第24話「涙の健 見知らぬ街の恋人」(1977年7月13日)
冒頭、山奥の渓谷につながれた小舟のうえで、ひとりギターを掻き鳴らしている早川。
冷静に考えたら、かなりの変態である。
と、何処からか赤ん坊の泣き声が聞こえてきたかと思うと、目の前をむつきにくるまれた赤ん坊らしきものが流れていくではないか。
早川、すぐさま川に飛び込んで赤ん坊を救出、岸に上がるが、それは人形と赤ん坊の泣き声のテープを組み合わせた巧妙なニセモノだった。
危険を察して人形を放り投げると、果たして、人形は大爆発を起こす。

早川「誰が、誰がこんなことを……」
開始早々から流血する早川だったが、ほんと、誰がこんなことをしたのか、謎である。
普通に考えれば今回の「悪の組織」である天山会が仕掛けたようであるが、彼らはこの時点では早川の存在を知らなかったと思われるので、違うようである。
「快傑ズバット大全」では、ダッカーが単独で行ったようだと書いてあるが、だとすれば、それっきり早川に手を出して来ないのがおかしい。
この後、気を失ってしまう早川は、彼らにとって絶好の標的だった筈なのに……

れい子「キャーッ、助けてーっ!!」
と、休む間もなく女性の悲鳴が聞こえ、振り向けば、対岸の岩肌にしがみつくようにしてぶら下がっている人の姿が見えた。
うーん、これはさすがにスタントだと思うが、終盤の吊り下げシーンをご本人が演じておられるから、ひょっとしてこれも女優さん本人だったかもしれない。
どっちにしても、この体つきは女性のようである。
早川「罠だ……」
なにしろさっきのことがあるので、早川はてっきりそれも自分を殺す為の罠だと警戒し、その場から動こうとしない。
が、女性が下の岸辺に落ちたのを見て、本物の人間だと気付き、慌てて川の中に飛び込む早川。
女性はぐったりとして動かなかったが、

その、いかにもお嬢様っぽい清楚な顔立ちを見た早川は、

早川「……」
雷にでも打たれように、しばし息を止めて立ち尽くす。
そう、早川、一目惚れしてしまったのである。
確かに過去のゲストヒロインにはいなかったタイプの女性で、早川が惚れたのも、なんとなく納得させられる。
その女性、白鷺れい子はほどなく目を覚ます。
早川「だいじょぶですか」
れい子「……」
早川「良かった……うっ」
れい子を助け起こしたまでは良かったが、呻き声をあげてぶっ倒れる早川。
次に目を覚ますと、早川はれい子の手で小さな山小屋に寝かされていた。
恋に落ちた女性を助けるどころか、逆に助けられる羽目になるとは、いささか情けない。

れい子「動いちゃダメ」
早川「いえ、もうだいじょぶです」
れい子「ここはハイカー用の山小屋ですから、どうかご遠慮なさらずに」
早川「いえ、僕のせいであんな目に遭ってしまったあなたに逆にこんなことをして頂いては」
れい子「あなたのせいで?」
早川「ええ……」
怪訝な顔で聞き返すれい子に、早川はさっきの自分がためらったことを打ち明け、

早川「もっと早く助けることが出来たんです……それを僕は」
普段なら、そこまで自分を責めたりはしないだろうが、相手に一目惚れしたせいか、必要以上に罪悪感を抱いていた。
そして熱っぽい目でれい子の美しい顔を見詰めるが、れい子の方は戸惑ったように目を伏せる。
れい子にとっては得体の知れない男であり、しかも彼女には婚約者がいるのだから無理もない。
早川もそれに気付くと気まずそうに目を反らし、
早川「これからどちらへ?」
れい子「山を下って黒谷市へ」
早川「そりゃ危険だ、あの町には天山会と言うヤクザがうようよしています。旅行者は男でも狙われるというのにまして女ひとりでは……」
どこの国だよ? さすがにそんな連中がのさばっているのを、警察が放置しておくことはあるまい。
れい子の意志が固いのを知った早川は、自分が送っていこうとするが、立ち上がろうとして、傷の痛みに顔をしかめる。

れい子「無理をなさらないで、一日分の食糧を置いていきますから、どうかここで明日までお休みになってから」
早川「いえ、しかし、あなたひとりでは……」
れい子「気をつけて行きますから……もう少し居て上げたいんですけど」
れい子はもうしわけなさそうに言うと、入り口のところで一礼してから小屋を出て行く。
しかし、早川がすぐ回復してしまうので見逃してしまいがちだが、冷静に考えたら、怪我人をこんなところに放置して下山するって、いささか非常識だよね。
実際、それほど大した傷ではなかったのかもしれないが、マシンガンで蜂の巣にされてもピンピンしている早川が、その程度の傷でふらつくと言うのも変な話である。
ひょっとして、れい子に看病して欲しいので、わざとオーバーに痛がって見せていたのかも知れない。

それはそれとして、黒谷市に入ったれい子だったが、運悪く天山会のボス、ドン・天山に目をつけられてしまう。

ドン・天山「ふふふふふ、気に入った、あの女をここへ連れて来い」
戦闘員「はっ」

れい子「きゃあっ、放して下さい、お金なら差し上げますから」

戦闘員「うるせえ、そんな○○(聞き取れない)はねえ、ボスの欲しがってんのはお前さんなんだよ」
れい子「きゃあああーっ!!」

思わず三枚も貼ってしまったが、数人の戦闘員に捕まって引っ立てられるれい子タンが身をよじらせてあらがい、いかにも彼女らしい慎ましやかなおっぱいが強調されるのが、かなりのエレクトポイントとなっております。
ぶっちゃけ、これから○○されるようにしか見えないし、全般にアダルトな本作においてもかなり際どいシーンと言えるだろう。
ドン・天山も、別に彼女をどこかに売り飛ばそうとしている訳ではなく、文字通りその肉体をむさぼろうとしているわけだからね。
事務所に連れて行かれた彼女がどんなエッチな目に遭うのか、
ワクワクハラハラしてしまう管理人であったが、
あいにくさいわい、その前に早川があらわれ、あっという間に戦闘員をぶちのめして、れい子の貞操を死守する。
れい子「だいじょぶですか、その体で」
早川「僕のことより、まずあなたです、天山会のボス、ドン・天山に狙われた以上、すぐにもこの街を出たほうが良い」

れい子「でも……」
早川「大事な用があるのは分かってます、しかし、命の方がもっと大切でしょう!!」
れい子「……」
叱り付けるように諭されて、シュンとなるれい子タン。
言い忘れたが、演じるのは後珠美さん。
パッと目を惹くような美人ではないのだが、子犬のように丸い鼻がなかなか可愛らしい。
それにしても、珍しい苗字だが、なんて読むんだろう? あと? うしろ?

ウリ・ケラー「お二人さん、占いはどうかな」
二人がその場を離れようとすると、神社の境内に手相占いの露店を出していた胡散臭い男に呼び止められる。
男は天眼鏡で早川の顔をしげしげと見て、
ウリ・ケラー「おほう、あんたはいま恋をしておる、してその相手はその人か?」
早川「……」
れい子「……」
ウリ・ケラー「だがお気の毒じゃが、その恋は破れる」
早川「ほう、それは本気ですか、それともシャレですかい、ウリ・ケラーさんよ」
ウリ・ケラー「俺を知っていたのか、早川ぁっ」
案の定、それは毎度お馴染み、悪の用心棒であった。
にしても、物凄い名前だ……
無論、スプーンの天敵と言われるユリ・ゲラーのもじりだが、このアレンジは、意外と「ウルトラマンレオ」に出て来たウリーが元ネタかもしれない。
もっとも、ウリ・ケラー、単なるイヤガラセで言っただけなのかも知れないが、早川の失恋を的中させているのだから、占い師としては優秀なのかも。

早川「ああ、知ってるさ、天山会の用心棒、ウリ・ケラー、占いの名人、そして筮竹使いのプロフェッショナル、ただし、その腕前は日本じゃあ二番目だ」
突然、早川が「変な世界」に行っちゃったのを、若干怯えたような目で見ているれい子タンが割りとツボなのです。
早川の聞き捨てならない台詞に、思わず立ち上がるウリちゃん。
ウリ・ゲラー「二番目? 俺のほかに筮竹使いのプロなんてのがいるのぉおおおっ?」 いたら是非紹介して欲しいと思うウリ・ケラーであったが、嘘である。
嘘だけど、そんな珍妙な技を使う殺し屋が二人といないのは事実であろう。
あと、占いの名人なら、それでまっとうに暮らした方が、用心棒なんかするより、よほど実入りが良いと思うんだけどね。
ウリ・ゲラー「二番目? 俺より上の日本一がいるというのか?」
早川「ヒュウウッ、チッチッチッ」
と言う訳で、いつもの珍芸対決コーナーとなるが、せっかく早川が女の子に惚れているという話なんだから、れい子を標的にした技比べにした方が絶対盛り上がったと思う。
それはともかく、ウリ・ケラーは筮竹の束を掴んでいきなり早川に投げつける。
早川はギターでそれを受けるが、宙に舞った筮竹は、早川の足元に並んで突き刺さる。
うーむ、いかにも地味な技だ。
つーか、これって、早川の手柄じゃないの?
ウリ・ケラー「その気になりゃ、お前さんの心臓をぶち抜くことも出来たんだぜ」
後攻の早川、足元の筮竹を引き抜いて頭上に投げると、

それがウリちゃんの頭の上に突き刺さるという、これまたパンチの弱い技を披露する。
早川「その気になりゃお前さんの脳味噌をぶち抜くことも出来たんだぜ」
シリーズ後半のお約束、相手の口調を真似てお返しをする早川。
ここでれい子が、
れい子(ヤバイ、これ、変な宗教だ……) などと思ってるような顔で、そろそろとその場から逃げ出そうとするのがツボである。
いや、現にれい子は何処かへ行ってしまうのだが、さっきと全く同じように戦闘員に見付かって拉致されそうになるのを、またしても早川に助けられる。
異例のことに、間を置かずにウリ・ケラーがあらわれ、今度は筮竹爆弾なるもので攻撃してくる。
で、ちょっと変なのは、ウリ・ケラーが有利に戦いを進めながら、いつの間にか戦闘員ともども姿を消してしまうことである。
CM後、ドン・天山がLに報告している。
L「なに、早川が女を好きになったというのか」
ドン・天山「はい、私の見るところでは、早川め、今は女を守ることしか頭にありません」
尺の都合か、このやりとりだけで、Lがドン・天山に訓示を与えるシーンはない。
早川、レンタカーにれい子を乗せて、隣の北神市との境までやってくる。

早川「ここから先は天山会の縄張りの外です、あなたが運転して行っても狙われる心配はありません」
れい子「すみません、私のために何度も危険な目に遭わせてしまって」
早川「いえ、あなたさえご無事ならそれで良いんです、どうか二度とあの街には入らないで下さい」
れい子「あの、お名前は」
早川「早川健です」
れい子「白鷺れい子です」
れい子も、早川と別れ難い風情であったが、黙って車を発進させる。

早川(さよなら、れい子さん……)
ほんとなられい子に愛の告白をしたいところだが、今は飛鳥の仇を求めて全国をさすらう身、早川はその気持ちを鉄の自制心で抑えると、心の中でれい子に別れを告げるのだった。
が、まだ若い早川の胸は熱く滾り、その気持ちを紛らわす為に、ビルの屋上で「二人の地平線」を熱唱して、ビルの管理人に「うるせえっ」と怒鳴られるのだったが、後半は嘘である。
ところが、歌い終わった早川がふと下の通りを見れば、町を去ったはずのれい子の車が戻ってきて、戦闘員も「またお前かー」的な顔でれい子を拉致しようとするが、またまたまた早川に助けられるのだった。
これだけ学習能力のないヒロインも珍しい。
せめて変装くらいしましょうよ。
早川「だいじょうぶですか」
れい子「ごめんなさいっ!! ううっ……」
早川「あれほど言ったのに、何故戻って来たりしたんです」
さすがに早川が語気を強めて問い質す。

早川「あなたが命を懸けてまでもこの町に戻ってこなければならない理由と言うのは一体なんですか」
れい子「会いたい人がいるんです、どうしても」
早川「ご家族の方ですか」
れい子「私と結婚を約束した人です」 早川「はうっ」
れい子の言葉に、頭に特大のタライを落とされたような顔になる早川(註1)
註1……なんという幼稚な表現だろう。
早川「結婚?」
れい子「私、どうしても彼の気持ちを確かめたいんです、今でも私を愛しているのか、今でも結婚する気持ちに変わりはないかどうかを!!」
早川「幸せな人だ、あなたのような人に命懸けで愛されるとは……」
れい子「……」
早川「わかりました、その方、必ず僕が探してあげましょう、で、その方の名前はなんて言うんです」
東条「その必要はないっ!!」
ショックを受ける早川であったが、好きな人に婚約者がいたからって不貞腐れるほど子供ではなく、自分から進んで橋渡しをしようと言うが、意外にもそこに東条の声が割り込んでくる。

振り向けば、チンピラ風の恰好をした東条が、いつにもまして険しい顔で立っていた。
しかし、斎藤真さんって、ほんと、笑っちゃうほど「大人の顔」してるよねえ。
彼にあどけない子供時代があったとは到底思えず、ひょっとして、生まれたときからこんな顔だったんじゃないかとさえ思えてくる。

早川「東条!! お前……」
二人が互いの顔を見詰め合っているのを、横から茫然と見ている早川。
東条「何故来た」
れい子「ごめんなさい」
早川「あ、フィアンセと言うのは……」
東条「俺はこの一年、ある悪の大組織を追っている、付き合っている暇はないといったはずだ」
れい子「わかっています、でも……」
れい子が何か訴えようとするのを無視して、
東条「早川、悪いがこの人を駅まで送ってやってくれ」
ニコリともせず言い放つと、さっさとその場を立ち去る。
そう、早川が惚れたのは、こともあろうに盟友・東条の婚約者だったのである。
さすがマブダチだけあって、好きな女性のタイプも同じなんだね。

れい子「ううっ、ううっ……」
東条のあまりにつれない態度に、口に拳を押し当てて嗚咽するれい子タン。
この町は、国家権力の力さえ及ばない暗黒地帯なのか、れい子はひとまず鉄道でこの地を離れることになり、早川は彼女を駅まで送っていく。
早川「あとは東条の部下たちが送ってくれますから」
れい子「本当にお世話になりました」

早川「れい子さん、東条は良い奴です、信じてやってください」
れい子「ありがとうございます」
早川「はっ、結婚式には呼んで下さいね」
早川、失恋の痛手を顔に出すまいと苦労しながら、冗談めかして二人の前途を祝福する。

れい子「……」
早川(即答してくれないのは何故かしら……?) ……と言うのは嘘だが、れい子が、ガチで嫌がってるように見えるのがかなりのツボである。
そりゃ、さっきの珍芸対決を見せられた後では、気が進まないのも無理はないよねえ……
じゃなくて、れい子は東条の気持ちを確かめられなかったので浮かない顔をしているだけなのである!! 多分そうである!!
れい子を見送ったあと、早川がひとりでホテルの部屋に落ち着く、割と珍しいシーンとなるのだが、ギターを抱えているのが妙に可笑しい。
そこへ東条が慌てた様子で飛び込んできて、

東条「たっ、助けてくれ、早川、か、彼女が攫われたんだっ」
早川「なにぃ」
東条「護衛の刑事は二人とも殺された、天山会の仕業だ、だが、証拠は何もない……俺はどうしたらいいんだ」
泣き出さんばかりにおろおろし、見栄もプライドも公私の区別もかなぐり捨てて早川に縋りつき、ついでにチンピラファッションなのにシャツをズボンにinすると言う醜態をさらす東条。
早川「東条、お前のそんなにうろたえた姿、初めて見た。それほどお前があの人を愛してるなら、俺は何も言うことない、よし、わかった、彼女は必ず俺が探し出す」
だが早川は、そんな東条に失望するどころか、むしろ嬉しそうに、れい子の救出を約束する。
東条の謹厳なマスクの下に、熱い人間の血が流れていることが分かったからである。

特撮ヒロインの作法にのっとり、おっぱいの下を縛られて建物の壁面にぶら下げられているれい子。
カメラが引くと、

男でも尻込みしそうな、尋常じゃない高さであることが分かり、女優さんの根性に感服する管理人であった。
しかも、これ、いつ崩れてもおかしくないような廃墟だから、余計怖かっただろうなぁ。
ドン・天山「はっはっはっ、早川が守っている女だ、ゆっくりと苦しめながら殺すんだ」
えっ、殺すの? スケベなことをするために攫おうとしてたんじゃないの?
まぁ、あくまでちびっ子向けドラマだから、れい子を裸に引ん剥くような描写がNGなのは分かるけど、いささか拍子抜けである。
この場合は、早川をおびき出す為に吊るしてるってことにすべきでは?
もっとも、ウリ・ケラーがれい子の体の周りに筮竹を突き立てていくのを見て、「ワシの言うことを聞いていれば良かったものを……」と、天山が言ってるので、れい子を愛人にしようとしたが、れい子に断られたので殺すことにしたらしい。
いや、極悪人なら、相手がなんと言おうと手篭めにしろよ。

れい子「……」
体すれすれに何本も筮竹を刺され、恐怖のあまり声も出ないれい子。
ドン・天山「そろそろ血の出るところへ刺してやれ、まず、あの綺麗な目をな」
やがて、ドン・小西のファッションチェック並みに恐ろしい命令を下すドン・天山。
ウリ・ケラーが筮竹を構えるが、そこへお約束のようにあらわれたのがズバッカーであった。

ズバット、まず、れい子の頭上の足場に飛び降りると、ロープを掴んで引き揚げる。
これ、パッと見、実際にスーツアクターが引っ張り上げているようにも見えるが、さすがに人間ひとりを持ち上げるのは無理なので、ロープの先をスタッフが引っ張ってるんだろうなぁ。
どっちにしても、引っ張られている珠美さん、怖かっただろうなぁ。
それにしても、東映のスタッフは、女優を吊るすのが好きだねえ。
無論、管理人も好きである。
女優さんも偉いが、

ドン・天山「貴様、なにもんだ」
ズバット「はっはっはっはっ……」
その倉庫のてっぺん、しかも、穴が開いてスカスカになったようなところに立っちゃうスーツアクターさんも偉い!!
あそこに上がるだけでも大変だよね。
ちなみに糾弾台詞で、
ズバット「多くの人々をあやめ、悪事の限りを尽くし、あまつさえ、何の関係もないれい子さんまで殺そうとした……」
と言うのだが、その言い草では、天山会が何が大掛かりな悪事でも企んでいたようにも聞こえて、若干「?」となってしまう。
実際は、映像で見る限り、天山会は気まぐれに悪事を働いているだけで、その被害者は全員「関係のない」人たちばっかりだったと思われるので、れい子だけ特別扱いするのは変である。
彼らが、最初の人形爆弾から、ずーっと早川を殺そうとしていたのなら、早川殺しの一件とは「関係のない」と言う意味で言ったことになるが、冒頭で書いたように、少なくともあの爆弾は天山会とは関係なさそうだし、天山会は特に早川の命を狙ってるようには見えなかったからね。
さて、こうなればもう詳述の必要はない。
ズバットがウリ・ケラー、ドン・天山を倒して事件解決。
ちなみに、飛鳥殺しについて訊問された天山は、
ドン・天山「ワシはその頃、メキシコに行っておったのじゃ~っ!!」
と、どう聞いても口から出任せとしか思えないアリバイを申し立てるのだが、
早川「飛鳥、お前を殺したのはコイツでもなかった」
早川、裏取りもせずにその説明を鵜呑みにしてしまう。
これで言い逃れできるのなら、永久に真犯人は突き止められないような……
つーか、なんで黒谷市を縄張りにしている組織のボスが、節分の前にメキシコに行かにゃならんのだ?
まぁ、それは他の回でも同じなんだけどね。
……
考えたら、2月2日は、ダッカー配下の悪の組織のボスがほとんど地方や海外にいた(註2)訳で、これはこれでめちゃくちゃ不自然だよなぁ。
しかも、その状況で、総統Dが飛鳥五郎を自らの手で射殺していたことになり、不自然さ倍増である。
註2……早川が倒したのはそれらの一部だが、確率から言って、他のボスも東京にいなかった可能性が高い。
ともあれ、天山会はこうして潰滅させられたのだったが、これほど目的意識の希薄な……要するに、何がしたいのか良く分からない悪の組織と言うのも珍しいよね。
一方で、東条の部下さえ殺してしまう凶悪ぶりを発揮しているのだから、どうにも訳の分からない組織であった。
ラスト、川に架かる赤い橋の真ん中で早川が待っていると、東条が車でやってくる。
東条「こんなところまで呼び出して何の用だ」
早川「ふふん」
早川、いたずらっぽい笑みを浮かべて指をスナップさせると、背後に控えていた人物を東条の前に押し出す。
無論、れい子であった。

東条「……」
れい子「……」
早川「東条、お前の仕事が大切なのは分かってるが、たまには電話ぐらいしたってバチは当たらないぜ」
親友の恋の橋渡しをしてやる、粋な早川。
東条も、優しい言葉こそ掛けなかったが、れい子を見るその目は温かく穏やかだった。
早川「よっ、お二人さん」
以上、早川の淡い恋と、その意外な結末を、特撮アクションドラマとは思えない繊細なタッチで描いた、後味爽快な佳作であった。

と言う訳で、最後は潤んだ目で東条を見詰めるれい子タンのお顔で占めましょう。
こうして見ると、めちゃくちゃ綺麗じゃない?
ちなみに今回は出番さえなかったらみどりさんだが、シナリオでは、早川にれい子と間違われると言う最低の役で出番があったらしい。
まあ、仮にみどりさんが出ても、いつも以上に早川の眼中にはなかっただろうし、早川がれい子に恋しているのを見せ付けられて落ち込むだけだったろうから、出番がなくてむしろ幸いだったかも知れない。
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