第12話「運が良ければキッスができる」(1979年7月22日)
「キッス」て……。
冒頭、夜の歩道橋を歩いていた麻生、ひとりの美しい女性が歩道橋の上に立ち、下を流れるヘッドライトの群れを思い詰めた表情で見下ろしているのに出くわす。

麻生は通り過ぎようとしたが、女性がさめざめと泣き出したのを見て、傍らに立つ。
麻生「余計なことかもしれませんが、心配事ですか……もしかして、ここから?」
女「うっうっ、赤ちゃん、あたしの……」
女は泣き濡れた顔を麻生の広い胸に押し付ける。思わずニンマリする麻生。
探偵として相談に乗ろうとするが、女は麻生がソフトクリームを買いに行っている間に忽然と姿を消す。
翌日、麻生はそのことを自慢げにダーツに話しながら、車で警視庁の科研へ向かう。

彼らは家出人捜索の依頼の為、仲良しの館野から身元不明死体のファイルを借りたのだが、探していた女の子が沖縄にいると分かったので、ファイルを返しに来たのだ。
今回もナビさんはその女の子を連れ戻しに沖縄に行っていると言う設定で、出番はほとんどない。
館野「どうです、来たついでに僕の部屋覗いて行きませんか?」
ダーツ「うん」
だが、麻生は「腐乱死体の復顔術をやる部屋だぞ」と尻込みする。

館野が身元不明の骨に粘土を貼り付けて死体の顔を復元していくのを見守るダーツ。麻生は怖いのか、ソッポを向いている。
館野「こんなもんだなぁ」
ダーツ「さっすがぁ、生きてるみたいね」
みたいじゃなくて、生きてます! 無論これは女優さんが台から首だけ出しているのだ。
麻生はその顔を見て愕然とする。
麻生「この人は……昨日会ってる!」
ダーツ「えーっ?」
そう、歩道橋の上で会ったあの謎めいた女性そっくりだったのだ。

麻生は新妻署に行き、金沢から例の白骨死体について情報を聞きだそうとする。
麻生「洋モク、数少ないアラビア産」
金沢「はぁー、珍しいですね。じゃ」
麻生から貰ったタバコを旨そうに吸う金沢、結局全部教えてしまう。いいのか?
死体は、新妻署管内の無人の老朽ビルで発見された物で、死後約4ヶ月、胃の内容物から青酸性の毒物が発見された為、他殺と断定されたと言う。
麻生はダーツに調べさせ、あの歩道橋付近で、1年前の深夜、道路を横切ろうとした親子がダンプにはねられ、母親は奇跡的に助かったが、生後9ヶ月の赤ちゃんは即死と言う事故があったことを突き止める。
麻生はダーツを連れてすぐ調査に行こうとするが、ユーコはそんな金にもならないことに首を突っ込むのはやめろと忠告する。

ダーツ「そうだよ、キャプテンのやってることは古い探偵ゴッコじゃない。正義の為にただ働き!」
麻生「よし、俺が依頼人だ。時給500円、今から2時間拘束、行くぞ!」
麻生は千円札をダーツに握らせ、ユーコの不満顔を尻目に事務所を飛び出す。
二人はその事故に遭った谷口家の周囲で聞き込みをする。
と、その様子を車から見ているのは、麻生が会ったあの女だった。

女は麻生たちに見られないようこっそり家に戻る。家には夫(菅貫太郎)がいた。
亜沙子「あたし、ヘマやったみたい」
谷口「どうした? だからあんまり出歩くなと言っただろう。話して見なさい亜沙子」
さて、二人の調査の結果、谷口は親譲りの会社を経営していたが、その会社は潰れ、今は無職であること、妻が亜沙子と言う名前であることなどが分かる。

麻生、ひとりで事務所に帰ってくるが、駐車場で待ち構えていた谷口に「キーをお忘れですよ」と話しかけられ、そのまま催眠術にかけられる。
そして谷口に操られるまま、谷口の車に乗って何処かへ行ってしまう。

谷口の屋敷の一室だろう、壁も床も家具も真っ白に塗られた異様な部屋に連れてこられる麻生。部屋には先にダーツが来ていて、ダーツも催眠術をかけられている様子だった。
谷口「歩道橋で会った女について色々調べているようだけど、どうしてそんなことをするんだね?」
麻生「変死体の復顔像の女と顔がそっくりだったものですから……」
谷口「良くないね、そんなことをしてはいけないよ。そんなことはもうみんな忘れなさい」
麻生「そうします……」
ダーツ「はい」

一方、ユーコたちは、二人がいつまで経っても帰ってこないので心配していた。
久美「私、新妻署に行ってみる。もしかしたら麻生さん寄ってるかもしれない」
ジュン「よし、俺、ダーツの店に行ってくる」
ユーコ「頼むわ」
久美「任せといて」
三人「グワシッ!」 ここでいきなりカメラの方を向いて「まことちゃん」のギャグを放つ三人。
今回、メインストーリーは面白くないのだが、こういう本筋とは関係ないシーンやギャグがとても多い。
二人が出掛けた後、千葉県から杉田と言う年輩の男性が事務所を訪れる。
なんでも、東京で看護婦をしている娘が、4ヶ月前から行方不明になっているらしい。娘の行方を捜して欲しいと、杉田は30万円を支払う。
……しかし、4ヶ月も経ってから私立探偵に頼むと言うのは、よく考えたら不自然だ。
長くなったので分けて書きます。