映画「トイレの花子さん」（1995）

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　前から紹介したかったけど面倒だまたにしよう的な感じで先延ばしにしていたが、きりがないので取り上げたい。

　トイレの花子さんと言えば、90年代に妙に流行っていた都市伝説的な怪談で、色んなメディアで展開していたのを思い出す。

　ま、大抵は箸にも棒にもかからないけれど、この松岡錠司の劇場版だけは、子供たちの揺れ動く微妙な心理を繊細なタッチでとらえていて、個人的には傑作だと思う。

　遺憾ながら、ＤＶＤはないので、ＶＨＳを買い、デジタル化している。

　詳しくストーリーを書くのは面倒なので、今回はごく簡単に紹介したい。

　小学校が舞台だが、高学年と、低学年、それぞれで主人公がいる感じで、それぞれの視点、描き方で並行してストーリーがつづられている。

　
　低学年部門は、前田愛ちゃんがヒロイン。

　
　その兄で、高学年部門担当の小生意気なお子様（井上孝幸）。

　その地区の学校では、頻々と校内荒らしのような物騒な事件が起こっていた。ついでに「トイレの花子さん」の噂も広がっていた。

　
　低学年部門のいじめっこである、浜丘麻矢ちゃん。その対象は前田愛で、彼女は何かといじられていた。イジメというほどではない。

　その前田愛、帰宅途中で、

　
　見知らぬ綺麗なお姉さんに話しかけられる。高学年部門のヒロインの水野冴子（河野由佳）である。彼女は引っ越してきたばかりで、学校の場所を聞いてきたのだった。

　基本的には子供向けの映画だと思うが、キャストは豪華である。

　
　前田愛の父親が、トヨエツで、祖父が梅津栄である。

　
　前田愛の兄の担任が、大塚寧々である。

　
　妻に先立たれているトヨエツと、この担任の先生がちょっといい感じなのが微笑ましい。

　さて、早速怪奇な事件が起こる。放課後の校舎で、女生徒たちが不審者に追い掛け回されるのだ。

　
　ここ、女生徒たちが中庭を隔てたむかい側の校舎の職員室に向かって、必死に助けを求めるシーンがあるのだが、

　
　雨の音に消されて全然気付かない先生やトヨエツ（保護者面談か何かで来ていた）たちの様子を無音で映すという演出が冴えている。

　ま、実際に見てもらわないと分からないと思うが。

　学校で飼われているヤギの頭が切断されていたり、結構ショッキングであるが、この事件で転校生の水野冴子が犯人だと疑われ、それがさらにエスカレートし、彼女が「トイレの花子さん」だと言う噂が学校中に広がる。

　冴子は事件のショックで口が利けなくなる。その上、学校の中で孤立してしまう。

　
　彼女のことを慕っていた前田愛もつい彼女を避けてしまう。かわいそう。

　で、

　
　掃除の時間、窓から身を乗り出すようにして掃除をしている冴子。

　
　それを反対側の教室からじっと見ている前田愛。

　
　うつろな表情で、窓を拭いていた冴子は、雑巾を落としてしまい、それを追うようにしてそのまま飛び降りてしまいそうな感じになる。……少なくとも前田愛にはそう見えた。

　ここで、前田愛が物凄い勢いで教室を飛び出し、廊下を懸命に走って高学年の教室へ向かい、

　
　冴子の腕を持って「（死んじゃ）だめっ」と叫ぶのが、なかなか感動的なシーンになっている。

　その後もいろいろとドラマがあるのだが、いちいち書いていたらきりがないのでやめておく。無論、最後は誤解も解け、冴子もしゃべれるようになり、

　
　ほんとうの猟奇殺人犯（緋田康人）が最後に登場するが、トヨエツや子供たちの活躍で退治されるのだった。

　ラスト、とってつけたように「本物の」トイレの花子さんの導きで子供たちが学校に集まってくると言うシーンがあるが、これはちょっといまいちだったかな、と。

　
　ほかにも、前田愛が無人の校舎の物置を見るシーンなんかも、独特の不気味さがあってお気に入りのカットになっている。

　
　竹中直人も出てるよ。

　と言う訳で、ホラーと言うほど怖くはないが、子供たちのドラマをしっかり描いてとても面白いので、機会があれば是非見て欲しい。


　うう、まあ、なんだかんだいって、

　
　河野由佳ちゃんが可愛いのだった。それしかないんかお前は。

　ほかにも、前田亜季や栗山千明が出てたりします。ほんのちびっこだけど。


　なお1998年の堤幸彦の「新生トイレの花子さん」、こちらにも前田愛、浜丘麻矢が出ているが、こっちは全然面白くないので気にしないように。