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最近、特撮のレビュー(と言っていいものか……)ばっかり書いてる気がするので、久しぶりに毛色の違うネタをやりたいと思い立ち、以前から取り上げようと思っていた作品を選んだ。
その名も、
「三毛猫ホームズの推理」 言わずと知れた、赤川次郎原作の大ベストセラー小説をドラマ化したものである。
……読んだことないけど(言うと思いました)。
ただし、今回紹介するのは2012年に放送された「謎が連鎖する体験型ミステリー」の方ではなく、1970~80年代に「土ワイ」で放送されたワカメ好き好き石立鉄男主演の方である。
全部で6本作られていて、去年だったか、ファミリー劇場で一挙放送されたのをチェックした。
コメディとして楽しいし、東映系の俳優さんがたくさん出ているので、いつかレビューしようと思っていたのだが、面倒臭いので放置していたのだ。
前置きが長くなった。
第1作目は、1979年12月1日に放送。

猫が主役(じゃないけど)と言うことで、タイトルもこんなのである。
うう、猫が飼いたくなる。
しかし、幕開けはタイトルと違って陰惨である。
挨拶代わりにおっぱいを揉ませてくれそうな、いかにも軽~い女子大生が、寮の一室に男を連れ込むところから始まる。
女子大生「じゃ、三万円、前払い」
しかも、どうやら売春をしているところらしいのだ。男は無言で聖徳太子の万札(でかい)を渡す。
「サンキュウ、これでグァムへ行けるわ」 と言う台詞が時代を感じさせる。

女子大生「ね、始めない? うふふ。あなたも脱ぎなさいよ」
と、何の抵抗もなくビジネスライクにスカートを下ろし、ブラを外す。
これはまあ、冒頭でお父さんたちのハートを鷲掴みする為の演出だろうが、折角いいものを持っているのに、大きく映してくれないのが大変悔やまれるのです。
女子大生は「ねえ、早くしてよ」とベッドに横になって急かすが、男は無言でナイフをふりかざし、女子大生を刺し殺すのだった。もったいないなぁ。

警視庁捜査一課の刑事・片山義太郎(石立鉄男)がその現場写真を見て、もどしそうになっている。
野島課長(内藤武敏)は、「名刑事だったオヤジさんも草葉の陰で泣いてることだろう」と呆れる。
片山「全くお恥ずかしい話で……で、僕にその女子大生殺しを担当しろと仰るのですか」
野島「俺にはそんな勇気はないよ。殺された栗原弓子は早乙女女子大の学生だった。どうやら友人の部屋を借りて売春まがいのことをやっていたらしいんだ」
野島はその文学部部長・森崎と同期とかで、女子大生売春について調べて欲しいと頼まれたらしい。
片山は女性恐怖症だから無理ですと尻込みするが、野島に追い立てられるようにして森崎のところへ話を聞きに行く。

途中、警察の廊下で、親代わりとも言うべき三田村(柳生博)と出会う。彼は元警察官で、今は警備会社を経営しているのだ。
片山「おじさん、俺やっぱり商売がえした方がいいんじゃないかな……」
三田村「何バカなこと言ってるんだ。俺と野島はな、オヤジさんが殉職した時にお墓の前で誓い合った。お前をオヤジさんのような名刑事に育てて見せると」
更に、良い縁談があるんだと言い出す三田村から逃げるようにして早乙女女子大にやってきた片山、今度は若い女性の大群を前にして怖気付く。

片山「うわぁ、全部女だ……」
無我夢中で女子大生の中を走り抜ける片山。
早速森崎の部屋に行くが、森崎の姿はなく、代わりに若い女性が机の下に潜り込んで何か探している様子。
片山が覗き込むと、

雪子「にゃお

」
片山「こんにちは……」
雪子「あなた、猫の言葉分からないみたいね。足をどけて、にゃう!」
雪子は探していた画鋲をつまみあげ、「足に刺さると痛いでしょう」
片山「あなたいつも裸足で歩き回るんですか?」
これが後の伴侶となる吉塚雪子との出会いであった。演じる坂口良子さんの可愛らしいこと!
原作では、片山とその妹が主役らしいが、このシリーズでは片山と雪子のコンビが事件を解決する。

そこへ部屋の主・森崎(仲谷昇)が入ってくる。
雪子「先生、論文の原稿こちらにタイプしておきました」
森崎「ああ、ご苦労様」
雪子、部屋を出て行きしなに招き猫のポーズを取り、口だけ動かして「にゃあお」と鳴く。
片山「あの方は?」
森崎「うちの学生です。時々私の仕事を手伝って貰ってるんです」
森崎は、栗原弓子以外にも女子寮を舞台にして組織的に売春が行なわれているようなので、その全容を解明して欲しいと片山に頼む。女子寮と聞いて、片山が露骨に溜息をつくと、「にゃあ」と、今度は本物の猫の鳴き声がする。

と、ドアの下に設けられた専用出入り口から、三毛猫ホームズ(雌だけど)がとっことっことやってくる。

片山「ここで飼っておられるんですか?」
森崎「私はこの構内に住んでおりましてね、独身の気安さでホームズと二人暮しなんですよ」
片山「なるほど、猫は裸足か……」
雪子が画鋲を探していた理由が腑に落ちる片山。
そこへ学長(田中明夫)がずかずか入ってきて、勝手に警察を呼ぶとはけしからんと嫌味を並べる。
それに対する森崎の「学園紛争の際に独断で機動隊を導入させたのはどなたでしたかな?」と言う切り返しも、時代を感じさせますな。
その後、森崎から「野島君との打ち合わせどおり、一晩学生寮を監視して貰いましょうか」と言われ、目を白黒させる片山だった。森崎は、寮内に外部と連絡を取っている者がいる筈だと言うのだが……。
断るわけにも行かず、片山は新校舎の工事現場近くの控え室で寮を見張ることになる。

二人が話しながら外を歩いていると、美しい女子大生が現れる。
靖子「先生、講義の時間、もう10分ほど過ぎてますけど」
森崎「ああ、そうか」
寮の自治会長をしていると言う波多野靖子を演じるのは結城しのぶさん。当時26歳くらいで、女子大生にしては妙に大人びている。
女性恐怖症の片山、靖子と二人きりになっても当然話が弾まない。

靖子がいなくなった後、ふと気付くとホームズが足元にねそべっている。
ホームズはまるで片山を導くように、ある場所まで走って行く。
そこでは、今まさに、植え込みの中で雪子が胡乱な中年男性に言い寄られているところだった。雪子は持っていた本で男を殴ると、歩道に出てくる。
雪子「あら」
片山「先ほどはどうも……」
雪子、ホームズを抱え上げ、「男はみんな狼です」と走り去る。
その男は文学部の講師・大中(穂積信隆)であった。
他に体育教師のタンクトップ富田などが出てくるが、メインの殺人事件には関係ないのでカット。

片山は、寮の管理人の小峰に挨拶した後、工事現場の控え室へ陣取り、寮を外から監視する。
控え室と言っても、細長いコンテナのようなプレハブ小屋である。
中には長テーブルや椅子などが置かれていた。

その椅子に座って、あくびを噛み殺しながら見張りをしていた片山に、優しい雪子がコーヒーとハンバーガーを差し入れてくれる。
雪子「あたしもコーヒーだけお付き合いしていいかしら」
片山「どうぞどうぞ……それじゃ頂きます。美味しい!」
雪子「ほんとぉ? 良かった」
会って半日しか経っていないのに、もうこのラブラブぶり。きーっ。

だがその頃、靖子は森崎の胸に抱かれていた。乱れてるなぁ……。
靖子「栗原さんのこと、どうしても信じられないわ」
森崎「えっ?」
靖子「でも、あたしだって五十歩百歩ね、誰かに誘惑されるようなか弱い女なんですもの」
森崎「君は違うよ」
靖子「そうよね、あたしは先生の専属。それも無料奉仕」 森崎は、片山を呼んだのは売春の調査より、何か別の目的があったことを仄めかす。
片山は監視と称して雪子の着替えを覗いてニタニタしていたが、ふと、外壁をロープで降りている黒い影に気付き、ギョッとする。
殺人犯かもしれないと慌てて駆けつけるが、それは雪子の部屋に忍び込もうとしていた大中だった。

雪子の部屋から大中を助けようと、雪子の部屋をノックすると、バスタオル一枚の雪子が出てきてドギマギする片山。
片山「おうっ、あ、ごめん」
雪子「随分せっかちなのね刑事さん

」
小さくて分かりにくいが、坂口良子さんの胸、水着の跡が見える……。
大騒動の末、大中を助けた片山だったが、控え室に戻って唖然とする。いつの間にか、長テーブルや椅子、他の備品も何もかも忽然と消えていたからだ。
一体誰が、何の為に……? と言ったところで、続く。