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「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」


 第23話「呪いの壺」(1969年2月16日)
 シリーズ終盤の22話から25話までは、どれも傑作揃いで、ある意味、こんなブログで紹介する必要もない気もするのだが、やっぱり書いておこう。

 23話と25話はどちらも京都を舞台にした、実相寺監督の作品。この間にあの「狂鬼人間」がある訳だ。

 京都で、骨董品の壺を鑑賞していた男性が次々と奇怪な死を遂げる。
 SRIは町田警部と共に捜査協力を要請される(なんで?)。あるいは、みんなで京都に修学旅行に来ていた時に、たまたま事件のことを聞き知ったと言う可能性もある(ねえよ)。

 京都府警鑑識医によれば、被害者は全員、神経腺(?)が変質していたと言う。特に視神経は完全に破壊されていた。
 的矢「5人が5人ともたまたま遺伝的に素質があったと言うことは?」
 鑑識医「考えられませんね」
 的矢所長の面目丸潰れ。

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 的矢たちが、いかにも古都!と言う佇まいの旅館(看板が少し傾いているのが良い)に入ろうとした時、古美術商・市井商会の日野統三と言う男が声をかける。
 統三「亡くなられた方、みんな、うちの店のお得意さんなんです。それで、偶然かも知れませんが気にかかって仕方がないもので」
 話の途中、統三は、ひどい咳を繰り返す。

 翌日、SRIは市井商店へ出向き、主人から話を聞こうとするが、ちょうどまた得意客のひとりが亡くなったと、主人の娘・信子が伝える。SRIは急遽、主人と共にその事件の現場へ向かうことになる。一方、統三は休みを貰って実家に帰ると告げる。

 主人と統三の刺々しいやりとりを聞いていた牧は、三沢と野村に、統三の後を付けるよう指示する。

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 京の街を咳き込みながら歩く統三と、尾行する二人。

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 統三がとある角を曲がると、信子が待ち構えていた。
 信子「統三さん、あんたとうちのお父、一体何があったん? それと今度の事件、何か関係があんの?」
 統三「そんなことあんたが心配せんでもええことや」
 信子「いいえ、知る権利があります。あんた、うちに話す義務があるんや。そやろ」
 統三「こんな肺病病みに将来のこと任せて失敗やったな。ええっ、信子はん」
 信子「病気のことなんか気にしてへん、うちはあんたが好きなんや」
 統三「ほな、一緒においで、それがええ、それが一番ええことや!」
 統三は、二人の尾行に気付いているようだったが、気にせず、蒸気機関車で実家へ向かう。

 統三の実家は、囲炉裏が切ってあるような古めかしい屋敷で、作陶家の老父がひとりで住んでいた。

 父親「なんでこんなところにお嬢さんを……ここは市井の旦さんしか」
 統三「そんなことかまへん、信子はんはみな知ってるさかいにな」
 父親「そうか。……あれ、もう売れたんか?」
 統三「あれはまだや。うちのオヤジは元大臣の川上洋三に売りつけるつもりらしいけど、ちょっとした騒ぎで、今、開店休業中と言うところや」
 父親「騒ぎ? ワシが作ったこと、バレかけたんか?」

 二人の会話を横で聞いていた信子、自分の父親が、統三の父親にニセモノの壺を作らせて売っていることを初めて知り、ショックを受ける。

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 統三は、もう贋作作りはやめて、父親の名前で堂々と作品を世間に出すべきだと訴えるが、父親は市井家には先祖代々の恩義があると言って聞かない。

 統三、縁側においてあった新作の青磁の壺を撫でながら、
 「この壺がお父とは関係なしにどっかの金持ちの家に飾られる訳か」

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 その後、土蔵で二人きりで話す統三と信子。
 統三「僕も体が丈夫やったら間もなく親父の後を継ぐ筈やった」
 信子「それであんたはうちを……うにゅううう!
 いきなり信子の頬をアイアンクローで責めるサディスティック統三。信子は信子で、いかにもマゾっぽい顔なので、このまま無事結ばれていたら、意外とナイスカップルになっていたかも知れない。

 統三「あんたと一緒になってニセモノをドンドンはびこらせるんや。成金どもを心の底から笑ってやりたかったからや。しかし、それがどうや。ニセモノはいつまで経ってもバレへん。このまま行ったら親父の名は永久に出ずじまいや。こんなことがあってええわけがない……僕は死ぬ前に一切合財のケリをつけたかったのや。オヤジの壺を買うた金持ちはどんどん死に、市井は潰れる……」

 そこまで言われても統三の側から離れようとしないマゾ信子。翌日、統三が造成地の地中から何か得体の知れないものを掘り返すのにも付き添う。

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 牧たちが被害者の持っていた壺を調べていると、三沢たちが統三が掘り出していた黒い粉を持ってくる。
 何気なく的矢がそれを日の光の下で見ようとした時、目に激しい衝撃を受ける。幸い大事には至らなかった。
 牧「この物質は太陽光線に刺激されると、リュート線を出すのか……何か聞いたことがあるぞ」

 的矢「何かね、そのリュートとか言う、笛みたいな名前の物質は」
 牧「太陽光線に当てられると、その物質の中にあるリュート線を全部出し尽くすんです。ただ、人体にどのような影響を及ぼすのか、まるで分かっちゃいないんですがね」

 その後、先程の青磁の壺でまた犠牲者が生まれ、統三の目論み通り、市井が贋作を売っていたことが露見する。
 統三は、店の土蔵で、信子が止めるのも聞かず、せっせとリュート物質を壺の中にハケで塗り込んでいた。
 「もうじきSRIに見破られる。ひとつでもようけ売ったるのや」

 そこへ町田警部たちが踏み込むが、統三は大量のリュート物質の入った壺で脅し、警部たちを寄せ付けない。黒い紙を漏斗状にして、その中に粉を移すと、土蔵の外へ走り出す。

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 統三は近くの寺の中へ駆け込む。

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 追って来た町田たちを見て、「これでええ、思い通りや、この寺は本物かニセモノか、ワシの道連れやで、はーはーはーはー、げほっ、げほっ」
 激しい咳をしながら喋っているうちに、リュート物質が空中へ舞い上がる。

 統三は、視神経を焼き尽くされ、即死する。そしてリュート物質は寺の本堂にも……。
 さあ、ここから日本特撮史上に残る名場面となる。

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 まず、本堂の映像。
 パッと見、いや、目を凝らしても本物にしか見えないのだが、これがミニチュアセットなのだ。

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 だから、奥の建物の屋根を右から左へ炎が走り出す時、本当に寺が爆発しているとしか見えないのだ。

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 やがて手前の建物に火が移り、重量感たっぷりに屋根瓦が落ちる。

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 さらに、警部たちが、門の外から寺が燃えているのを見る合成ショットも絶品である。
 寺の檀家が、ほんとの火事だと思ったとか言う逸話を聞いたことがあるが、さもありなん。

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 遂には柱が折れ、屋根が崩落する。

 正味40秒にも満たない映像であるが、国宝級のシーンであろう。

 そう言えば、最近「恐竜戦隊コセイドン」(1978)を見ているのだが、この炎上ショットが使われていたな。

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 リュート物質が掘り起こされているのを見守っている三沢たち。統三の父親も無言でその様子を見ている。
 三沢「なんでもここは旧陸軍の秘密研究所があったそうです。リュート物質はここで開発されたそうですね」
 町田「終戦の年、確かこの辺は山崩れで埋もれた筈だ」
 的矢「戦争の度に科学は進歩するか……」

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 父親はやがて自宅へ戻ると、「ちくしょう! ちくしょう!」と叫びながら、狂ったように自分の作った壺を叩き割るのだった。

 暗い話の多い「怪奇大作戦」の中でも、これは全篇に漂う陰鬱な雰囲気と、死病に冒された主人公の絶望とで、ひときわ異彩を放っている。笑いのひとつもない、極めて重いエピソードである。

 さて、次はいよいよアレだが……、どうしたものか?


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コメント

「特撮と思わせない」
まさしく円谷プロの真骨頂ですね。
特撮監督は故・大木淳氏。
故・実相寺監督との名コンビですね。

シナリオは故・石堂淑朗氏ですが
これだけの傑作を書ける人が
なぜウルトラではダメだったんでしょうか?
(特に「80」はヒドい!)

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

影の王子様
>シナリオは故・石堂淑朗氏ですが
>これだけの傑作を書ける人が
>なぜウルトラではダメだったんでしょうか?
>(特に「80」はヒドい!)

ああ、確かには……。
変に低学年向けにして失敗してる感じですね。

Re:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

リメイク「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」全4回が
NHK総合で
1と2が12月16日(火)午前2時20分から
3と4が12月17日(火)午前2時15分から放送されます。

BSでは既に放送されていたらしいのですが
僕はBS観れないので、今回早速予約しました。

これはリメイクものとしては上出来だとネットにありました。
一応、お知らせさせていただきました。

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

影の王子様

わざわざお知らせありがとうございます。
これは自分も見たことがないので、チェックして見ます。

「ウルトラセブンのこと」「夢合成」  

>≧さらに、警部たちが門の外から寺が燃えているのを見る合成ショットも絶品である。「寺の檀家が、ほんとの火事だと思った」とか言う逸話を聞いたことがあるが、さもありなん。

>言われてみれば、「呪いの壺」の古寺炎上シーンはよくできてますよね。

最初の「本堂の映像」も実物かフルスケールの模型を見ているような錯覚を覚えますが、実相寺監督の著書「ウルトラマン誕生」の第1部でも「呪いの壺」で「炎上する寺の本堂を10分の1のミニチュアで作った」と紹介されていたのを思い出しました。

この第1部では、他にも「ウルトラセブン」から「第4惑星の悪夢」「円盤が来た」や「怪奇大作戦」の「恐怖の電話」の裏話が掲載されており、「あのシーンは実は…」と言うちょっとした実相寺監督の思い出話を垣間見ることができました。

Re:「ウルトラセブンのこと」「夢合成」(11/18)  

マシンX2000様
コメントありがとうございます。

>この第1部では、他にも「ウルトラセブン」から「第4惑星の悪夢」「円盤が来た」や「怪奇大作戦」の「恐怖の電話」の裏話が掲載されており、「あのシーンは実は…」と言うちょっとした実相寺監督の思い出話を垣間見ることができました。

面白そうですね。読んでみたくなりました。

Re:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」全4回を視聴し終えました。
なかなか見応えがありました。
かなりエグい表現(特に第3回)もあり、よくNHKでできたなと思います。
的矢所長と旧作の町田刑事に該当する刑事がともに女性になっているのは時代の流れでしょうか?
牧史郎役の上川隆也がほぼ主人公になっているのはまぁ妥当かな?
リメイクものではまず合格点が出ると思います。

その点、同じ上川隆也主演の「特捜最前線2013」は長坂秀佳氏の脚本なのにガッカリでした。

宇宙刑事でも感じましたが、リメイクものは難しいですね。

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

影の王子様
>「怪奇大作戦 ミステリー・ファイル」全4回を視聴し終えました。
>なかなか見応えがありました。

私もチェックしました。
ストーリー、ビジュアル、科学考証などは頑張ってる感じでしたが、キャラクターとキャスト、どちらにも魅力が感じられませんでした。女性キャラを増やすだろうとは思ってましたが、案の定でした(笑)。

しかし、牧役の岸田森と上川隆也、撮影時の年齢は上川隆也のほうが20歳近く上なのに、岸田森のほうが年上に見えるのはなんででしょう?
人のことは言えないけど、日本人男性、みんな童顔になりましたね。

それと、1話で45分は長過ぎるように感じました。
個人的には、セカンド・ファイルの方が良かったかなぁ。

そうそう、「怪奇大作戦」の目次に、「狂鬼人間」のリンクを張っておいたので、良かったらそちらも見て下さい。

Re[2]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

>そうそう、「怪奇大作戦」の目次に、「狂鬼人間」のリンクを張っておいたので、良かったらそちらも見て下さい。

確認させていただきました。
僕は最近ネットで視聴(その後削除されましたが)しました。
実相寺監督作品を別格とすると「怪奇大作戦」の最高傑作と思います。
誰しもの身にいつ起こってもおかしくない事例ですからね。
ラストシーンの救いの無さったら・・・

Re[3]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

影の王子様
>確認させていただきました。
>僕は最近ネットで視聴(その後削除されましたが)しました。
>実相寺監督作品を別格とすると「怪奇大作戦」の最高傑作と思います。
>誰しもの身にいつ起こってもおかしくない事例ですからね。
>ラストシーンの救いの無さったら・・・

後世に残すべき名作ですよね。
テレビは無理でも、DVDならもう解禁してもいいんじゃないかと思うんですが。

Re:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

この回は『円谷プロ特撮DVDコレクション』の第5巻「実相寺昭雄研究」に収録されています。

この回のBパートの冒頭、統三がリュート物質を掘り起こすシーンの「ブー」という音はノイズだそうです。

信子役の松川純子さんは、今週から一週間、YouTube配信されている『ザ・カゲスター』第14話に出演されています。冒頭で人形(コスプレ)にされる兄妹のママ役で(笑)

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

ウルトラファンレオ様
>この回は『円谷プロ特撮DVDコレクション』の第5巻「実相寺昭雄研究」に収録されています。

>この回のBパートの冒頭、統三がリュート物質を掘り起こすシーンの「ブー」という音はノイズだそうです。

>信子役の松川純子さんは、今週から一週間、YouTube配信されている『ザ・カゲスター』第14話に出演されています。冒頭で人形(コスプレ)にされる兄妹のママ役で(笑)

貴重な情報ありがとうございます!
是非チェックしてみたいと思います。

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

ウルトラファンレオ様
>信子役の松川純子さんは、今週から一週間、YouTube配信されている『ザ・カゲスター』第14話に出演されています。冒頭で人形(コスプレ)にされる兄妹のママ役で(笑)

見ました見ました。
なんか色々と美味しい目に遭われてましたね。

「カゲスター」ってはじめて見ましたが、ギャグなのかシリアスなのか良く分からない面白い作風ですね。

Re:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

この爆破のシーンは今見てもインパクトがありますね😅まだこの時代は戦争の影響が残っているようですね😓

Re[1]:「怪奇大作戦」セレクション 第23話「呪いの壺」(11/18)  

ふて猫様
>この爆破のシーンは今見てもインパクトがありますね

素晴らしい特撮ですよね。

現在、朝ドラで

「スカーレット」という作品が放映中ですが
今、ちょうど昭和44年で「京都」「陶芸」「炎」「焼け落ちる」
といった単語が飛び交っていて妙に、このエピを思い出します。
主人公を止めようとしているのは旦那の方ですけどね(笑。

石堂氏は昭和52年に「火の国」という朝ドラも担当していますが
(職種は造園で南米も少し絡むとか「美女と花粉」を彷彿させる)
舞台となった九州の人にも記憶に残らないぐらい地味だったとか。
つくづく女子供向け作品には向かない人。

Re: 現在、朝ドラで

朝ドラを担当していたとは知りませんでした。

嫌いじゃないんですけどね……

No title

次回の唯一欠番になっていた第24話「狂鬼(きょうき)人間」を入れて欲しかった。

Re: No title

一応他のブログでレビューしてますので、よろしかったらどうぞ。

No title

今から53年前の今日、放送されました。人間が壺の中のリュート物質を覗くと、眼がやられて死んでしまったり、寺が全ての炎上はまさに、京都ロケの物語です。でもSRIは、ただ一人紅一点である小川さおりのみは不参加で理由は何だろう?

Re: No title

傑作ですよね。

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