第33話「吸血楽器レッスン」(1980年9月13日)
ヘドリアン女王が、「デンジマン諸君、午後12時、迎賓館の黄瀬戸の大壺を破壊する。厳重に警戒せよ、あっははははっ」と、大胆不敵に挑戦してくる。

勿論、デンジマンは直ちに迎賓館の警備に就く。
ま、実際に迎賓館で撮影は出来ないので、迎賓館入り口の映像と、関係のない建物の映像とを組み合わせて表現している。
係員「この壺は、平安時代に唐の国から渡来した大事な壺なんです。割られでもしたら、それこそ」
レッド「この通り警備は万全です!」
だが、予告の12時、遠くのビルの屋上にサクソフォンの怪人が現れ、強力な音波を発射する。デンジマンにもそれを防ぐ手段はなく、
黄瀬戸の大壺は、

ものの見事に爆破……えっ、
爆破? 粉々にはなっても、爆発はしないと思うが……。
警備していたのに壺を割られ、面目丸潰れのデンジマン。その場に残っていると係員に凄く怒られそうな気がしたので、怪人を追ってさっさとその場からトンズラする。

屋上で、怪人と戦うデンジマン。前回も、同じ場所で撮影してたような……。
怪人、途中で急に力尽きて、戦闘員に抱えられるようにして退却する。
それでも、作戦そのものは成功したので、ヘドリアン女王の機嫌は良い。
女王「いやぁ、久しぶりに痛快な思いを致した。ははははっ」
ヘドラー将軍「サキソホンラーの音波メスの切れ味は、なかなかのものです。この調子なら」
女王「そうじゃ、日本中の美術品を全て疵物にしてしまえ」
ミラー「しかし、サキソホンラーのエネルギーが心配です。一度音波メスを使うと、半病人のようになってしまうようです」
怪人「人間に寄生できれば、ご期待に沿う働きが出来ますです、ハイ」
さて、ここはイエローこと黄山の住んでいるアパート。
仕事明けで布団を被って寝ていた黄山だが、向かいの部屋の三郎が鳴らすひどいサックスの音に妨害されて、悶絶する。
黄山「ああーうるせえなー、目覚ましだってもっと良い音がするぞー、ああ、やかましい、ああもう辛抱が我慢できない」
黄山が文句を言うが、三郎は「それよりこれ見てくれないかな、調子悪いんだ」と、サックスの修理を頼んでくる始末。

人の良い黄山は、ぶつぶつ言いながらサックスを見てやる。
黄山「リードもいかれてるし、キーもガタガタだな」
三郎「なにしろ、タダ同然で買ったもんだからな」
黄山「これじゃ音程だって狂うし、練習にならないだろ」
ヨーコ「だったら私をニューヨークに連れてってくれるって言う約束ぅ」
黄山「ああ、そりゃ無理だな。ナベサダか、ソニー・ロリンズみたいになりたかったら、もう少しマシなものを買うんだな」
しかし、小さな自動車修理工場で働いている三郎に、そんな余裕はない。
三郎を演じる杉欣也さん、次回作「サンバルカン」でバルシャークを演じることになる。ガールフレンドのヨーコを、この一ヵ月後にスタートする「仮面ライダースーパー1」のレギュラー、ハルミこと田中由美子さんが演じている。
三郎「うわーすげー、鳴りそうだぜこいつは」
と、三郎が店先に置いてあるサックスに羨望の眼差しを送っていると、サキソホンラーの手頃な寄生先を探していたケラーが声を掛ける。
ケラー「一度吹いて見ない? なんなら買ってあげましょうか」
三郎「誰だあんた」
ケラー「南極ミュージック館の者よ。新鮮な才能を持った若手ミュージシャンの発掘に、あたしは命を賭けているわ!」

三郎、音楽関係者に成り済ましたヘドラーたちのところへ行き、新品のサックスを吹いている。
ミラー「胸も厚く、肺活量もありそうですね」
ヘドラー「うん、
音の粒立ちが良い。問題はうちのレッスンについてこれるかどうかだ……」
「音の粒立ち」と言うのが、いかにもモノホンっぽい。
ヘドラーは、とりあえずレッスンを受けて、合格したら本場ニューヨークで2年間修行させてやると三郎に言い、三郎はすっかりその気になる。
デンジマンの元へ、ベーダーから「大正美術館の『紫雲の白馬』を狙う」と言う予告状が届く。それは重要文化財に指定されている名画だった。
普通こういう場合、美術品を盗むことを目的とするものだが、ベーダー(と言うかヘドリアン女王)は、それを破壊することを狙っているのだから、厄介である。
当然、デンジマンは美術館周辺をがっちり固めるが、三郎がレッスンの為、近くの小高い公園へサックスを担いで向かっていることには気付かなかった。

三郎「南南西に向かって吹け、か……変なレッスン方法だな、風向きに関係があるのかな?」
指示書を見て、首を傾げるが、とにかく練習を始める三郎。その先に、大正美術館があるとも知らず。
三郎がサックスを吹くと、再び強力な音波が発射される。「紫雲の白馬」は無残に破壊されてしまう。
その後も、音波メスによる美術品破壊は続き、デンジマンは連戦連敗。
女王「あははははっ」
のどちんこが見えるほど大口を開けて高笑いするヘドリアン女王であった。
顕微鏡で、ベーダーの放った「音」を観察している黄山。顕微鏡で見れるの?
黄山「ベーダーの音波は極めて特殊なモンなんだ。つまり、レーザーの様に絞込みが利くんだ」
ピンク「だから、鉄の扉も?」
黄山「うん、焦点を絞ることが出来るから、エネルギーが強力になる」
「
目に見えないからなお始末に悪いな、どれ」と言って、
顕微鏡を覗き込む緑川。見えるのか、見えないのか、どっちだよ。

三郎は真っ昼間から、布団を被って寝ていた。ヨーコが布団をはがすと、下からげっそりとやつれた三郎の顔が出てくる。
ヨーコは病院へ行こうとすすめるが、三郎はうるさそうにはねのける。と、ちょうどそばにあったサックスにぶつかり、

たちまちそれがサキソホンラーに変わる。そう、三郎が貰ったサックスそれ自体が、怪人の変身した姿だったのだ。ヨーコは悲鳴を上げて逃げ出す。
外へ出たところで黄山に行きあい、もう一度部屋に行くが、既に三郎も、怪人の姿も消えていた。
今度は大観音を狙うと予告があった。高崎市の高崎白衣大観音のことであろう。

そろそろ警備の人たちから「もう来なくていいよ」と言われそうなデンジマンだが、しっかり現地へやってくる。黄山は、三郎がベーダーに利用されていると推理する。

近くで、サックスを吹くようケラーに強く言われている三郎。
ケラー「今日のレッスンが終われば、あなたはニューヨークへ行けるのよ。本場でプロの道を踏み出せるのよ」
三郎「でもこの楽器は?」
ケラー「今日だけの我慢よ、さ、吹きなさい。吹くのよ!」
三郎「わ、分かった。その代わり、ニューヨークへは、あんたも一緒だぜ」
ケラー「えっ?」
三郎「お、俺、前からあんたのことが……」
ケラー「まぁ

」
と言うような意外な展開に、
なりません。 そこへ黄山がやってきて、やめさせようとする。だが、三郎はサックスを吹き、黄山はその中に吸い込まれてしまう。
他の4人も駆けつける。黄山が怪人の腹の中にいると聞いて、さてどうしたものかと悩む4人。
で、
こうした。 4人で怪人を逆さまにして振ると言う、実に合理的な方法であった。黄山はポンと出てくる。

後は戦闘シーンをこなして終了。
今回、巨大ロボットバトルで、観音像の模型がちゃんとセットに置かれているのが芸が細かい。

元気を取り戻した三郎、今日もヘタクソなサックスを気持ち良さそうに吹いている。
それを歩道から見上げているデンジマン。
青梅「あっ、頭が! しかしひどい音だねえ」
黄山「あの程度が一番良いんだよ」
緑川「そういうこと」
ピンク「そんなこと言っちゃあ、かわいそうよ」
しかし、最後に怪人を倒したと言っても、今回ははっきり言ってベーダーの勝ちであろう。