第23話「大神家一族の三姉妹と天一坊」(1977年7月6日)
の続きです、
一応、ネタバレあり。 早川が大神家の門の前に差し掛かると、中から狼狽した嵐子が飛び出してくる。ショックのあまり口も利けない様子に、早川はすぐ屋敷の中へ入る。

と、無残にも、殺しを依頼した霧子自身が殺されていた。無論、紅狐党(と言うかダンディハリー)の仕業である。
……しかし、彼らが真っ先に殺すべきは天一がニセモノだと知っている小雪であって、霧子ではないと思うんだけどね。
霧子の死体に縋り付いて泣く小雪。と、庭の方から誰かの悲鳴が聞こえる。

庭に出てみると、「スケキヨさん」が頭から血を流して倒れていた。
今度は「スケキヨさん」に縋り付く小雪。
小雪「しっかりして、大丈夫?」
スケ「だいじょぶです、いきなり後ろからやられて……」
小雪「ごめんなさい、私が天一兄さんになってくれと頼んだばかりに……私こうなったら何もかも警察に話します!」
スケ「ま、待ちたまえ!」
小雪の言葉に、思わず大きな声を出してしまう「スケキヨさん」。警察に介入されては彼らの計画が台無しになってしまうからだ。

そばで見ていた早川、すかさず、「少しばかり勝手が違ったようだな」と切り込む。
さらに「スケキヨさん」の胸倉を掴み、
早川「傷もないのに手品で血を出して見せるとは、ご苦労なことだといったのさ! ええ、ダンディハリー?」
小雪「ダンディハリー?」
しばし睨み合う二人。やがてハリーは「さすがだぜ、早川」と、自ら包帯を外し、素顔を見せる。最初に見せた火傷は、特殊メイクだったのだろう。
小雪「それじゃ、初めから私を騙すつもりで……」
ハリー「あんまりちょろいんで、張り合いがなかったぜ」
顔を覆い、号泣する小雪。ハリーは捨て台詞を残して去って行く。

早川、警察署に東条を訪ねる。
早川「おい東条、頼んでおいたダンディハリーの指紋の結果、出たかい」
東条「出た。驚くべき結果だな。誘拐される前の天一君の手形と、このお守り袋の鈴に付着していた指紋は、全く同一のものだ」 早川「すると……」
東条「結論はひとつだ。ダンディハリーは小雪さんの正真正銘の兄さんの天一君と言うことになる」 早川「やはりそうか……偶然にしては腕のホクロが一致すると思ったんだが」
この指紋のくだり、本家「犬神家」の、奉納手形や、時計の蓋に付いた指紋を巧みにアレンジしている。
殺し屋が、実は天一だったと言う「偶然」も、「犬神家」における数々の「恐ろしい偶然」と通じるものがある。
ちなみにシナリオでは、ここにみどりさんとオサム君もいて、早川と会う筈だったが、実際はカットされている。よって今回、二人の出番は無し。
早川が大神家に急行するが、既に小雪はハリーに呼び出されて出掛けた後だった。彼を愛してしまった小雪、自分の力でハリーを改心させるつもりなのだ。

ハリーに抱き付いて咽び泣く小雪。これだけ何回も泣くキャラも、珍しい。
ハリーは小雪を抱きながら、ナイフを振り上げて殺そうとする。

が、寸前で早川が現れ、阻止する。
早川「ハリー、そんなことはしない方が良い、いくらお前でも、実の妹さんを殺しちゃ寝覚めが悪いってもんだぜ」
ハリー「なにぃ、今なんと言った早川?」
早川「お前さんが本物の天一君だと言ったのさ」
驚いて、互いの顔を見る小雪とハリー。
早川「警察が指紋の一致を証明してくれたよ、3つの時にさらわれたことは覚えちゃいないだろうがな」
ハリー「俺が? 嘘だ。嘘だーっ」
叫びながら走り去っていくハリー。
代わりに紅フォックスたちが現れる。
紅「いいことを聞かせてくれたな、早川」
早川、マシンガンの雨を浴び、ギャーッと悲鳴を上げて倒れる。

逃げようとした小雪を、紅フォックスたちが取り囲む。
紅「ダンディハリーが本物の天一と分かった以上、ダンディハリーと我々の繋がりを知っているものは、気の毒だが死んで貰う他はない!」
小雪「はぁ、ひややっ、あっ」
紅「へへへへへへっ」 ハイテンションで小雪に迫る小林勝彦さん。
こういう演技って、演じてても結構楽しいんじゃないかと思う。

後はいつものように、ズバッカーに乗ったズバットがやってきて、悪人どもを成敗する。
「ハッハッハッハッハ、ズバッと参上、ズバッと解決、人呼んでさすらいのヒーロー、快傑ズバァッッッッ!」 
ズバット「逃げるんだ」
小雪「はいっ」
ここで突然ですが、昭和特撮ヒーローの法則。
ヒーローに助けられた人は、ヒーローに「逃げろ」と言われないと逃げない。 
途中、ハリーが戻ってきて、手榴弾をズバットに投げる。
手品関係ないじゃん……。 爆発は地味だが、紅フォックスが耳に栓をしているのが細かい演出(実際、うるさかったんだろうが)。
後方に、乗り捨てたズバッカーが見えているのも、割と珍しい。
ズバット「ハリー、自分の妹を殺そうとした奴を味方するつもりか」
ハリー「俺には親も兄弟もいねえ」
マシンガンを構えるハリーだが、小雪の「お兄様、悪いことはしないで!」と言う悲痛な訴えに、身動きが取れなくなる。
取っ組み合うズバットとハリー、やめさせようとする小雪。そこを紅フォックスがマシンガンで撃とうとする。

ハリー「小雪、危ない!」
ハリーは咄嗟に小雪を庇い、銃弾を体に浴びて壮絶な最期を遂げる。
小雪「お兄様ーっ」
ズバットは、マシンガンの弾を全てムチで払い落とし、

ズバット「2月2日、飛鳥五郎と言う男を殺したのは貴様か」
紅「俺は知らん、俺はその頃、シシリー島でスパゲティを食っていたんだ」 ズバットに対する悪人の「アリバイ申し立て」の中では、最も笑える台詞だ。
事件解決後、ラストも早川のモノローグで締め括られる。

早川「小雪と嵐子は、父と姉、そして兄・天一の冥福を祈りつつ、仏門に入った。残された遺産の50億円は全て施設に寄付されたのである」
何も尼さんにならなくても……。 シナリオでは、ハリーは死なず、天一として人生をやり直すことになっていたらしい。また、小雪たちが出家するシーンもない。
と言う訳で、30分のヒーローもので、「犬神家」をパロディすることに成功した力作であった。