第22話「少女と花と天国」(1972年11月27日)
病弱な女の子の物語。
医者が、ベッドで寝ている少女・洋子の診察をしている。
「だいぶ調子が良いようですな」と言う医者の言葉に、そばにいた祖父(多々良純)が顔を明るくさせる。

洋子はじっと、枕元のランを見詰めている。
フランス人形のように愛らしい洋子を演じるのは、故・戸川京子さん。
医者は、しかし、祖父と二人きりになると、
「心臓が少し弱いくらいにしては衰弱がひど過ぎますよ」と、険しい顔になる。
祖父「食欲はほとんどないし、やっぱりダメですか」
医者「本人が生きる意志を持たなくては……そうでなくてはもう長く持ちませんよ」

洋子「嘘つきね、お医者様もおじい様も。知ってるわ、あたしはもうすぐ死んでしまうのよ」
祖父「バカなこと言うんじゃない!」
洋子「パパの作ったお花、一日一日色が薄れてくるわ。このお花が死ぬ時、あたしも死んでしまうのよ。パパとママのもとへ行けるのよ……」
祖父が部屋を出ようとすると、近所の子供・昇が心配そうな顔で立っていた。
昇「同じ花を探して来て、取り替えておいたら?」
と、提案するが、
祖父「同じ花が手に入るのなら、とっくにやってる。あのランの花は、洋子のなくなった父親が色々研究して咲かせたんだよ。同じものは何処捜してもない……」
昇は無線仲間の毛利チームの一員、吾郎に協力を求める。
吾郎から話を聞いた毛利チームは、無線愛好家ネットワークを利用して、同じランの花を栽培している人を探し回る。だが、苦労の甲斐なく、ランは見付からない。

昇はひとり、洋子を見舞う。昇は洋子のことが好きなのだ。
洋子「だいぶ枯れてきたでしょう? もうすぐお別れね」
昇「何を言うんだ、花と洋子ちゃんは関係ないだろう?」
洋子「あるわ。パパの作ったお花ですもの。このお花が死んだら、パパの所へ行くのよ」
昇「だめだ、そんなこと、だめだ!」
洋子「疲れたわ」
洋子はそっと目をつぶる。こういう演技とか、大人顔負け。
その後、遂に、同じランを栽培している老人に辿り着く毛利チーム。
老人を演じるのは下條正巳。

三郎「この花を4、5日貸して貰う訳には行きませんか」
老人「だめだ!」
吾郎と昇も懸命にお願いするが、老人は頑として首を縦に振らない。

思い余った二人は、夜中にこっそり温室に忍び込んで、鉢を拝借しようとするが、あっさり老人に見付かってしまう。
老人「やっぱりお前たちか、泥棒め、警察に突き出してやる」
昇は、その鉢を頭上に掲げて叫ぶ。
昇「パトカーでも何でも呼べよ、その代わり、この鉢を叩き割って踏み潰してやる!」
老人「そんなことをしてみろ、少年院にぶちこんでやるぞ」
昇「いいさ、少年院だって警察だって怖くねえや」
老人はしばらく昇の真剣な目を見ていたが、急に態度をやわらげ、「いいだろう、貸してやろう」と一転、許可してくれる。子供ながら、その心意気に打たれたのだろう。
祖父と昇は、夜中、洋子に気付かれないようにランの花を取り替える。
翌朝、鮮やかな色を取り戻したランを見て、洋子はたちまち元気に、前向きになる。

祖父も安堵するが、洋子はすぐ「あらっ、違う、違うわ、パパのお花じゃないわ」と、花がすりかえられていることに気付いてしまう。

洋子「パパのお花を持ってきて! 持って来てくれないなら私が行く!」
洋子はベッドから降りて歩き出すが、すぐに倒れてしまう。
祖父「洋子!」
洋子「パパのお花、死んでしまったの? パパとママの側に行くのよ。もうすぐ一緒に暮らせるのよ」
意識朦朧となりながら、亡くなった両親の姿を思い浮かべる洋子。
命懸けでゲットした代わりの花も役に立たず、途方に暮れる昇。
彼らは思い余って毛利博士に縋る。
チーフ「どうにかなりませんか?」
毛利「枯れかけた花を、生き返らせる方法がないではない」
毛利は特殊な薬品を取り出し、実際に萎びた薔薇の花をあっという間に真っ赤に生き返らせて見せる。
だが、毛利によれば、その薬は花に残っていた命を一時的に燃え上がらせるものなので、注射して24時間すれば、花が完全に枯れてしまうと言う。
その24時間以内に、洋子が生きる意欲を取り戻せるかどうか、危険な賭けだと警告する。
それでも昇はその薬を使いたいと申し出る。祖父も彼らの計画に賛同する。
単純な洋子は、例によって生き返ったランを見て、たちまちベッドの上に半身を起こし、「元気になります!」と宣言する。

リミットの24時間が来るのをじりじりしながら待っている毛利チーム。
ナミ「大丈夫よ、もう洋子ちゃんは立ち直っているわ。あの花が枯れたって、平気よ!」
ナミはそう断言するのだが……、

ベッドから出て、椅子に座ってあやとりをしていた洋子、薬の効果が切れたランがみるみるしぼんでいくのを見て、ショックを受け、バッタリとベッドに倒れてしまう。
ああもう、めんどくせーなー! 医者も匙を投げた洋子の枕元へ、吾郎は昇を連れて駆けつける。
洋子「もう終わりなのよ、パパのお花も死んでしまったし、あたしも死んでしまうのよ」

と、吾郎、何を思ったかいきなり枯れたラン鉢を持ち上げて、力いっぱい床に叩きつけ、粉々にしてしまう。
洋子「何をするの!」
吾郎「こんな花の一本で、生きるの、死ぬのっていい気なもんだぜーっ!」
洋子「何がいい気よ!」
吾郎「そうじゃないか、この花一本の為に、昇君がどれほど苦労したのか知ってるのかーっ? 君がニセモノだって怒ったあのランの鉢だって、どんな思いをして手に入れたと思うんだ? 昇君は、君の為に泥棒までしたんだ!」
昇「よせよ、吾郎君……」
吾郎「君には昇君の気持ちが分からないのかっ」
洋子「あたしが頼んだことじゃないわ」
吾郎「バカヤローッ! お前なんか死んだ方が良いんだ。さっさと死んじまえ。行こう、こんな奴の顔なんか見たくねえや」
吾郎、昇の手を取ってさっさと部屋を出て行こうとする。

洋子「待って、待ってよ……バカだったのよ、私、もう大丈夫よ。パパのお花が枯れても頑張るわ。昇君や吾郎君のような良いお友達が出来たんですもの」
吾郎「そうだよ、元気を出すんだ!」
吾郎の荒療治が奏効し、洋子は(やや強引に)生きる気力を取り戻すのだった。めでたしめでたし。
このシーン、子役三人だけに長丁場の本格的な芝居をさせていて、こういうのはちょっと珍しいのではないだろうか?

最後、大人たちに「お前も洋子が好きだったんじゃないのか」とからかわれ、赤くなる吾郎。
ナミ「ムキになるところが怪しいぞ
」 ナミ姉さん、いいわぁ……。