第11話「運が悪けりゃゴリラが泣くぞ」(1979年7月15日)

空き地で、ブーメラン投げとダーツ投げの練習をしている麻生とダーツ。塀の向こうに飛ばしたブーメランが、たまたま歩いていたゴリラに命中し、激怒したゴリラに追いかけられる。
いつもながら仲の良いことで、微笑ましい……。

OPの後も、しつこく事務所まで追いかけてくるゴリラ。と、ちょうどテレビで殺人事件のニュースをやっていたので、しばしその画面に見入る一同。
アナ「……マンションで男の人の変死体が発見されました。男の人はキャバレー支配人石田隆さん35才で、頭を鈍器で殴られて死亡していた為、警察では殺人事件として……なお、第一発見者のマンション管理人、川原政太郎さんの証言によりますと、犯行時間と思われる頃、石田さんの部屋から、若い女性が逃げるように立ち去ったとのことで……その後の捜査により、現場から立ち去った女性は同じ杉並区に住む、大町美代子と判明致しました。捜査当局は大町を殺人容疑者として、全国に指名手配……」
大町美代子と言う名前を聞いたゴリラ、「なにーっ? そんなバカなーっ!」と絶叫する。
新妻署に戻ったゴリラは、その手配書の写真を見てますます顔色を悪くする。その足で事件を担当している城北署に飛び込んで、平身低頭、事件の情報を教えて貰おうとする。だが、容疑者のことを悪く言った刑事とすぐ喧嘩になって大暴れする。それを聞いた上司の桂が慌ててゴリラを引き取りに来る。
桂は丁寧に頭を下げた上で、参考までにと、改めて事件の概要について尋ねる。
大町美代子は石田の部屋に、以前からたびたび出入りしていたらしい。事件のあった日、管理人の川原はその美代子が石田の部屋から逃げるように出て行くのを見掛け、石田の部屋を覗いてみると、石田が頭から血を流して倒れていたと言う。そばには青銅製の置物が転がっていた。
城北署では、美代子が痴情のもつれで石田を殴り殺した単純な事件だと見ていた。

桂と並んで歩きながら、美代子との関係を話すゴリラ。
ゴリラ「恥ずかしながら、自分と彼女は中学時代の同級生であります。その頃彼女はクラス委員を務め、男子生徒たちの憧れの的でした。あれは雨のしとしとと降る、春の午後のことでありました……それはまさに、運命の再会でありました」
回想シーンで、たまたまゴリラとぶつかった相手が、その美代子だったのだ。

ゴリラ「美代ちゃん、美代ちゃんだろっ?」
美代子「雄ちゃん?」
ゴリラの本名は、神保雄三と言うのだ。
美代子を演じているのは、「暴れん坊将軍」でお馴染み、岐邑美沙子さん。
ゴリラ「桂さん、自分を何とか捜査に加えて貰うよう、頼んで頂けませんか」
桂「それは無理だな。この事件は城北署の管轄だからな」
ゴリラ「どうしてもダメでしょうか?」
桂「ダメだ」
ゴリラは、桂が呼ぶのも聞かず、何処かへふらふらと行ってしまう。
ゴリラが最後に縋ったのは宿敵麻生探偵事務所だった。ゴリラは警察より先に美代子を見付け出して欲しいと麻生に土下座をして懇願する。
麻生「あなたの気持ちも十分に分かりますが、しかし……」
ダーツ「報酬は頂けるんでしょうね、ゴリちゃん」
ゴリラ「報酬?」
ジュン「あのね、我々は税金で食ってる君たちとは違うんだからして、歩合制だから……」
ゴリラは、退職金を前借りしてでも払うと吠えるが、ダーツたちに「退職金貰える前に懲戒免職になるんじゃないの?」などとおちょくられる。冗談の通じない短気なゴリラは、「貴様らなんかに金輪際頼まん」と叫んで飛び出して行く。
そう言ったものの、麻生は石田が支配人をしていたピンサロ「ハレンチ学園」(笑)へ行き、情報収集をする。ダーツとジュンも、それぞれ個別に、石田のマンションや、美代子の勤めていた病院(美代子は看護婦をしていた)を回って、聞き込みをする。根は良い奴らなのだ。
ダーツとジュンは事務所に戻ってくるなり、よくも出し抜いたなと喧嘩を始める。
ダーツ「根性が汚いんだよ。自分ひとりだけ良いカッコしようと思っちゃってこの」
ジュン「自分だって、運が悪けりゃゴリラが泣くぜって言ってたじゃないか」
ダーツ「一番ウケてたのお前じゃないかよ」
ジュン「俺は番組のタイトルに使おうと思ってたんだ……」 一方、思い詰めたゴリラは、唐突に辞表を提出する。
ゴリラ「本日をもちまして職を辞し、一個人として殺人事件の真相を究明する覚悟であります!」
ゴリラは敬礼して出て行こうとするが、
桂「遅かったな。今、大町美代子が逮捕されたそうだ」
ゴリラ「逮捕っ……」
桂「どうやら彼女、犯行を認めたらしい」
がっくりと崩れ落ちるゴリラ。桂はさりげなく、渡された辞表を手の中で握り潰すのだった。
ショックのゴリラ、「美代ちゃん美代ちゃん」と、人目も憚らず街中をさまよい歩く。

麻生、そのまま「ハレンチ学園」でボーイをしている。
ある日、いかにも暴力団風の連中がやってきて、石田のロッカーを漁っていた。
どうやら、石田は暴力団から5000万をネコババしていたらしい。
警察の現場検証でも、石田の部屋からその5000万は出て来なかった。と言うことは、普通考えて、石田を殺した美代子が持ち逃げしたことになるが……。
ちなみにこの兄貴分を演じているのは、このブログでは一つ目タイタンとして有名な浜田晃さん。

その話を盗み聞きした麻生、ダーツと二人で早速美代子のマンションを見張る。
ダーツ「しかし人助けってのはやってみるもんだぜ」
麻生「うん?」
ダーツ「だってさぁ、キャプテンだって最初はゴリラがかわいそうで調べ始めたら、5000万の山にぶつかったじゃない」
麻生「そういうこと」
ダーツ「こいつはついてきたぜ、と言いたいところだが、ほんとにあの部屋にあんのかね」
美代子の部屋には、ルームシェアをしていた若い女性がぽつねんと座っていた。
麻生は、彼女に先に金を見付けられてはまずいと、単身その部屋へ向かう。ところが、ほぼ同時に城北署の刑事たちが来て、家宅捜索を始める。だが、結局金は出て来なかった。

事務所に戻り、金のありかについてユーコたちと話す麻生たち。
ダーツ「5000万何処行っちまったんだろう?」
久美「元々おかしいのよ、いくら痴情関係のもつれか知らないけど、普通の女の人が男の人殺した後に、現金持ち逃げできると思う?」
麻生「いいセンを衝いてるな。殺しはともかくとして、金をかっぱらった奴は他にいると見るのが正解だ」
ダーツ「でもさ、石田が一晩で使っちゃったってことも考えられるでしょ」
ユーコ「一晩で?」
久美「まさかー」
ユーコ&久美「ねー?」
ダーツ「そう思うのが女の浅はかさ、ギャンブルよギャンブル、
だいたい、インベーダーゲームに万とつぎこむジャリがいるこのご時世によ、大の大人が本気になってバクチに手を出したら、5000万なんてあっという間よ」
時代を感じさせる台詞だ。……ま、今も大して変わらんな。

ユーコ「信じられない」
久美「だから男って」
ユーコ&久美「ばーかっ!」 
麻生は美代子の勤めていた病院へ行き、同じ部屋に住んでいる竹田あつ子と言う看護婦に会う。
あつ子を演じているのは早川絵美さん。
あつ子「美代子さん、ほんとに
あの人殺したんですか?」
麻生「本人は認めているようですね。しかし、私にはどうしても動機が飲み込めんのですよ。美代子さんに恋人がいたの知ってますか」
あつ子「確か、中学時代の同級生とか」
麻生「そうです、おかしいと思いませんかね。恋人のいる女性が、また別の男と何かあるなんて……もっともですよ、彼に再会する前に付き合ってて、その弱みを握られていたと言うなら話は分かるんですがね」
麻生、いつになく鋭い目付きで、あつ子を問い詰める。
麻生「あなた、何か知ってますね。殺された石田って男のことを知ってるんじゃないですか」
あつ子「ど、どうしてそんな」
麻生「
あの人って言いましたね。普通、全然知らない男のことをあの人とは言わんでしょう」
名探偵顔負けの追及に、あつ子は、石田と関係があったのは自分だと打ち明ける。
後編に続く。