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「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編


 第29話「ひとりぼっちの地球人」(1968年4月21日)
 の続きです。

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 仁羽教授、意識を失ったソガの体をまさぐり、通信機を見付けて手で握り潰す。
 この時のゴリッと言う効果音が好き(知るか)。

 だが、ソガと連絡が取れなくなった為、キリヤマは現地にいるダンに研究室に踏み込むよう命じる。自分はアマギとフルハシを伴って、ホーク2号で人工衛星へ向かう。

 ソガ、気が付くと、複雑な機械に囲まれた部屋で、椅子に縛り付けられていた。教授の声が聞こえる。

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 教授「科学衛星より宇宙船へ、科学衛星より宇宙船へ」
 呼びかけに反応して、教授の目の前の枠がスクリーンになり、 

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 プロテ星の宇宙船を映し出す。今だったらなんてことはないが、当時としてはかなり高度な特撮であろう。

 教授「到着予定時間を繰り上げて貰いたい。地球防衛軍が65分後にここに来る」
 宇宙船「了解、準光速(?)に切り替え、30分以内に到着する」

 ソガ「貴様、何をしてるんだ? 今の宇宙船はなんだ?」
 教授「この衛星を持ち去る為にやってくる、我がプロテ星の宇宙船です」
 ソガ「なにっ、すると、ここは?」
 教授「地上36000キロに静止している科学観測衛星の中です。あなたをここへ連れてきたのは他でもない。防衛軍の到着時間が知りたかったからです」
 ソガ「バカな、そんな秘密事項をベラベラ喋るとでも思っているのか?」
 教授「ところがもうすっかり伺いました。あなたのお掛けになっていらっしゃる椅子は、記憶探知機と申しましてな、あなたの記憶をひとつ残らず引き出す役目を果たしてくれました」
 ソガ「ぐぞーっ!」
 知られたくない数々の恥ずかしい秘密まで全部丸裸にされて、死ぬほど恥ずかしくて悔しいソガであった。

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 教授は、物質電送機の上に立ち、ソガの目の前で姿を消す。

 教授の体は大学の研究室に隣接した秘密の部屋に転送される。そこへ血相変えた一の宮がやってくる。
 一の宮「すぐ出発しましょう、ウルトラ警備隊が追って来ます」
 教授「分かってます。宇宙船は30分後に出発します」
 一の宮「そうか、とうとう来たか!」
 包みきれない興奮に、頬を高潮させる一の宮。

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 一の宮「ははは、これで地球を脱出できる。僕たちが行ったあと、この電送装置や科学衛星をどうするんです?」
 教授「勿論、破壊していくよ。ただ、あの衛星だけは持って行くがね」
 一の宮「あんなもの、二人でいくらでも作れるじゃありませんか」
 教授「そうはいかん、あの中には地球防衛軍の各国の秘密基地を観測した戦略資料が収めてあるんでね」
 教授のさりげない一言に、顔色を変える一の宮。

 一の宮「えっ、それじゃ? あの衛星は?」
 教授「さよう、科学観測衛星と言うのは表向き、実は地球侵略のためのスパイ衛星。君の協力でこの目的も完成した。あれだけの資料がプロテ星へ持ち込まれれば、地球を侵略するなど、赤子の手を捻るようなもんだ」

 一の宮「あなたは、僕の知識をそんなことのために?」
 教授「何を驚いているんだ。君があれほど軽蔑していた地球だ。どうなろうと知ったことではないだろう」
 だが、一の宮は憤然と教授に掴みかかる。

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 教授「これはまた、あれほど地球を脱出したがっていた男が、今度はその地球を命懸けで守ろうと言うのか。いやはや、地球人と言うのは全くわからん生物だ」

 一の宮は膝をついて「お願いです、さっき言ったことは嘘だと言ってください、あなたは侵略者なんかじゃない。僕が唯一人信じることの出来た、優れた科学者だ!」と嘆願するが、

 教授「一の宮君、君の能力は私も欲しいと思うが、やむをえんな」
 一の宮「くそーっ」
 一の宮は再び教授に掴みかかる。

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 押し倒された教授、プロテ星人本来の姿になって立ち上がる。手が大きくて可愛いのだ。

 そこへダンが駆けつける。ダンがセブンに変身すると、プロテ星人は窓を突き破って外へ出る。

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 共に巨大化して、大学の敷地に対峙する両者。

 このセット、冒頭で出てくる大学の実景とそっくりで、溜息が出る素晴らしさ。30分番組の一回きりのシーンの為に、ここまで金と手間を掛けることの出来た奇跡のような時代が、確かにあったのだ……。

 賢明なプロテ星人は、まともに戦っては勝ち目がないので専ら幻術を使ってセブンを翻弄する。

 一方、プロテ星の宇宙船は地球に接近、人工衛星を回収して持ち去ろうとする。
 それを目視しているホーク2号のキリヤマたち。65分かかるって言ってなかったか? まぁいいか。

 だが、ソガが衛星の中にいるので撃ちたいのは山々だが攻撃も出来ない。ホーク2号で追いかけるが、向こうの方が速く、追い付けない。

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 プロテ星人は、セブンとの戦いの最中、教授の姿になって研究室へ舞い戻る。
 教授「いつまでも私の抜け殻と戦ってるが良い」

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 教授が転送装置の上に立つと、一の宮が現れる。
 教授「やはり私の星へ来たいのか」
 一の宮「残念だが教授、二人同時では再生不能です」
 教授「なにっ」
 一の宮も転送装置の上に立ち、二人同時に次元のはざまに消えてしまう。

 と、セブンの前のプロテ星人の幻影も消える。セブンはすぐ空へ飛び上がり、宇宙船に追いつき、人工衛星を取り戻して引き返す。宇宙船が追ってくるが、ホーク2号によって撃破される。

 事件解決後、

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 大学の屋上。チャイムの音が遠く聞こえ、鳩が一斉に飛び立つ。

 ダン「何を考え込んでるんですか?」
 ソガ「いや、あの天才児のことが、ふと……生きていたら立派な科学者になったろうに……」
 ダン「死んだとは限らないでしょう。宇宙を彷徨ってるうちに、元の姿を取り戻して、どっか遠くの星からこの地球を懐かしがって見ているのかもしれないし、あるいはひょっこりまたこの学校に戻ってくるかも知れない……」

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 ここで、冒頭と同じシーンになる。廊下をひとり歩いている冴子。仁羽教授の研究室から、コトッと物音がする。思わず立ち止まる冴子。

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 ノブを持って確かめようとするが、
 ナレ「おっと、また宇宙人がいるのかもしれませんよ」と言う言葉にあわせて、微笑を浮かべてそのまま立ち去ってしまう。

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 その後、カメラは部屋の中に入り、開いた窓と、風にそよぐカーテンを映す。

 ナレ「さっきの物音は、どうやら春風の悪戯だったようです……」

 センス抜群のクロージングである。

 現実の世界に嫌気が差し、地球からの脱出を夢見る青年が、宇宙人の甘言に乗せられて知らず知らず侵略の手助けをしてしまうと言う、45話「円盤が来た」と一脈通じるものがある名作でありました。
 脚本は、市川森一さん。セブンでは他にも「北へ還れ!」「盗まれたウルトラ・アイ」などの優れた作品を執筆しておられる。

 さて、再開したセブン傑作選シリーズでしたが、今回で一応終わりとさせて頂きます。またいつかネタが切れた時にやるかもしれません。


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コメント

google検索でこのHPに流れてきました。

私もウルトラセブンの傑作として一番に挙げたい作品が『ひとりぼっちの地球人』でした。共感できて嬉しくコメントいたしました。

オープニングのソガ・アンヌ・フルハシ・アマギのやりとり、プロテ星人とセブンの戦い演出、仁羽教授と一の宮とのやりとり。本当にすばらしいものだと感じていました。

市川森一さんという方が脚本なのですね。知りませんでしたが書いてある通り「北へ還れ!」「盗まれたウルトラ・アイ」と素晴らしい作品を作られていたのですね。

ただのセブン好きな一般人の書き込みでした。

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編(10/20)  

リボン様

初めまして。丁寧なコメントありがとうございます。
よろしければまた遊びに来てくださいね。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編(10/20)  

プロテ星人のピース光線爆笑必須ですね〜😅ソガ隊員は宇宙(プロテ星)に拉致された上に自分の秘部を記憶装置によってどんなことを暴露されたのでしょうか?知りたいですね

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編(10/20)  

ふて猫様
>ソガ隊員は宇宙(プロテ星)に拉致された上に自分の秘部を記憶装置によってどんなことを暴露されたのでしょうか?知りたいですね

アンヌならともかく、ソガの秘密なんてあまり知りたくないですが。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編(10/20)  

欲を言えば、一の宮が人間に絶望した葛藤を描いて欲しかったです。
しかし、これは市川氏でなければ書けない傑作には変わりありません。

プロテ星人はやはりプロメテウスからかなぁ?

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第29話「ひとりぼっちの地球人」 後編(10/20)  

影の王子様
>欲を言えば、一の宮が人間に絶望した葛藤を描いて欲しかったです。

確かに、割と重要なところが抜けてますよね。

関係ないけど最近「新マン」を見てますが、改めてみると面白いですね。「セブン」同様、不定期でレビューしたいなぁとか思います。

帰ってきたウルトラマン  

「一番好きなウルトラシリーズは?」と聞かれたら「セブン」ですが
ウルトラシリーズのエピソードの中で(平成は1/3くらいしか観てませんが)
私の「暫定1位」が「新マン」5・6話です!
もっとも、子供の頃はさっぱり良さが判らず、おっさんになってようやく判りました。
5・6話と13・14話、16・17話の3つの前後篇は「東京がメチャクチャに」なりますが
脚本の上原氏が
「東京は首都なのに本土決戦が行われなかった。だから(映像で)メチャクチャにした」
と言っていたのを何かで見ました。

「11月の傑作群」と呼ばれる31~34話、37・38話の前後篇も良いです。

「シン・ゴジラ」が11月12日(日)21時から放送されますが
庵野監督が一番好きなのが「新マン」だそうです。

Re:帰ってきたウルトラマン(10/20)  

影の王子様
返信ありがとうございます。

>「一番好きなウルトラシリーズは?」と聞かれたら「セブン」ですが
ウルトラシリーズのエピソードの中で(平成は1/3くらいしか観てませんが)
私の「暫定1位」が「新マン」5・6話です!

そんなに思い入れがあるとは知りませんでした。
全体的な世紀末的退廃と言うか、ダークな雰囲気がありますよね。

第29話「ひとりぼっちの地球人」について

連続失礼します。
「セブン」の中でも切ない話の1つですね。電送移動機を発明した一の宮青年ですが、彼の理論は理解されなかったのでは無く危険視されたのではないでしょうか。
人体を電送できればこれほど便利で楽な移動法はありませんが、それが悪用されたり大きな事故を引き起こしたりしたら大問題です。「電送人間」は電送機を悪用して犯罪を重ねてましたし、電送中に電送機に異物が入り込めば「ハエ男の恐怖」のような恐ろしい事態を招きかねません。
「メカゴジラの逆襲」の真船博士然り、天才肌の人物になると自分が完璧だと思うあまり常識的な考え方ができなくなるようですが、一の宮氏もその類のようですね。周囲に誰か親身になって忠告してくれる人がいれば、宇宙人の口車に乗るような事にはならなかったのではないかと思うと一の宮氏が気の毒です。

結局、一の宮氏は侵略者と心中という形で地球を救いますが、彼は地球人を救いたいというよりは地球人としての誇りを貫きたかったのかもしれませんね。彼は今も宇宙からひとりぼっちで地球を見ているかもしれません。

Re: 第29話「ひとりぼっちの地球人」について

これも救いのない話ですよね。

メルヘンチックな結末のお陰で、後味は悪くないですが。

No title

今から54年前の今日、放送されました。プロテ星人の分身の術は、宇宙忍者バルタン星人と全く同じで、そう思いますか?

Re: No title

そう言えば似てますね。

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