間が空いたけど、続きです。
その4は、第三回です。
しかし、「犬神家」は全五回だが、この原作にはちょっと長過ぎることに気付いた。角川の映画でも150分で、ドラマに換算して三~四回分くらいなのに、それよりさらに一回分長いのだ。だから、どうしても中盤以降、間延びしている感じがする。

それはさておき、犬神邸の周囲に暗躍する復員服の男。彼は、かつての犬神家の本宅で、今は廃墟になったところに隠れ住んでいる様子。
このセットとか、幽玄な雰囲気でとても感じが出てます。

波打つ湖岸の映像も美しい。
珠世の花婿候補の一人、スケタケが殺されたため、俄然、やる気を出しているスケトモさん。残るスケキヨさんは顔がひどく毀損しているので、常識的に考えれば、珠世さんが選ぶのはスケトモさんだけのように思えるのだが、珠世さんに言い寄るものの、あっさりとふられてしまう。

その様子を見ていた小夜子(スケタケの妹)に冷やかされるスケトモさん。彼らはいとこ同士だが、恋愛関係にあったのだ。この時点で、小夜子さんは妊娠している筈だが、タバコはやめたほうがいいと思うぞ。

スケタケさんの通夜の席で、犬神家の人々を考え深く観察する金田一。このカットが、DVDのジャケットに使われているのだと思う。
その後、原作どおり、復員服の男が屋敷に潜入し、追いかけたスケキヨさんが逆にノックアウトされて、醜く潰れた顔を金田一たちの前で晒すと言うシーンとなる。

ここで、後から来た母親の松子が、我が子の顔を見られまいと必死に体で金田一たちの視線から息子を庇おうとする姿は、原作にも映画にもない演出で、いみじくも親心が表現された演出である。

一方、金田一と古舘弁護士は、那須神社へ赴き、秘蔵の古文書を見せてもらい、犬神佐兵衛の禁断の過去を知る。
ややこしくなるので要点だけ書くと、佐兵衛は恩人である野々宮神官の妻と
ゴーカイなセックスをしてしまい、生まれた子供は野々宮神官の子供として育てられ、その娘が珠世さんになるのだった。つまり、
珠世は恩人の孫ではなく、佐兵衛自身の孫だったのだ。

その珠世さんは、湖にボートを浮かべてたそがれていたが、スケトモがランチで近付いてくる。彼女は騙されてスケトモさんに拉致されてしまう。
スケトモさんは、こうなったらもう珠世さんを手篭めにするしかないと思い立ったが吉日だったのである。この展開は、原作・映画と全く同じである。
スケトモさんは鼻息も荒く珠世さんを例の廃墟に連れて行き、ハメようとするのだが、結局、寸前で謎の復員姿の男に邪魔される。珠世さんは助け出され、スケトモはひとり椅子に縛り付けられる。

さて今回も、宿の女中・キヨちゃんの世話女房ぶりは健在である。
キヨ「あたま、もう、めいにち(毎日)洗ってるのかねぇ、こんな……」
と、殺人フケが発生することで有名な金田一の頭を優しく掻いてくれるのだった。ワシもこんな嫁が欲しい。

そのスケトモさんが行方不明なので探してくれと電話してくる犬神家の人たちに、表面的にはへいこらしつつ、腹の中ではいまいましく思っている橘署長。
橘「三日もかあちゃんや坊主の顔を見とらんのだからねえ」
金田一「僕だって東京が恋しいですよ」
橘「そうだろう、あ、そうだ、今夜ウチ来いよ、鯉こくで一杯やろう」
金田一「鯉こくですかぁ……」
金田一は何故か、鯉こくが好きではないらしい。ただ、その前に「東京が恋しい」と言っているが、事件の真っ最中だと言うのに、金田一がそんなことを言う筈がない。

家族がいればともかく、東京の事務所にはおばちゃん(野村昭子)が待ってるだけだしね。そのおばちゃん、金田一に電話してきて家賃が払えず電気も止められそうだと嘆くうちにほんとに電気が消えるのだった。

スケトモさんの消息については触れないまま、今回のクロージングは、金田一の毎度お馴染み逆立ち。

廊下のカーテンが揺れて白い布を被った人影が現れ、

それが咄嗟にスケキヨさんのマスクに見えて、ぎゃっと叫び声をあげる金田一。

が、それは洗濯物を運んでいたキヨちゃんだった。
金田一「ぱかっ、おどかすんじゃないよ」
キヨ「くはははっ、臆病者っ」
と言う、実にのどかなシーンで「つづく」のだった。