「時をかける少女」(1983年) その4
- 2013/04/04
- 20:25
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驚いたことにまだ続くんですねえ。
一応今回はストーリーの核心部分に触れるので、ネタバレ注意と言っておきます。
まあ、30年前の映画なんであまり気にしなくてもいいとは思うが……

土曜の理科実験室にタイムリープした和子の前に現れたのは深町だった。
和子「あなたは誰なの? ほんとのこと言って」
深町「僕は未来人なんだ」
和子「まさか」
深町「僕は2660年の薬学博士」
和子「だって、まだ子供!」
深町「いや発達した教育システムの結果なんだ」
と、映画では深町の台詞ひとつで片付けているが、この辺は原作とは大きく異なるところである。
続けて深町は2660年の地球では人間のせいで緑がほとんどなく、薬学上必要な植物を採取するため、タイムリープしてきたと言う。
そして、ラベンダーの温室を持つ深町夫婦の孫として暮らしてきたと言う。彼は周囲の人間に自分に都合のいい記憶を植え付けることができるため、和子も深町とあたかも幼い頃から知り合っていると思い込んでいたわけだが、実際はせいぜい1月しか一緒に生活していないとも打ち明ける。つまり、冒頭のスキー教室で夜空を見上げていた時、実は初めて深町と出会っていたのだった。
(それを踏まえたうえでオープニングを見るとまた新たな感動が起こるのである)

和子「それじゃ……それで、いつまでいられるの?」
深町「今日、そう今限り」
(中略)
和子「行かないで」
深町「帰らなくてはいけないんだ」
和子「じゃ私も一緒に行きます」
深町「だめだ!」
真実を知らされ、しかも突然の別れを告げられて惑乱しつつも深町への恋に殉じようとする和子。感動のシーンであります。
なお原作では、そもそも深町はラベンダーを材料にしたタイムリープの薬品をたまたま開発し、間違ってこの時代に来てしまった設定である。だから、彼は元の世界に戻るためにラベンダーを採取して研究していただけだったのだ。また、彼は実は11才で、和子よりもずっと年下なのだった。未来の子供は発育が良く、「発達した教育システム」のお陰で極めて早い段階で専門的な知識を得るのだった。
この「教育システム」について原作では結構詳しく書いてあるが、面倒なので省略する。
それと、映画ではどちらも少しずつ相手に恋心を抱き、むしろ和子のほうから好きになっていくのだが、原作では逆に深町の方から別れ際に告白され、その時点で取ってつけたように和子も深町に対する気持ちに気付く、と言う感じになっている。元々原作は短編なので、タイムリープに関する描写がメインで、その辺の恋愛模様はあまり深く書かれていないのだった。
さて、未来へ帰るだけでなく、自分に関する記憶まで消していくと言う深町に、さすがにショックを受ける和子は、必死で記憶を残してくれるよう頼む。
ここで、和子がたとえ記憶が消えようが深町を愛し続けると宣言するくだりは目頭が熱くなる名シーンだ。

深町「僕も好きだよ、未来よりこの時代が……みんなのんびりしていて優しくて温かいひとばかりで……でも、僕の時代には僕の責任があるんだ」
子供がイヤイヤするように、ひたすら首を振る和子に対し、
深町「じゃ、お別れだ」とあまりに残酷な別れ……
しかも、原作では深町自身の記憶はそのままだが、映画では深町も含めて全員の記憶を消さなくてはならないとなっているので、余計に切なさが募るのであった。
和子「もう行ってしまうの、いやよ、イヤ、イヤ……私、分からないわ、この気持ちはいったい何? 胸が苦しいわ、分からないわ、これは愛なの?」
深町「それは……やがて分かる時が来るよ」

それでも深町はまたいつかこの時代に来るかもしれないと含みを持たせ、和子に希望を持たせる。深町は何の説明もなく黒い墨のような薬品を彼女の顔に塗りたくるのだが、これはタイムリープを治すための薬なのだろうか?

深町は再会してもそれが自分だとは分からないと言うが、
和子は「分かるわ、私には」とキッパリ断言するのだった。
頬を触る深町の手に自分の手を合わせつつ、ラベンダーの香を嗅がされて意識を失っていく和子……

次のカットでは、和子の家のダイニングで、すっかりおっきくなっちゃった和子の妹が鏡に向かってブラッシングしている。
この成長した妹を演じているのが、「反逆同盟」のアキ子さんこと、岡寛恵さんであります。ネットのデータが正しければ、撮影時、彼女はまだ11才だったことになるが、てっきり15才の知世さんより年上なのかと思ったくらい、発育がいい。
あ、奇しくも原作の深町と同じ実年齢だな。
日付は、正確にあれから11年経った1994年4月16日土曜日。
和子の方は、

深町の影響をモロに受けて、薬学の勉強に励んでいた。今は大学の研究室に勤めているのかな? ま、原田知世がカツラ被ってるだけだが。
私は、この、いかにも分かりやすいカツラを見ると、

ついつい「反逆同盟」の仙道敦子さんを思い出してしまうのであった。
ここで、吾朗から電話がかかってきて誘われるのだが、忙しいからと断ってしまう。結局、深町の記憶が消えてしまっても、吾朗はあくまでも幼馴染と言うことなのだろう。

で、廊下へ出たところで、再び未来からやってきた深町とでくわすのだった。

無論、互いに相手のことは覚えていない筈なのだが、ふたりとも何かを感じている空気を漂わせつつ、物語は終わる。
なお、原作では深町が未来へ帰った後、吾朗が気を失っている和子を発見する件まで書かれているが、漠然と未来で運命の人と出会えると確信している和子を描く程度で締め括られている。
映画のようにここまではっきり再会シーンを描くのは、まあ、賛否両論あるだろうな。
次回はいよいよ「カーテンコール」です。
つづく。
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