も会うなんて……ここへはお食事にいらしたんですか」
秀夫「今日はおめでとう、堂々と勝ったね」
友子「あなたがスタートを直して下さったお陰です、本当にありがとうございました。父と母に会っていただけますか」
秀夫「お父さんに?」
何も知らない友子、渋る秀夫を説き伏せ、引っ張るようにして父親のところへ連れて行く。
しかし、いくら友子にせがまれたからって、勤務中、のこのこ大山の前に顔を出すというのは、秀夫らしくない態度である。
また、それを見ながら雄作が息子を止めようとしないのも、かなり変だ。
ま、これも、ストーリー上の都合なので、仕方ないのだが……
友子は彼氏でも紹介するような気分で秀夫を両親に会わせるが、大山はたちまち鬼の形相になって秀夫から友子を引き離し、秀夫を呼びに来た雄作と激しく口論してから追い払う。
さらに、秀夫とは二度と会うなと頭ごなしに言いつける。
何も知らない友子は当然反発し、
友子「どうしてですか、どうしてコーチしてもらっちゃいけないの? 理由を教えてください、はっきり言ってよ!!」
大山「つべこべ言うな!!」
大山、食い下がる娘の頬を音高くビンタする。

鈴代「あなた、この子はね、生まれてから一度だって人に叩かれたことはないんです!! なんてひどいことを……あんまりじゃありませんか、ええ、どうしてくれるんです? あなた!!」
普段は大人しい鈴代だが、こと娘のこととなると人が変わったように強くなる鈴代が涙混じりに夫を詰め寄っていると、友子はいたたまれなくなったように部屋を飛び出す。
鈴代もすぐ追いかけ、柱にしがみついて泣いている娘の肩に手を置く。
友子「どうして、どうしてこんなことになるの?」
鈴代「母さんだってさっぱり分からないけどさ……でも、友子、父さんはお前が憎くて叩いたんじゃないよ、あれはほんの弾みさ」
そこへ大山がやってきたので、鈴代は改めて問い質す。
鈴代「何故友子叩いたんです? どうしてあの人と付き合っちゃ悪いんです?」
大山「あの親子はな、俺をつけまわして刑務所に入れたがってる刑事だ」
鈴代「どうしてまたあなたを?」
大山「ワシには全く身に覚えがない」
ほんとは数え切れないほどあるくせに、いけしゃあしゃあと言ってのけると、

大山「友子、お前があの男と何処で知り合ったか知らんが、ワシが付き合うなと言っても当然だろう、違うか?」
友子「……」
大山「友子、お前は俺のうさぎだ、可愛いうさぎなんだ、いくら怒鳴っても殴ってもお前だけは大事なんだ。俺の宝だ、分かってくれるか?」
友子「……」
大山はいつものように友子の頭に手を載せ、彼なりの表現で娘への愛を伝えるが、初めて父親に殴られたショックで、友子は耳を貸そうともしない。
大山「そうか……勝手にしろ」
娘のご機嫌を取る為に自分の非を認めるような大山ではないので、不機嫌そうに言い捨てて立ち去る。
鈴代「友子、お父さん、いつもああやって威張ってるけど、本当は一人ぽっちの寂しい人なんだ、だから、私たちまで見放しちゃ、かわいそうじゃないか……なんてったって、赤ん坊のお前をここまで育ててくれた親なんだから……そりゃ、母さんだって悔しいさ、腹も立つけどさ、でも、やっぱり父さんは父さんなんだよ。だから大事にしてあげようじゃないか」
友子「お母さん、分かった、お父さんと仲直りする」
鈴代が諄々と言い聞かせると、友子も素直で親孝行な娘なので、涙を拭いて父親のあとを追う。
鈴代は二人の為を思ってしたことだが、結果的に、それが娘を不幸のズンドコに叩き落すことになる。
ちなみに鈴代の「赤ん坊のお前をここまで育ててくれた親なんだから」と言う、やや大仰な言い方も、さりげない伏線になっているのである。
なお、大山が今まで、汚く強引な、時には法に触れるようなやり方も辞さずに会社を大きくして来たことは事実だが、あくまで一家の主婦として夫に尽くして来た鈴代は、夫の仕事についてはほとんど何も知らないのである。
大山、ひとりで料亭の前に停めてある車までやってくるが、やはり友子のことが気になるのか、路上でタバコを吸いながら、チラチラと玄関のほうを見て、なかなか車に乗ろうとしない。
だが、その時、数メートル離れた街路樹の陰から、矢野がライフル銃で大山の命を狙っていたのである。
そして、大山を挟んだ反対側の歩道には、警護の新田親子が控えていたが、ここでやっと矢野の存在に気付き、

雄作「足を撃て!!」
息子と一緒に銃を向けるのだが、これはベテラン刑事らしからぬ判断ミスであったろう。
今は大山の命を守ることが第一なので、すぐに大声を出して矢野を威嚇すべきだった。
だいたい、銃撃犯との間に護衛対象が立っているというのに、銃を撃とうという発想がおかしいのである。
大門軍団じゃないんだから……
まあ、もし雄作が大門だったら、夜中なのにサングラス掛けたままでも、余裕で矢野を撃ち殺していただろうが。
つーか、都内全域に非常線張ってるのに、なんで簡単に大山のところに矢野が辿り着けちゃうわけ?
もっとも、これにはちゃんとからくりがあって、劇中では省略されているが、ひそかに矢野とつながっている北川が、大山の居場所を矢野に知らせてやったのだろう。
それはともかく、この時、最悪のタイミングで友子が父親の前にあらわれる。
友子「お父さん!!」
感極まったように父親の胸に飛び込むが、

その瞬間、矢野が引き金を引き、新田親子も応射する。
複数の銃声が交錯する中、一発の弾丸が友子の背中に命中する。
友子が直ちに救急車で病院に運ばれたのは言うまでもないが、その病院は豊の勤めている大学病院で、しかも、ちょうど豊たちが、恩師である江崎を見送りに救急用の出入り口から出てきたところだった。

江崎「どうしました」
鈴代「江崎先生、友子が背中を撃たれて」
江崎「撃たれた?」
大山「鉄砲で撃たれたんだ」
江崎は、友子の傷や瞳孔を調べると、
江崎「あ、私、これから出掛けるんで……お大事に」
鈴代「おいっっっ!!!」 無論、宇津井健演じるキャラクターがそんなことをする筈がなく、江崎自身の手で摘出手術が行われ、豊もそれを手伝う。
手術室の前で、家族や警察関係者が沈痛な表情で手術が終わるのを待っている。
鈴代はほとんど半狂乱で、泣き喚きながら夫にむしゃぶりつく。
鈴代「あなた、友子は死ぬんですよ、死ぬんですよ……どうしたら良いんです。どうしたら」
大山「落ち着け!! 騒ぐな、俺だって泣きたいんだ」
大山、妻を座らせ、その肩をしっかり抱き寄せてやる。
政子はこんな場合でも空気を読むことは一切せず、

政子「お父様が撃たれないでよかったわ、ねえ、北川さん」
北川「……」
政子「ねえ、ほんとによかったわ、お父様でなくて友子で」
北川「……」
そのあまりに無神経な発言に、北川は、バケモノでも見るような目で政子の顔を見詰める。
予想されたことだが、大山が立ち上がり、
大山「友子はな、今、死ぬか生きるかの手術を受けてるんだ、黙ってろ!!」

政子「ああっ!!」
思いっきりその顔をぶん殴る。
政子が鈴代たち親子をいびる様子は不愉快だが、その都度、大山に怒鳴られたり殴られたりするので、視聴者もあまりストレスを溜めることなく鑑賞できる。
その辺も、このドラマの成功した一因であろう。
また、政子が父親に叱られるのを承知で憎まれ口を叩いたり、KY発言をしたりするのは、友子たちが憎いというより、そうやって父親の関心を引こうとしているのではないかとも取れる。
つまり、幼少時からあまり父親に相手にされず、母親も早くに亡くした政子は、親の愛情に飢えており、たとえどんな形であれ、父親にかまって欲しいと言う願望があり、それが友子たちに対する攻撃的な態度になってあらわれているのではあるまいか。
そう考えれば、政子が憎たらしいというより、むしろ哀れに思えてくるから不思議である。
手術中、友子の体から弾丸が摘出され、すぐに警察による鑑定が行われるが、それは、矢野のでも雄作のでもなく、秀夫の拳銃から発射された弾丸だった。
やがて手術が終わり、江崎が出てくる。
江崎は家族と警察に対し、簡単にオペの内容を説明し、

江崎「幸い手術は成功しまして、生命は完全に取り留めました」
大山「おい、うさぎは助かった、俺のうさぎは助かったぞ」
鈴代「先生、友子は本当に死なないんですね」
江崎「安心して下さい、一ヶ月もすれば完全に治ります」
江崎の言葉に、鈴代は思わずその肩に縋って嗚咽し、

全身を緊張させて聞いていた秀夫も、安堵のあまり顔を伏せ、込み上げる喜びに両手を強く握り合わせるのだった。
それが、かりそめの喜びとも知らず……
さて、これが現実の出来事なら、警察はなんのかんのとこの事実を隠蔽しようとしたかもしれないが、これはドラマなので、水谷はその場で友子を撃ったのが秀夫であることを大山に告げ、心から謝罪する。
大山、秀夫の胸倉を掴むと、
大山「貴様ぁ、凶悪な暴力団を逃がして俺の娘を撃つとは、それでも刑事か、警察官か?」
秀夫「……」
大山「俺は許さん、断じて許さんぞ、どんなことをしても責任は取らせる」
翌日の早朝、江崎は豊たちと一緒に羽田までやってくるが、険しい顔で豊を呼び寄せ、

江崎「大山、この際はっきり言っておく、実は友子さんのことだ……アイビリューシーハズアハード……」
江崎の謎めいた言葉を聞いた豊は、世にも悲痛な顔になり、
豊「じゃあ、友子は一生下半身麻痺するんですか? 一生歩けないんですか?」
江崎「今言えることはたった一つ、人間絶望したらおしまいだ、何も生まれないぞ」
そう、友子は一ヶ月で完治するどころか、一生歩けない体になってしまったのである!!
ま、それは良いんだけど、問題は、なんでそのことを江崎自身の口から家族に説明しなかったのかと言う点である。
いくらアメリカに行かなきゃいけないからって、その役目を弟子である豊に押し付けて渡米しちゃうのは、いかにも無責任のように見える。
まあ、それをやると大山に口汚く罵られるのは目に見えているので、特別出演の宇津井健を、初回からそんな目に遭わせる訳にはいかないと言う、スタッフの苦肉の策だろう。
ラスト、病院の個室で、まだ麻酔から醒めない友子の手を握り締めて鈴代が嬉し涙にくれていると秀夫がやってくる。
秀夫「本当にすいませんでした。みんな僕のせいです。友子さんが死んだらどうしようかと思いました」
鈴代「安心して下さい、友子はたったひと月ですっかり治るんです。元の体に戻るんですよ」
江崎のことを信じきっている鈴代は、怒色も見せず、笑って秀夫を慰めるが、秀夫は気が済まないように友子の手を握りながら、
秀夫「許して下さい、お詫びします」
鈴代「あなたが悪いんじゃありませんよ、勝手に飛び出した友子が悪いんです」
秀夫「ま、それはそうなんですけどね……」
鈴代「えっ?」
秀夫「えっ?」
途中から嘘だが、秀夫は何度も何度も鈴代と友子に謝って病室を出て行くのだった。
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