第18話「危うし! シャボン玉の恋」(1978年6月1日)
※この記事は2014年7月17日に公開した記事を全面的に書き直したものです。 有名な戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を下敷きにした異色作である。
冒頭、「草の実学園~園長・露草アンヌ」と言う、妙に園長の自己顕示欲の強い表札の掲げられた幼稚園が映し出される。
子供たちは先生と一緒に花壇に水をやっていたのだが、

そこへ、何処からともなくたくさんのシャボン玉が飛んできて、まるで童話の世界に迷い込んだような光景となる。

それは、白野紅児と言う好青年がピストル型のシャボン玉製造機で作り出しているもので、彼はしょっちゅうここに来ては、子供たちと遊んでいるのだ。
今だったら即通報だろうなぁ。
ちなみに、この白野と言う名前が、前記の戯曲の主人公シラノ・ド・ベルジュラックから来ているのは言うまでもない。

子供たちは大喜びだったが、突然、花壇から黄色いガスが噴出し、先生たちは急いで子供たちを避難させる。
そこへの園長の露草アンヌがやってくるが、園長と言う割りに若く、他の先生たちと同年代の女性であった。
詳しいことは不明だが、彼女は莫大な遺産を相続しており、この幼稚園もその資金で経営しているのだろう。
ちなみに先生たちの名前は京子先生、マチ子先生となっているが、正直、どっちがどっちだから良く分からない。
元ネタは「京マチ子」と思われ、かなりええ加減なネーミングである。
その後、白野が花壇を調べてみると、ガス管が埋まっていて、それを辿っていくと近くの墓地に達するが、そこに戦闘員たちがいて、
戦闘員「ガキを殺すには少しばかり毒ガスが足りなかったようだ」

白野「黒ひげ党!!」
それが、黒ひげ党と言う連中の仕業だと分かる。
戯曲では、シラノは鼻が大きいのを苦にしていると言う設定だが、そう都合よく鼻のでかい俳優はいないので、品川っぽい、どっちかと言うとブサメンの俳優が演じている。
劇中では言及されてないが、ニートではなく、自動車修理工なのである。
だが、白野はあっさり彼らに見つかり、

戦闘員「さあ、早く飛び降りるんだ」
銃を突きつけられて、毎度お馴染みの断崖まで追い詰められる。
ちなみに黒ひげ党と言う組織名にちなんで、メンバーは全員ヒゲを生やしているのである。
この中に、普通に蛾次郎さんが混じってたら、かなり笑えただろうな……
もう少しで崖から落とされるところだったが、例によって例のごとく、ギターを掻き鳴らしながら早川が登場。
戦闘員「なんだてめえは」
早川「黒ひげ退治に来た男さ。誰も正体を知らないと言われてる貴様らのボスもね」
早川、一瞬で戦闘員をぶちのめすと、白野を引っ張り上げて立ち去ろうとするが、例によって例のごとく、黒ひげ党の用心棒があらわれて早川に勝負を挑む。

その名も死神サミーと言うのだが、これほど、名前とその姿が乖離した用心棒も珍しいのではあるまいか。
早川「黒ひげ党の用心棒・死神サミー、アメリカンフットボールの名手、ただし、日本じゃあ二番目だ」
と言う訳で、いつもの珍芸対決コーナーとなるのだが、日本一のアメフトの名手なら、悪の用心棒なんかせずに、普通にアメフトやったほうが、遥かに実入りがいいと思うんですが……
つーか、アメフトの名手を用心棒に雇うと言う、黒ひげ党の発想についていけない。
ともあれ、先攻のサミーは、ボールを蹴って巨大な岩にぶつけて真っ二つに割るという、それこそ本場アメリカに行けばスターになれるのに、なんでしがない悪の用心棒なんかやってるのっ!! と、思わず欽ちゃん風にツッコミを入れたくなる凄い技を披露する。
白野「ボールが岩を……」
死神サミー「ふっふっふっふっ、貴様もやってみろ」
なお、一応金髪なので、彼は外国人らしいのだが、顔はどう見ても純国産である。
早川のターン、ボールを上空に放り投げると、

早川「であっ!!」
自らもジャンプして、それを両手でチョップする。
ボールは柔らかい砂地にめりこみ、モグラのように地中を進むと、

最後は地中から飛び出し、サミーの胸を直撃して、もんどりうたせる。
軽やかに着地すると、

早川「ははははは、これが俺のモグラ
キックさ」
サミー(蹴ってねえだろ……) と言うツッコミを期待しているような、天然ボケ発言をかます早川だった。
ただ、今回の勝負、ボールの破壊力についてはサミーのほうが明らかに上なので、早川が勝ったとは言い切れない気もする。
その後、二人は幼稚園に行き、白野はアンヌたちに毒ガスの管を見せようとするが、

アンヌ「白野さん、パイプは何処に?」
白野「えっ? あっ、確かに……」
狡猾な黒ひげ党は、いつの間にか管を撤去しており、影も形もなかった。

ムキになって花壇を引っ掻き回す白野の姿を、痛ましそうに見遣るアンヌ。
演じるのは嶋めぐみさん。
ま、美人と言えば美人だが、この前の大山いづみさんや、この次の遠藤薫さんと比べるとねえ……
放っておけば花壇をめちゃくちゃにしかねない白野の狂態に、アンヌはたまりかねて「白野さん、やめて!!」と叫ぶ。
白野「嘘じゃないんだ、本当にここに……」
アンヌ「もうやめて、これ以上あの人の造ってくれた花壇を壊さないで!!」
白野「……」
アンヌの痛烈な言葉に、激しいショックを受ける白野。
アンヌ「いくらあなたがあの人を嫌いだからってそんな嘘をついてまで……」
白野「違います、俺は本当に……」
栗須「アンヌさん、どうしました」
白野がなおも訴えていると、横から男の声が飛んでくる。

アンヌ「栗須さん」
栗須「一体どうしたんですか」
アンヌ「いえ、なんでもないんです、さ、どうぞ」
葉巻をくわえた気障な男で、アンヌはいそいそと園の中に招き入れる。
栗須伸と言う名前から分かるように、戯曲に登場する美青年クリスチャンがモデルだが、キャラクター的には、クリスチャンと悪玉のド・ギーシュ伯爵を足したような感じである。
演じるのは「ジャンボーグA」の松川勉さん。
白野は忌々しげにその場から走り去る。
先生「ほんとにお似合いのカップル」
先生「栗須さんはね、毎週水曜日の夜になると新しい苗を植えて花壇を増やして行ってくれるの、だから子供たち、木曜の朝をとっても楽しみにして……本当に素晴らしい方よ」
マチ子先生たちは、早川に栗須のひととなりを誇らしげに説明する。
ドラマでは、何の根拠もなしに栗須のやっていることだと決め付けているが、シナリオではあくまで噂にとどまっている。
ただ、このシーン、ちょっと変なのは、毒ガスが出たのはアンヌだってしっかり見てるのに、白野を嘘つき呼ばわりしていることである。
もっと変なのは、そもそも、何故黒ひげ党が子供たちを殺さねばならないのか、その辺が良く分からないことである。
彼らの狙いはアンヌの遺産なのだが、目下のところ、アンヌは栗須にぞっこんなのだから、そんな余計なことをせずとも、普通にアンヌと結婚すれば済む話ではないか。
そうそう、言い忘れていたが、露草アンヌと言う名前は、戯曲のヒロインのロクサーヌから来ているのだ。
早川と白野が、緑に覆われた小山のてっぺんに腰掛けて話している。

早川「シャボン玉はいいもんだな。久しぶりに見せてもらったよ」
白野「でも、すぐに壊れちまうよ」
早川「壊れたらまた作れば良い、前のよりもっと綺麗な、もっと大きなのを作ってやろうと思えばいいじゃないか」
白野「慰めてんですか、俺を」
早川「好きなんだね、アンヌさんが」
白野「……」
早川「ははっ、君は栗須と言う男が嫌いらしいな」
白野「あいつは絶対悪人だ」
早川「ほお、でも夜中に内緒で花壇なんか作ってくれる心の優しい人だそうじゃないか」
早川はさっき耳に挟んだエピソードを持ち出して、遠回しに、白野が恋敵憎さのあまり、栗須に偏見を抱いているのではないかと諭すが、
白野「栗須なんて大嫌いだ!!」
白野はそう叫んで丘を駆け下りていく。
さすがの早川も、一目見ただけで栗須の本性を見抜ける筈がなく、困ったもんだと言うような顔で若者の背中を見送る。
一方、黒ひげ党では、

戦闘員「ボス、見てください、明日のおやつの時間になると、自動的にこのスイッチが入ります」
戦闘員たちが木馬型の毒ガス噴射装置の実験を行っていた。
なんでそんなに毒ガスで園児を殺すことに拘るのか、謎であったが、
黒ひげ(ぷぷ、悪の人が、おやつの時間やて……) 黒ひげ党の謎めいたボス・黒ひげは、ガスマスクの下で、笑いを堪えるのに必死なのだった。

ともあれ、スイッチを捻ると、木馬の口から黄色いガスが勢い良く噴出し、他の戦闘員がすかさず観葉植物の鉢をその前に持ってくる。
ガスをまともに浴びた植物は見る見る枯れてしまう。
ちなみに、戦闘員が植木鉢を運ぶ直前のカットで、木馬の前に、存在しない筈の葉っぱが見えてます。
戦闘員「この通り、ガスを濃くしてありますので子供なら5秒でイチコロ」
黒ひげ「よし、明日一番で運び込め。俺からのプレゼントだと言ってな」
黒ひげは、そう命じてからガスマスクを外すが、マスクの下から出て来たのは、案の定、栗須であった。
だが、その一部始終は、天井裏に忍び込んでいた白野によってばっちり見られていた。

白野(栗須だ、黒ひげ党のボスは栗須だったんだ)
遂に栗須の正体を知って心の中で小躍りする白野だったが、このシーンも変と言えば変である。
他のものはみんなガスマスクをつけているが、忍び込んだ白野は当然何もつけておらず、おまけに、よりによって
「換気口」から覗いているのだから、室内に毒ガスが噴射されたら、むせ込まない訳がないのである。
むしろ、むせ込んで栗須たちに存在を気付かれる……と言うようにしたほうが、後のシーンの辻褄が合うと思うんだけどね。

園児「わあ、可愛いー」
次のシーンでは、早くもその木馬が園児たちにプレゼントされている。

アンヌ「まあ、素敵」
栗須「どうです」
アンヌ「素敵だわ、さあ、みなさん、おやつにしましょう。ロバちゃんとはそのあとで遊びましょう」
あ、馬じゃなくてロバだったのか……どっちでもいいけど。
ついでに、細かいことだが、さっきの黒ヒゲの言い方では、本人は行かず、部下に届けさせる感じだったのに、実際は栗須もその場にいるんだよね。
先生たちに促されて子供たちがその場を離れた直後、いきなり白野が飛び込んできて、バットでロバをボコボコに殴り始める。
アンヌが白野に縋りつき、
アンヌ「何をするの、白野さん、このロバは栗須さんのプレゼントなのよ」
白野「だから壊したんだ」
アンヌ「なんですって」
白野はアンヌの体を押しのけると、

白野「ロバの口には、毒ガスの装置が!!」
アンヌ「……!!」
ロバが砕かれる音と、白野の恐ろしい叫喚に耐え切れず、両手で耳を塞ぐアンヌ。
完全に破壊した上で、証拠の毒ガス装置を見せようとする白野だったが、どうしたことか、ある筈の装置がない。

白野「そんな……」
思いがけない事態に、まるで、満員電車の中で痴漢と間違われたサラリーマンのように青褪め、目を泳がせる白野。
アンヌが激怒したのは言うまでもなく、

アンヌ「白野さん、帰って!! ここへはもう二度と来ないで」
「あーん、おめぇどこ中だぁ?」とでも言いたげな物凄い目付きで白野を追い払う。
この、視聴者の予想も裏切る展開はいかにも長坂さんらしくて面白いのだが、何故毒ガス装置がついていなかったのか、その説明がないのは物足りない。
つまり、プレゼントするのは今日だが、毒ガス作戦を行うのは別の日で、念のため、毒ガス装置は外して運び込んだということなのだろうが、そんな面倒臭いことをする必要があるだろうかと言う疑問が湧く。
前記したように、白野に見られたと栗須たちが気付いていたのなら、白野の裏を掻く為に、あえて毒ガス装置を外して運び込み、白野の信用を失墜させるという、手の込んだ計略ということになったと思うのだが。
失意のどん底に叩き落された白野に、今度は戦闘員たちが襲いかかる。

オサム「あ、黒ひげ党だ」
みどり「大変、助け呼ばなくなっちゃ」
たまたま通り掛かったのがみどりさんたちだったが、今回の出番&台詞はたったこれだけ。
これじゃあ、俳優さんたちもやり甲斐がなくてつまんないよね。
せめて、ゆさゆさおっぱいを揺らしながら走るみどりさんの姿はもうちょっと大きく映して欲しかった。
中盤以降、急にみどりさんたちの扱いが悪くなるのがこの作品の残念なところで、特に今回は幼稚園が舞台なのだから、元々幼稚園の先生をしていたみどりさんが、「草の実学園」の臨時職員をしていて、そこで早川と出会う……みたいな展開も自然だと思うのだが。
なお、すでに幼稚園から永久追放を申し渡された白野をあえて殺す必要はないように思うが、白野の言動で毒ガスのことを気付かれたと知って、口を封じようとしたのだろう。
しかし、くどいようだが、なんで幼稚園に毒ガスをばら撒かなければならないのか、そこが最大の謎である。
黒ひげ党に殺されかかった白野だったが、みどりさんたちが知らせたのだろう、またしても早川が駆けつけて助ける。
だが、かなりの重傷で、そのまま病院に入院する羽目となる。
夜は雨となる。

早川「心配するな、奴らから必ず守ってあげるさ」
白野「今、何時ですか」
早川「うん? 真夜中さ……安心して安め」
白野「すいません、水を……」
だが、早川が水を取りに部屋を離れた隙に、白野は窓から病院を抜け出す。
ここも、せっかくみどりさんたちがいるのに、彼女たちに看病させるとか、多少は出番を与えてやって欲しいものだ。
早川は、白野の不可解な行動に首を傾げるが、

早川「今日は水曜日……もしかしたら」
何か思い当たることがあるのか、早川が白野を探しに行くと、案の定、近くの
水・土はポイント2倍のコンビニで、死ぬほど買い物している白野青年がいました。
じゃなくて、早川が心当たりの場所に行くと、土砂降りの中、傘も差さずに、幼稚園の花壇に新しい花の苗を植えている白野の姿があった。
白野が途中で倒れたのを見て、慌てて駆け寄り、

早川「白野君、バカ、この体で無理だ」
白野「でも、花を……子供たちが楽しみにしてるんです」
早川「そうだったのか、毎週水曜日の夜、花壇を作っていたのは栗須じゃなくて君だったんだな」
白野「子供たちやアンヌさんに喜んでもらいたくて……」
この辺、文才のないクリスチャンに代わって手紙を書いたりしていたシラノ・ド・ベルジュラックの逸話を巧みに換骨奪胎したエピソードとなっている。
ただ、子供好きで優しいことでは人後に落ちない白野と言うものがありながら、アンヌたちが花壇を作ったのが栗須だと思い込んでいた……と言うのが若干引っ掛かる。
早川が、なおも花壇を作り続けようとする白野の背中を自分の服で覆ってやると、何者かがスッと傘を差し出す。
他ならぬアンヌだった。

アンヌ「ちっとも知りませんでした、それなのに私、あんなひどいことを言ってしまって」
こうしてアンヌは白野への誤解を解くのだが、花壇を作っていたのが白野だったとしても、昼間の行動が正当化できる訳じゃないと思うんだけどね。
アンヌを巡って二人が張り合ってるのは誰の目にも明らかなのだし……

早川「……」
それはそれとして、早川が、不意に険しい目でアンヌの顔を見るのだが、これは、今度の事件の原因が、目の前にいる女性にあるのではないかと気付いたことを表現しているのだ。
CM後、傷と熱でぶっ倒れた白野はそのまま幼稚園の医務室で一夜を過ごし、早川も付き添っていた。
早川「熱はすぐに下がる、薬はアンヌさんが飲ましてくれたんだぞ」
白野「あ、アンヌさんが……」
そう言って白野を喜ばせる早川だったが、ちょうどその時、母屋の方から子供たちの悲鳴が聞こえてくる。
早川が急いで駆けつけると、あのロバの口から、今度こそ毒ガスが噴出しているところだった。
この辺もやや説明不足だが、栗須の部下の姿が見えるので、白野が壊したロバの代わりに、新しいロバを持って来たのだろうが、これでは栗須の仕業だと言うことがバレバレなので、あまり賢いやり方とは言えまい。
色々あって、早川が毒ガスを噴いているロバを決死の覚悟で運び出し、離れたところで破壊するが、そこへ二人の先生がやってきて、

先生「早川さん、助けて下さい、園長先生が!!」
先生「白野さんを助けるんだと言って……」
早川「白野君を?」
先生「白野君、黒ひげ党に攫われてしまったんです。裏山の方へ」
早川「なんですって」
見ての通り、二人の先生もなかなか綺麗なのだが、単なる端役なのが勿体無い。
さて、ここで漸く首領Lと黒ひげの会話となり、彼らの目的がはっきりする。

L「黒ひげ、貴様も悪の大組織ダッカーの一員なら、アンヌの遺産数十億円を手に入れるのに、なぁにをぐずぐずしておるかっ!!」
黒ひげ「首領L、今日中には必ず、すでに邪魔な白野は捕えてあります。早川がもしこれを助けようとしたら、鉄格子に仕掛けた爆薬が大爆発、早川と白野は洞窟もろとも木っ端微塵になるでしょう」
相変わらず無駄にテンションの高いLに発破をかけられ、自信たっぷりに応じる黒ひげ。
良く見たら二人の衣装、色使いが似てるんだよね。
Lも、立派なヒゲ(メイク)を生やしているので、何気に、黒ひげはLのお気に入りだったのかもしれない。

白野「ちきしょう、こんなところで溺れ死んで溜まるかっ!!」
白野、黒ひげの言葉通り、洞窟の奥の鉄格子の中に閉じ込められ、足元にはどんどん水が流れ込んでいた。
しかし、これじゃあ早川に見つけてもらう前に溺れ死ぬのは必定で、あまり罠になってないような気がする。
必死で白野の行方を探し回るアンヌ、および早川の姿を挟んで、

早くも胸元の辺りまで水位が上がっている牢獄。
ここで、白野が、冒頭で使っていたシャボン玉製造機を取り出してシャボン玉を作り出し、それで自分の居場所を知らせようとする。
これまた小道具のうまい使い方だが、白野が「そうだ!! これを使って……」みたいな台詞を言わないので、いまひとつスカッとしない。
一方、アンヌの前に、遂に本性をむき出しにした栗須たちがあらわれる。

栗須「今日から俺はお前の夫になる」
アンヌ「誰があなたなどと」
栗須「この婚姻届にサインをするのだ。そしてすぐにお前は事故で死ぬ」
そう言えばさっき突っ込むのを忘れていたが、そもそも何故アンヌが何十億もの金を持っているのか、何の説明もないんだよね。
台詞だけで良いから、両親が資産家だったとか、何らかの説明が欲しかった。
それ以上に不可解なのは、何度も指摘したように、彼らの計画を進める上で、幼稚園に毒ガスをばら撒く必要が
全くないと言うことだろう(註1)
註1……名著「ズバット大全」では、栗須のことを「自らの欲望のためには園児の命を奪うことも厭わない冷酷無比な本性」うんぬんと書かれているが、その二つの関連性についてはスルーされている。
繰り返しになるが、栗須とアンヌは周囲からもお似合いのカップルだと言われていたのだから、余計なことはせずにさっさと結婚すれば良かったのである。
ついでに言うと、白野も当然、アンヌが大金持ちだと知ってる筈で、それを知りながらアンヌと結婚しようとしているのは、若干、不純な印象を受けるのである。
なので、シャーロック・ホームズにもあったが、アンヌ自身は自分が莫大な財産を受け継ぐことになるとは知らず、それを知った黒ひげがアンヌに接近して合法的に遺産を手に入れようとした……と言う風にした方が良かったかもしれない。
それはともかく、

早川「はっ」
早川は、穴の中から出て来たシャボン玉を見て、白野の居所を知る。
しかし、洞窟にそんな都合の良い穴が開いていて、しかもシャボン玉が割れずに地上まで出てくるだろうかと言う気がするが、野暮なツッコミと言うものか。
また、早川が洞窟の入り口の鉄格子に近付いた途端に爆発しているのも、なんか黒ひげの言っていたことと矛盾するようである。
洞窟を壊して彼らを生き埋めにするつもりなら、早川が白野のいるところまで来てから爆破させないと意味がない。
山の向こうで爆発音がして、白い煙が上がったのを見て、アンヌはそちらに駆け出そうとするが、栗須たちに捕まる。

栗須「ははは、そのとおり、今の爆発は、白野とそれを助けようとした早川が死んだ音だ」
にしても、仮にも特撮のゲストヒロインを演じるのなら、もうちょっと短いスカートにしてくれないと……
色々あって、そこにズバットが駆けつける。
ズバットは栗須を糾弾する際、「罪もない少年を殺そうとした」と言うのだが、白野を捕まえてさすがに「少年」はないだろう。
戦闘員があっという間に倒されたのを見て、栗須、いや、黒ひげは「サミー、助けてくれ」と用心棒に助けを求める。
と、どこからかアメフトのボールが飛んできてズバットの頭上で爆発する。
しかも、ボールの中にはあの毒ガスがたっぷり仕込まれており、ズバットはそれをまともに浴びてしまう。

ズバット「うっ、うっ……」
死神サミー「掛かったな、ズバット、その毒ガスを吸ってはさすがの貴様も思うようには動けまい」
ズバット「はっ、あと1分しかない」
ズバットにしては珍しい苦戦であったが、この18話から、毎回のようにズバットはピンチを迎えるようになる。
たぶん、それまでのズバットはあまりに強過ぎて物足りないと言う意見があったのだろう。
個人的には無駄にアクションシーンが長くなるだけなので、どうでもいい演出である。
しかし、元々宇宙服として開発されたズバットスーツなのだから、機密性も万全で、毒ガス程度にはビクともしないのではあるまいか。
まともに動けないズバットに何度もタックルを食らわせる死神サミー。
彼らもズバットの活動時間が5分しかないことを知っているのだから、ここは下手に手を出さずに距離を取っておくべきだったろう。
何度かタックルを受けた後、ズバットは
特に理由もなく元気になり、ムチでサミーのヘルメットを剥がすと、何度もムチでしばいた上、

ズバット十字剣を喉に突き立て、ジ・エンド。
かなりえげつないことをされているが、生死は不明である。
しかし、何のきっかけもなく攻勢に転じるのは、あまりに雑だし、見てる方もいまひとつ乗れないんだよね。
早川でいるときに毎回ピンチに陥っているのだから、ズバットになってからは無双状態と言うのが、やっぱり正解だったのではあるまいか。
ともあれ、あとは黒ひげを尋問&成敗して事件解決。
ラスト、峡谷の橋にもたれ、「白野さん……」と白野のことを案じているアンヌ。
と、そこへ頭に包帯を巻いた白野がやってくる。
……
どうやって助かったんだーっ!? そう、うっかり忘れていたが、ズバットが白野を助けるシーンがなかったのである。

アンヌ「白野さん、無事だったのね」
白野「早川さんに助けてもらったんだ」
……
と言うことは、ズバットに変身する前に助けたってことか?
一体どうやって?
爆発で洞窟が崩れ、生き埋めになったとしたら、とてもあんな短時間では救出できまい。
仮に崩れなかったとしても、あれだけの水の中からどうやって生還できたのだ?
ま、無理やり解釈すれば、爆発のショックで白野を閉じ込めていた鉄格子が外れ、泳いで外へ出たって感じか。
アンヌ「それで、早川さんは」
白野「僕はアンヌさんが知ってると思って」

アンヌ「そんな……」
白野の言葉に戸惑うアンヌ。
考えれば、これもちょっと変だよなぁ。
どう考えてもアンヌが心配していたのは白野のことであって、まずは白野の再会できたことを存分に喜び、抱き合うべきだろう。
これでは、アンヌが早川に惚れてしまったようにも取れるではないか。
ラスト、橋の上から早川の名を呼ぶ二人の姿を映しつつ、幕となる。
以上、シナリオのあちこちに穴は見られるものの、純真で不器用な若者とヒロインの淡い恋をサポートする早川の姿がどことなく「寅さん」に重なって見える、後味爽やかな佳作であった。
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