CM後、レッドドラゴンの乗ったタクシーの前に早川があらわれる。
レッドドラゴンはタクシーから降りると、

レッドドラゴン「あんた、早川だね」
早川「ほーっ、俺を知ってるとはな。こっちもお前さんのことは知ってるぜ、レッドドラゴン、中国拳法の腕前は日本じゃ二番目だってことをな」
いつもとは逆の立場で台詞が交わされるが、いつものように珍技対決となる。

レッドドラゴン「はははは、勝負してみるかい、早川」
ドスの利いた声が素敵なドラゴン姐さんを演じるのは、ロマンポルノでも活躍していた川村真樹さん。
なんとなく、横山道代さんに似てる。
いつもと違い、早川は、自分が勝ったら青兵衛に会わずに街から立ち去ることを要求する。
無論、令香を守るためである。
レッドドラゴン「いいとも、お前が勝つなどと言うことはないがね」
早川「その約束、破ったら許さんぜ」
レッドドラゴン「しつっこいね、私も武芸者、万が一私が負けたら、黙ってこの街を出て行く。二度とここへは来ないよ」
くどいほどに念を押す早川に、レッドドラゴンも改めて確約する。
さて、先攻のレッドドラゴン、神社にあった狛犬の両目を蹴り飛ばすと言う、冗談みたいな技を披露する。
さらに、その両目を早川にぶつけるという、早川のお株を奪うような「おまけ」もつける。
レッドドラゴン「ふふ、これ以上のことが出来るかい? 石の目玉を弾き出す技を持っているのは世界でも私だけだよ」
ま、そもそもそんなことやろうとする人いませんからねえ……
両手の甲でかろうじて目玉を受け止めた早川だったが、

早川(女にしては確かに凄腕だ……いってえ)
内心、レッドドラゴンの超人的な技に舌を巻いていた。
実際、歴代用心棒の中では5本の指が入る、いや、指に入る強敵であろう。
後攻の早川、その目玉を宙に放り投げてから蹴ると、拝殿の鰐口に一度当ててから、

からっぽになった狛犬の眼窩に目玉を元通り嵌め込むと言う、これまた冗談みたいな技を繰り出す。
さらに、
早川「とうやっ!!」
狛犬が乗っていた玉に飛び蹴りを食らわせ、

レッドドラゴン「うーっ!!」
それを、ぼーっと突っ立っていたレッドドラゴンの胸にぶつける。

一拍置いて、支えをなくした狛犬が前傾する。
早川「石の狛犬を笑わす技を持っているのは世界に何人いるかな、うん?」
早川、謎めいたことを言って指をスナップさせると、

狛犬「ばおーっふぁっふぁっ」
狛犬の下顎が外れてカチャカチャと動き、ほんとに笑ってるような声を立てる。
早川の勝利となるが、この後、二人とも、神社の人から冷や汗が出るほど怒られたそうです。
続いて、「首領Lの部屋」の時間。

L「近頃、警察の動きが激しくなってきた節がある、ことによったら一人や二人のスパイが入り込んでいるかも知れん。青兵衛、どんなことがあっても、悪の大組織ダッカーのことだけは勘付かれてはならんぞ」
青兵衛「ご心配無用です、首領L、この十文字青兵衛、万全の手は打ってあります」
鼻息荒いLに対し、ずーっとこうべを垂れて畏まっている青兵衛だが、その自信に満ちた物腰は完全にLを食っており、役者の格の違いがモロに出たシーンとなっている。

マミ「にゃーお」
青兵衛「はっはっはっはっ、万全の手は打ってあります……マミ、良かったね」
自分の屋敷に戻った青兵衛、Lに言った台詞を繰り返しながら、表面的には他愛なくマミと戯れていたが、

青兵衛「早川はまだ始末できないようですね、ミス・レッドドラゴン」
一瞬たりとも油断することなく、背後にナイフを持って忍び寄った令香に、振り返りもせずに話し掛ける。
令香「……」
ドキッとして、咄嗟にナイフを背中に隠す令香。
青兵衛「それほどの腕を持ちながらモタモタしていると、あらぬ疑いを掛けられることになりますよ」
いつの間にか左手に握っていたピストルを見せつつ、令香を心理的に揺さぶる。
恐らく、すでに……と言うか、最初から令香の正体を見破った上で、あえて彼女を身辺において観察することで、ネズミをもてあそぶ猫のような、嗜虐的な楽しみを味わっているのだろう。
ほんと、これだけ精神的にヤバいボスは、ちょっと他には思いつかない。
と、そこに、潜入しようとしてチンピラに捕まったと言う早川が引っ立てられてくる。

青兵衛「はははは、早川さん、どうしました」
早川「ふっ、どうしても貴様に会いたくなってさ」
青兵衛「ほっほっほっほっ、そりゃまたどうして」
早川「貴様が今まで車で何人の人を殺したのか聞きたくなってね」
早川の言葉に、弟のことを思い出したのか、令香の目に憎しみの炎が宿る。

青兵衛「ふっははっ、さあ、数えてみたことはありませんが……
趣味なのです」
考え込んで見せてから、さらっと恐ろしい言葉を口にする青兵衛。
完全にイカれてますね。
早川「貴様ぁーっ!!」
早川もカッとなって掴みかかろうとするが、戦闘員たちに押さえられる。
青兵衛はピストルを構えると、
青兵衛「あなたには死んでもらいます、ただし、このミス・レッドドラゴンとの決闘でね」
と言う訳で、

建物の、緩く傾斜した屋根の上に上がり、早川と令香の二度目の一騎打ちが行われることになる。
……
考えたら、青兵衛が極悪人であることは分かりきってるのだから、こんな小細工などしないで堂々とズバットになって突入すれば良いのでは?
ここも、青兵衛が稚気を出してくれたからいいようなものの、その場でズドンと撃たれていたらどうするつもりだったのだろう?
早川「行くぜ、レッドドラゴン」
令香「おいで、早川」

二人が馴れ合いの勝負をするのを、三匹目の猫を抱きながら楽しそうに見物している青兵衛。

早川「敗れるぞ、令香さん」
令香「あなた、私を助ける為に?」
令香の腕を取ると、小声で令香に段取りを教える早川。
早川「レッドドラゴン、くたばれーっ!!」
令香「やーっ!!」
ついで、聞こえよがしに叫ぶと、令香の体を投げ飛ばす。
目で頷きあった後、令香の蹴りが早川にヒットし、胸壁まで吹っ飛ばされる。
早川「逃げるんだ、早く……」
小声で指示する早川。
令香を助けるだけならさっきも言ったようにズバットになって乗り込めば済むことなので、わざと自分が負けることで令香を本物のレッドドラゴンだと青兵衛に信じさせ、潜入捜査を成功させる為なのかと思ったのだが、いまひとつ何がしたいのか分からない。
第一、早川ならともかく、令香にこんな場所からひとりで逃げるのは不可能に近いだろう。
つーか、東条は何やってんだ?
仮にも上司だろうに、令香のサポートは早川にまかせっきりのようで、いささか幻滅である。
それはともかく、令香も了解したと言うように頷いて見せるが、
青兵衛「ほほほほ、お見事です、ミス・レッドドラゴン、ではこれでトドメを願いますよ」
それより先に、青兵衛が令香の勝利を讃え、ピストルを放り投げる。
令香「……」
青兵衛「どうしました、それで早川の息の根を止めれば、あなたを正式に採用することにしましょう」

令香「……」
ここで疑われては困ると、銃口を、這い蹲っている早川に向ける。
早川「はっ!!」
本気でドキッとする早川。
ひょっとして、令香が弟の仇取りたさに、自分を殺して青兵衛の信頼を得ようするつもりなのかと考えたのだろうか?
令香も一瞬本気でそう思ったのかもしれないが、そんなことをすれば、自らを青兵衛の同類に貶めることになるので、

令香「……!!」
くるっと振り向いて青兵衛を撃とうとするが、引き金の音が空しく響くだけ。

青兵衛「ほほほほ、とうとう尻尾を出しましたね、女刑事さん」
そう、令香本人に正体を暴露させる為に、わざと弾の入っていない銃を渡したのだ。
敵ながら、巧妙極まりない策略であった。
令香「何故?」
令香の問い掛けに対し、
青兵衛「いや、レッドドラゴンなのに青い服着てるから……」 令香「いっけねえーっ!!」
じゃなくて、
青兵衛「親切に知らせてくれた人がいるのですよ」
早川「……」
「まさか」と思う早川だったが、果たして、そこに本物のレッドドラゴンがあらわれる。
しかし、令香がニセモノだとは分かっても、それが刑事だとどうやって知ったのだろう?

早川「きたねえぞ、レッドドラゴン、約束を破ったのか!!」
悪人だろうと、武道家としての信義は守るべきではないかと、早川は怒りを爆発させる。
んが!!
レッドドラゴン「
それよりも早川……」
早川(軽く流されちゃったっ!!) 早川のダンディズムも、熟女の前には形無しなのであった。
レッドドラゴン「この偽者を救おうとしてわざとやられた自分の甘っちょろさを反省するんだねえ」
早川「なにぃ」
早川、令香を人質に取られては抵抗できず、青兵衛の銃弾を受けて、胸壁から転落する。
令香「早川さん!!」
青兵衛「無駄ですよ、女刑事さん、いくら早川でもこの屋上から落ちたとなればひとたまりもありませんよ」
令香「十文字青兵衛、弟と早川さんの仇!!」
令香は無謀にも青兵衛を倒そうとするが、
レッドドラゴン「お待ち、偽ドラゴン、お前の始末は本物のこの私がつけてやるよ」
レッドドラゴンとのバトルとなり、一方的にぶちのめされる。

青兵衛「はっはっはっはっ」
令香「ううーっ」
勝ち誇る青兵衛に、何とか一矢報いようとする令香だったが、体が動かず、

令香「……」
悔しそうに唇を噛んで見上げることしか出来なかった。
悪が栄え、善が虐げられると言う、シリーズ中、これほど憎たらしいシーンはないだろうと思われる名場面である。
レッドドラゴン「地獄の土産に良く見ておくんだねえ、これがレッドドラゴンのとどめだよ」
と、ここでズハットがズバッカーに乗って駆けつけ、ヒーロータイムとなる。
レッドドラゴンとの因縁の対決となるが、尺がないせいか、今回は特にピンチになる描写はなく、レッドドラゴンのお腹に十字剣を突き刺して倒す。
その後、憎みてあまりある青兵衛をボッコンボッコンにする。
ま、どうせなら、令香に仇を取らせてやりたかったが、仕方あるまい。
成敗後、東条、そして令香が駆けつける。

令香「早川さんが弟の仇を……」
東条「いや、早川じゃない、これをやったのはズバットと言う男だ」
令香の言葉を途中で遮り、断言する東条。
令香「ところで、東条さん、なんで助けに……」
東条「いや、早川じゃない、これをやったのはズバットと言う男だ!!」 令香が、潜入させるだけさせといて、なんの手助けもしてくれなかった上司に文句を言おうとするのを途中で遮り、もう一度断言する東条であったが、嘘である。
嘘であるが、今回、東条がまるっきり何の役にも立ってないのは事実で、東条ファンとしてはいささか残念であったのは事実である。
これ、早川がいなかったら、フツーに殉職してるよね。

令香「早川さーん!!」
ラスト、夕陽に向かって叫ぶ令香のアップで終わりです。
以上、偽の用心棒が登場すると言う異色のプロットに、緊張感のあるストーリーを絡めた、二人のゲストヒロインの魅力、そして三谷昇さんの怪演を堪能できる力作であった。
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