第1話「ヨコハマ・センセーション」(1984年4月17日)
の続きです。
哲也の出現に他のみんなも一瞬、静まり返る。
晴子「性懲りもなく、何しに来たのさ?」
哲也は、晴子を無視して、つかつかと笙子に歩み寄る。
哲也「君と話がしたいんだ」
笙子「話なんて何もないね。さっさと出て行きな。ゆうべみたいにフクロにするよ」
哲也「君はこんなことはやめるんだ。君はこんなことをするために生まれてきたんじゃないんだ」
どうでもいいが、哲也、仕事はいいのか?
哲也、身分的には公務員なのだが、劇中でちゃんと仕事らしい仕事をしているのは、テレビで雅楽の演奏をしているシーン一回しかない。その仕事も途中で辞めてしまうので、とにかく働く気がないのだ。まぁ、大映ドラマに出てくるキャラは、だいたいにおいて働こうとしないのだが。

善子「どうする、こいつ?」
と訊いた面白い顔の女の子、演じているのは坂上亜樹。そう、坂上二郎さんの娘である。

笙子の答えは「フクロにしな」であった。
哲也(またかよ……) 有無を言わせず、女の子たちによってたかって殴られ、蹴られ、投げられる哲也。こういう場合、おアキにもそれをピタッとやめさせる力はないのだ。

哲也「笙子さん、やめたまへ! 君たちもこんなことはやめるんだ!」
口ではこう言いながらも、レオタード姿のピチピチした女の子たちにあんなことやこんなことをされて、実は身震いするほど嬉しいマゾ哲也であった(註・管理人の妄想です)。
その後、ひとり夕陽に照らされた海を見詰めながら、
「あたいは呪われた子なの、今更引き戻せるか! とことんやってやるまでだ。とことん悪くなってやるまでだ」と、自分に言い聞かせるように叫ぶ笙子だった。

夜、廃墟のようなところに仲間を集め、演説する笙子。
笙子「あたいたちはみんなどいつもこいつも落ちこぼれたロクデナシだよ。大人なんて勝手だよ。自分たちの勝手であたいたちを産んでおいて、自分たちの勝手であたいたちを見捨てるんだ。だったらこっちも勝手に生きようじゃないか。
あたいたちだけの世界を作ろうじゃないか! あたいたちの世界はね、友情と信義の世界だよ。仲間を売ったり、裏切ったりしない世界なんだ。受験でみんなの進路を決めたりしないから、安心しな」
笙子はさらに、流星会とは徹底的に戦うことを宣言し、喝を入れる。みんなも、拍手をし、腕を突き上げて盛り上がる。
副会長(だっけ?)の靖男が壇上に上がり、「流星会への殴りこみは3時から4時ごろだ。それまでみんな休んでおいてくれ」と言った時、ギギギと後ろの扉が開いて、またしても哲也が現れる。
だから何でこの場所を知ってるの?
笙子「どういうつもりなの?」
哲也「僕は君を救いたいんだ」
笙子「何故?」
哲也「君が悲しんでるからだ。君が祈ってるからだ。君は君自身本当に輝いて生きられる世界を、祈るように待ち望んでるんだ」
笙子「何をバカな……」
哲也「僕は君が本当に望んでいる世界へ帰して上げたい」
笙子「おだまり、黙らないとフクロにするよ! お晴、この男をフクロにしな!」
笙子が命じるが、さすがにこの24時間で3回目のフクロとなると、晴子たちも躊躇して動こうとしない。
仕方なく、笙子は靖男たちに哲也をフクロ叩きにさせる。

哲也(話が違う……)
野郎に殴られてもあまり嬉しくないマゾ哲也(註・管理人の妄想です)。
さすがの鉄人哲也も、三度目のフクロには耐え切れず、意識を失ってしまう。
だが、それを見詰める笙子の瞳はとても悲しそうだった。
彼らは哲也を放置して、思い思いの場所に散らばって毛布を被って眠る。
笙子は、倒れた哲也が握っているのが自分が売り払った笙だと知り、驚くが、そっと元の場所に戻しておく。
笙子も横になって目をつぶる。夢の中で、幼い頃、父親に舞楽を習ったことを思い出していた。

ふと、その懐かしい音楽が、現実に自分の周囲で鳴っていることに気付いて目を覚ます。
と、いつの間にか、哲也が起き上がって一心不乱に笙を吹いているではないか。

笙子は、その音楽にあわせ、無意識的にか、かつて習い覚えた舞楽の舞を踊り出すのだった。
笑っちゃいけない場面なんだけど、笑ってしまった。失礼をお詫びしておく。

哲也の目に、正式な衣装を着て踊る笙子のあるべき姿が浮かぶ。可愛い……。
やがて、笙子の部下たちも音楽に気付いて目を覚まし、踊っている会長の姿を見て驚く。
涙を流しながら舞い終えた笙子に、哲也は「素晴らしかったよ、笙子さん、やはり君は僕が思っていた通りの人だった」と笑顔を見せる。
その後、夜の港を歩く二人。その様子を車の中から見ている男谷と恭子。この時点では、恭子、笙子に哲也を取られるなどとは夢にも思っていないのだが、格式を重んじる舞楽の世界の人間が不良少女とつきあうなど世間体が悪いと不満そうだった。
男谷は早くも哲也の妹・葉子の名前を出して、哲也の事情を説明しようとするが、結局ここではまだ語られることはなく、次の場面へ。
その日の襲撃は行なわれなかったが、数日後、今度は靖男たちが朝男の率いる流星会に襲われる。笙子は仲間にせっつかれて、加勢に向かう。

で、流星会と全面的な戦いになる。笙子も、小さな体で頑張って木刀を振り回す。
笙子たちは流星会を追い詰めるが、ちょうどそこへ、再びあの笙の澄んだ音色が聞こえる。

笙子が振り向くと、埠頭の上に立って、哲也が笙を吹いていた。
笙子、急に闘志を失い、その場に立ち尽くす。
その時、パトカーのサイレンが聞こえた為、朝男は捨て台詞を吐いて退却し、決着は持ち越しとなる。
仲間は口々に笙子を非難するが、
笙子は「みんな、ごめん」とだけ言い残し、哲也のところへ走り出す。

笙子、涙を流して哲也の胸に飛び込む。
……冷静に考えたら、なんか変な展開だなぁ。
それに、まだ1話目だというのにふたりがフォーリンラブしてしまうと言うのは、ちょっと勿体無い。
笙子「哲也さん、あたい……私、足を洗います。笙子は生まれ変わります。私は確かに非行の限りを尽くした女です(註・ほんとはあまり尽くしてない)。今までの私は命なんて少しも惜しくなかった。命ギリギリのところに自分をぶん投げて生きるか死ぬかを楽しんでさえいたんです。堕落してくことが気持ちよかった。私、今度こそ、まっとうに生きます。哲也さん、私に舞楽を教えてくれますか」
哲也「勿論だよ、笙子さん。
月謝さえ払ってくれれば」
笙子はつい数日前、「あたいたちの世界を作ろうぜ」宣言したばかりだというのに、引退を表明する決心をする。この段階で、笙子は既に「不良少女」ではなくなっているのだ。無論、今後も紆余曲折あるのだが、基本的には笙子は更生したと見てよい。
更生するにしても、もう少しこう、それに至るドラマが見たかったところだ。
ジョーズで、引退宣言をする笙子。無論、仲間たちがあっさり承服する筈もない。

おアキ「私も笙子ちゃんの気持ちが分かるわけ。私も若い頃突っ張ってて、少年刑務所まで行った女じゃん。だけどねえ、このヨシ坊に惚れてからメロメロ、可愛いのなんのって。もうコノヤロー!」
人目も憚らず、愛する夫・ヨシ坊を抱き締めるおアキ。
ヨシ坊を演じているのは、「ウルトラマンレオ」のトオルを演じていた新井つねひろさんである(放送時は新井育生名義)。

結局何が言いたいのかよく分からないおアキ。そこへ靖男たちもやってきて、笙子自身が決めたルール、足を洗う時はフクロ叩きの洗礼を受けねばならないと言う掟に従い、ボコボコにされる。
つくづく、フクロ叩きが好きな人たちだ。 
その後、例によって暇な哲也が駆けつける。
ジョーズの前に、ぼろぼろになった笙子が倒れている。
笙子「哲也さん、私、抜けたわ」
哲也「笙子さん、立派だったよ」
血だらけの笙子を抱き締める哲也。
そのままお姫様抱っこして連れて行こうとすると、剛たちが出て来て、呼び止める。
剛「笙子は確かにあんたに渡した。半端なことをしやがったら、俺があんたを刺し殺す!」 剛は剛で、笙子にほのかな恋心を抱いているのだ。
剛たちはすぐに店内に戻る。
哲也は
(刺し殺されるのはイヤだなぁ)と、そっと笙子の体を地面に下ろして去って行くのだった、と言うのは嘘である。
しかし、笙子の戦いはまだ始まったばかりなのだ。