Jホラーの金字塔「リング」シリーズのスピンオフ作品。2000年上映。
物語は30年前の貞子の青春時代を舞台にして、いかに貞子が呪いの化身となったかを描いている。貞子は劇団青い鳥か何かに所属していて、ストーリーはほぼその中の人間関係の描写に費やされている。並行して、貞子を追う女性新聞記者のリサーチの様子が描かれる。
この間、改めて見たら、怖くて面白かった。脚本・高橋洋、監督・鶴田法男と言う、最強タッグによるものだけはある。もっとも、映画の人気シリーズを時間を遡って描いているので、原作「リング」との矛盾は大きく、その辺が気になったけど、まあ映画版の起源とすれば、それほど問題ではない。
小説版は読んでない。読んでから書くべきかも知れないが、鈴木光司の小説って「リング」「らせん」以外、読む気がしないのだ。
映画シリーズは、ま、概ね満足すべき内容だが、原作における貞子の両性具有や、天然痘などの重要なパーツが排除されているのが、少し残念である。
で、ヒロインは「トリック」でブレイクする前の仲間由紀恵。これがきっかけで「トリック」に抜擢されたそうで、そう言う意味では彼女にとっては記念すべき作品だろう。自分も、「トリック」を除けば、この作品での仲間由紀恵が一番好きかも知れない。彼女には陰性のキャラがよく似合う。

しかし、芝居はうまくないなぁ~。この頃から、ほぼ進歩がない。
なお、この作品、女優陣が妙に豪華なのにも今回気付いた。上手い人ばっかり出てる。だから余計、仲間さんの演技の拙さが印象に残るのかもしれないが、周りが上手い人だらけだと、逆にヒロインはこういう人材の方がバランスが取れるものなのだ。

最初に「呪い」の犠牲になる奥貫薫さん。色っぽいなぁ。

劇団のベテラン女優に、高畑淳子さん。

貞子の秘密に迫ろうとする新聞記者に、田中好子さん。

チョイ役だけど、貞子の昔の担任教師を角替和枝さん。この人もいい女優さんですね。

んで、サブヒロインとして、我らが麻生久美子さん。劇団のスタッフで、孤立気味の貞子に同情しつつも、恋人の田辺誠一を貞子に取られそうなのでやきもきするという美味しい役。
このツーショット、今考えるとなかなか凄い。
男優陣は、

今言った田辺さん(劇団の音響係)や、

貞子の父親役に、往年のヒーロー俳優・伴大介(直弥)さん。
鶴田監督の昔馴染みだと思うが、水上竜士さんも出てらっしゃる。
ストーリーは……、新しい公演の練習が行われている最中、次々と貞子の周囲に異変が起きる。ヒロインの急死で、主役に抜擢される貞子だが、舞台の本番中、さらなる怪異現象が発生し……と言う感じ。
仲間由紀恵、田辺、麻生の三角関係がドラマの軸となっており、これは普通に面白い。
仲間由紀恵のリアル山田奈緒子っぽい不幸背負い込みキャラも、なかなか魅力がある。
以下ネタバレあり。

公演での騒ぎから、劇団員はヒステリー状態になって、嫌われ者・貞子はリンチされて死んでしまう。
この辺の仲間の芝居、「トリック」と全く同じなので笑ってしまった。笑っちゃいけないけど。
さらに劇団員たちは貞子の父親のところへ押しかけ、「もう一人の貞子」も殺そうとするのだが……。
「もう一人の貞子」ってなんやねん。典型的な後出しジャンケンである。

で、いろいろあって、劇団員はどんどん死んで行き、最後に皆さんお待ち兼ねの
あの貞子さんが登場されます。このシーンは確かに怖い。

ビビる田中さんと麻生さん。
そして最後、呪いのビデオに出てくる井戸に絡む悲劇が……。
てな感じになっております。
なお、作品そのものもだが、DVDの仕様もなかなか豪華で、こちらもちょっと紹介しておこう。

撮影順にまとめられた親切なメイキング映像。

舞踏家に
貞子音頭を習っている仲間さん。

未公開シーンもあるでよ。
ところで、仲間さん、監督にしごかれたそうですが、しごかれてあの演技なのかとちょっと失礼なことを思ってしまいました。
世評は芳しくないようだが、個人的にはとても好きな映画です。ホラーと言うより、悲恋物語と言う感じだけどね。
ただ、後発のBDのほうには、こういう特典がついてないみたいだ。よく分からないけど。