第2話「横浜ロスト・ラブ」(1984年4月24日)
の続きです。
笙子が風呂から出てくると、両親や弟が、FXで大損こいたような暗い顔で黙りこくっていた。

笙子「お願い、二人とももう泣かないで……悪かったのはこの私なの」
聖一郎「許しておくれ、私さえしっかりしてればお前をこんなに悲しい目に遭わせないで済んだんだよ」
美也子「お母さんを許して、お母さんが1番いけなかったの」
聖一郎「そうじゃない、悪いのはみんな私なんだ」
美也子「いいえ、私が悪かったんです!」
自己反省大会と化した曽我家。
ここで、美也子の「笙子なんて産みたくなかったの」と言う、笙子を非行に走らせた台詞が再現される。
そのことを悔やんで泣き伏す母親を、笙子は
「お母さんはとっても正直で隠し事のできない人なの!」と慰める。顔をくしゃくしゃにして泣いていた聖一郎、
「笙子……、フォローになってないぞ」 笙子「私なら大丈夫よ。笙子は生まれ変わったの」
笙子は逆に両親を励まし、凛とした眼差し。

翌早朝、玄関から出てきた笙子、我が家に向かって一礼して石段を降りていくと、案の定、悪竜会の仲間が勢揃いしてお出迎え。
ただ、みんなバッチリ不良メイクをしているのが、あまりに不自然だ。
晴子「こんなことしたくなかったんだけど、こいつらどうしても笙子を見送るんだって……」

引き止める仲間たちの間を押し分けて進む笙子の前に、哲也が登場。
哲也「君の容疑は事実とは違う、警察もきっと分かってくれるはずだ。どんなことがあってもヤケを起こしちゃいけないよ……僕が待ってるってこと、忘れないでね……
君を愛してる!」
ギャラリーがいると言うのに、臆面もなく再び愛の告白をする哲也。
例によって笙子、瞳をウルウルさせるが、

哲也「寒いから体に気を付けて」
笙子「うるせえ! あたいはね、そんなハンパじゃないんだよ、寒さに泣きを入れて、相模悪竜会の頭が務まるか! 2度とあたいの前に現れるなって言った筈だろ!」
哲也の為、敢えて厳しい言葉を吐くのだった。
哲也はなおも追いかけて、例の笙を「僕だと思って持っていて欲しい」と渡す。

笙子は石段を降り始めるが、ここで晴子たちが左右に並んで、しかも「しあわせとふしあわせの境目が~♪」と、山口百恵の「GAME IS OVER」を歌い出すのが、身悶えしたくなるほど気恥ずかしい演出。
何故この曲が選ばれたのか不明だが、国広富之と山口百恵主演の似たような設定のドラマ「赤い絆」を意識してのことだろうか?
笙子は所轄署の少年課へ赴き、
「曽我笙子、ただいま自首いたしました」
と宣言するが、
刑事「笑わせるなこの不良! もう遅いんだよ。逮捕令状だ。やーいやーいバーカバーカ!」 と、無慈悲な宣告を受ける(後半は嘘である)。
笙子はその場で凶器準備集合罪で逮捕され、手錠をはめられてしまう。
笙子は警察から家庭裁判所に送致される。
容疑は「流星会メンバーへ危害を加える目的で凶器を準備したこと」であった。
しかし、だったら同じようなことをしている流星会が何のお咎めも受けた形跡がないのは不公平に感じる。
笙子は横浜鑑別所へ送られる。
ここで、収容された笙子が、他の女子たちと一緒に着替えるシーンがあって、他の女子たちのブラや横乳が見えるが、笙子自身は脱がないのでそんなに興奮しなくてよろしい。

(一日も早くここを出たい……哲也さん、今どうしていますか、一目会いたい)

一方、本来捕まるべき靖雄は、いけしゃあしゃあとした顔で、警察署から出てくる。
どうやら、数日間の勾留と説教だけで済んだらしい。それを知って、晴子たちは憤慨する。
八千代「靖雄たちがチクッたのさ、奴ら少年院に送られるが怖くて笙子独りに罪を被せたんだよ!」
アフロヘアの八千代が鋭い語調で断言する。
そこへ、哲也と男谷弁護士が入ってくる。
玉子「笙子おねえが少年院に送られたら、あんたタダじゃ済ませないかんね」
男谷「鑑別所に送られたからって、少年院送りが決まった訳じゃないんだよ」
江連卓(脚本家)「いや、決まってるけど……」
男谷「……」
実際、これで笙子が保護観察処分で済んであっさり更生して哲也と結婚したら、めでたしめでたしなのだが、見てるほうはちっとも面白くないので、少年院に行かないとダメなのだ。

その頃、笙子は大部屋に移されるや否や、日本の伝統文化「フクロ叩き」に遭っていた。
だが、鑑別所はこの2話の後半だけなので、ここに出てくるいじめキャラは、ほんの端役に過ぎない。

哲也は、葉山家に両親共々呼ばれ、笙子の件で詰問されていた。
多賀子「非行少女と交際があると聞きましたけれど本当なんですか?」
哲也「笙子さんのことなら本当です」
葉山「私は後1年で退官する。君には葉山家28代を継いで貰いたいと思っておる。今はただ、一流の楽人になるために精進することだけ考えたまえ」
哲也の父・路泰だけは「個人の意思を尊重すべきだ」と柔軟な姿勢を見せる。
哲也「笙子さんはもう非行少女ではありません」
信子「何言ってるの、不良少女ですよ、私そう言ってやりました。先日お宅を訪ねて、二度と哲也に会わないようきつく申し渡しました。あの子も約束したはずなのに、どうにもならない不良少女ですよ」
信子の言葉を聞いて、やっと哲也にも笙子の豹変が腑に落ちた。
哲也「なんてひどいことを……そうか、そうだったのか……」
哲也「葉山さん、僕はあなたに推挙していただき、舞楽の楽人になることが出来ました。そのご恩は決して忘れません。ですが、お願いです、恭子さんとの婚約はなかったことにしていただけませんか」
哲也はそれだけ言うと、葉山家を後にする。
笙子は、鑑別所の面接官に、中学まで真面目だったのに、何故急に非行に走ったのか、その理由を訊かれる。過去4年間の笙子の非行歴が簡単に回想される。

シンナー遊び(アンパンって言うんですよ)をしている笙子たち。
普通、屋内でしないか?
また、既に笙子が逮捕5回、保護観察処分3回だったことが分かる。
動機をしつこく尋ねられ、
笙子「ありません、そんなもの何もありません」
と、涙まじりに否定するのだった。
笙子の脳裏には、母親から言われた
「笙子なんて産みたくなかった。お前なんて水に流してしまえばよかったのよ」と言う一言が渦巻いていた。
笙子としては、あまりにつらい言葉であるし、それを話せば母親を非難することになるので、面接官にはどうしても話せなかったのだろう。
その後、哲也が鑑別所に面会に来る。それはいいのだが、係の人に勝手に「笙子さんの婚約者です」と名乗っているのがかなり不気味である。
もっとも、笙子の方はルンルン気分で面会室へ向かうのだった。
が、ドアの前に来て、再び信子の「二度と会わないでくれ」と言う言葉が甦り、会わずに引き返すのだった。
愛しい人に会いたくもて会えない笙子、ふと、例の笙を見て、

正座をして一心不乱に吹く。

とぼとぼと帰りかけた哲也、その音が微かに聞こえ、笙子が吹いているのかと耳を澄ます。
が、結局、空耳だったのかと、悄然と帰って行くのだった。
ナレ「悲しく響き渡る笙の音色、笙子は父愛蔵の笙を奏でながら、心に涙していた。それは自らの恋の終わりを弔う、葬送の曲であった」
ラスト、少年院に送られることが決まり、護送車に乗り込む笙子の姿があった。
笙子(さようなら、哲也さん……)