第16話「悲しみの弾丸!サキ撃たれる」(1986年2月27日)
前回のラスト、西脇に拝んでやってくれと言われた墓には「早乙女七郎」と言う、兄弟がたくさんいそうな人の名前が刻んであった。無論、サキの全く知らない名前である。それが、サキの父親の名前なのか?

サキが未熟だからか、ストーリー進行上の都合か、西脇は詳しいことを語ろうとしない。
水門の横の土手に座り、無心にハーモニカを吹き鳴らしている西脇に近付くサキ。
サキ「悲しい曲じゃけんど?」
西脇「昔、一度だけ命を落としかけたときにこの曲を聴いたことがあるんです。それ以来、耳に残って離れないんですよ……ところで、何か用ですか」
サキ「おまさんの親友のこと、今日はどうしても詳しく聞かせてもらおう思うて……あの早乙女七郎とは何者ぞね?」
西脇「今のあんたにはまだ話せません。あんたに父上のことを話すと言うことは、父上を滅ぼした強大な敵のことをも話す、と言うことです。話せば、あんたは必ずその敵に突っかかって行く。今のあんたではなまじ返り討ちにあうのが関の山です」 当然、サキはプライドを傷付けられ、その場で西脇に勝負を挑む。

西脇は、サキが勝ったら早乙女のことを話そうと約束する。
西脇の底知れぬ実力を警戒するサキ。だが、西脇は敢えて無防備の姿をさらし、攻撃の手が鈍るサキの隙を突いて、サキの額にチョークでバッテンを付ける。
西脇「やっぱりあたしの勝ちでしたね」
サキ「ペテンじゃ、こんなもの勝負でもなんでもない!」
悔しさのあまり思いつく限りの悪口雑言を並べるサキだが、西脇は「再挑戦にはいつでも応じますよ」と、飄々と立ち去る。

サキが、再び早乙女七郎の墓に参り、心の中で語りかけていると、何処からか、さっき西脇が吹いていたのと同じハーモニカのメロディが聞こえてくる。
見ると、眼帯をつけた年輩の男が、塀に腰掛けてハーモニカを吹いていた。
先に書いておくと、彼はデューク更家(註1)とか言う殺し屋である。演じるのは木村元さん。

どっからどう見ても怪しいその老人(設定ではかなりの高齢らしい)を、訝しそうに見るサキ。
デューク、サキが話しかけてくるものとばかり思っていたが、
サキ、無視してさっさと帰る。 触らぬ変態に祟りなし、それが賢明です。 
思い描いていた展開にならず、静かにパニくるデュークだったが、
「早乙女の、娘か」と、全く何事もなかったかのように平然とつぶやくのだった。
で、サキ、西脇を倒すべく、早速特訓を開始。空き地に空き缶を並べ、ヨーヨーを投げて行く。

横で、よっちゃんイカか何かくわえながら、お京が見物している。可愛い……。
サキ(どんなにヨーヨーさばきが上手くなってもうちは無防備の相手は倒せん)
と、いつの間にかさっき無視されたデュークが少し離れたところに座って、サキの訓練をにやにやしながら見ているではないか。

そして、サキが宙に飛ばした空き缶に、物凄いスピードで何度も小石を投げ、あたかも空き缶が空中に静止しているかのように当て続ける。唖然とするサキとお京。

舞台は一転、雪乃の病室。お京がひとり見舞いに来ている。
前回、しばらく雪乃は番組からいなくなると書いたが、実際は、ほぼ毎回のようにこういう形で出演し続けているのだ。
お京「そのじじいとサキの奴、妙に意気投合しちゃってさ。必殺技論議なんか始めやがんの。かったるいから置いてきちゃったよ。ありゃあ当分、お前さんへの見舞いを忘れそうだね」
喋りながらベットに腰掛け、雪乃への見舞いのチョコケーキを幸せそうに頬張るお京。ちなみにお京はとっくの昔に全快して、退院したようだ。

突然、雪乃が「ふーっふぅーっ」ともどかしそうに唸る。
お京「何怒ってんだよ」
雪乃「だってサキさんはあたしのこと忘れちゃうし。京子さんは手土産一つ持たずに来て、いろんなもん食べたらさっさと帰っちゃうし……そのケーキだってお夕食の後、ゆっくり食べようと思ってたのにぃ」
ドキッとして振り向くお京。
お京「お嬢様の癖に割といじましいこと言いやがる。分かったよ、今度来る時は見舞い持ってくるよ」

そのサキ、ほんとにデュークと仲良くなって、甘味処でお汁粉などご馳走になっていた。
そう言えば、初代の斉藤由貴さんも、二代目の南野さんも、どっちも左利きなんだよなぁ。
デュークは西脇の古い知り合いだと話し、サキを信用させる。
サキ「おじいちゃん、無防備の敵を破る術、なんか知らんじゃろか」
二人は再び、空き地に戻ってくる。
空き缶を並べながら、
サキ「まともな勝負なら、うちは決して西脇さんに負けやせんがよ、けんど、無防備の者が相手では……」
デュークが突然立ち上がり、
「パカモン!」とサキを叱る。

デューク「うぬぼれちゃいかんよ。お前さんはまだ勝負と言うものの本質を知らん。いいか、強いだけでは勝てんぞ。お前さんが無防備の相手は倒せないのを見抜いて、西脇さんは無防備になり、お前さんの攻撃を封じて勝ったんだ。つまり弱くなることによって勝利を得た。分かるかい、強いと言うことと、勝つと言うことは全く別なんだ。勝ちたいんなら、勝つ為にありとあらゆる道を取るべし。戦士と言うものはそういうもんだ」
諄々とサキに説くデュークだが、この辺で犬がきゃんきゃん鳴き出してうるさい。
デュークの言葉を復唱していたサキ、「ありがとうおじいちゃん、今後こそ西脇さんに勝って見せる」と明るく笑うと、元気良く走り去って行く。その背中を見ながらデューク、しみじみと、
デューク「女子高生は良いなぁ……」(註・言ってません)
正解は「良い若者を育てているなぁ。西脇」でした。

特にあてもなく走りながら考えるサキ。
(西脇さんはうちが無防備な敵を超合金のヨーヨーでは倒せぬと見て棒立ちに……それならうちは、うちは)
しかし、このサキの走り方があまりに女の子っぽい走り方で、サキの台詞と噛みあわず、萌えてしまう。
と、向こう側からお京が「サキーっ」と呼びながら走ってくる。
お京「見てよ、これ、これこれ、向こうの神社でさ、祭りやってたんだ。懐かしいだろう~?」 戦利品のでかいせんべいと水風船を子供のように無邪気に見せびらかすお京。
はっきり言おう、
めちゃくちゃ可愛い!! お京はそれを持って雪乃の見舞いに行くつもりだったのだ。

お京「雪乃の奴、全然庶民的なこと知らないから、喜ぶぜ。見ろよ水風船、麻宮サキごっこーっ、なんちゃって。お前さんのヨーヨーみたいだろ」
お京が動かす水風船を何気なく見ていたサキ、西脇を倒すヒントを得る。
サキ「これじゃ、お京、これぞね、やった、うちは勝てる。お京あんがと、まっことあんがとねー」
お京「ちょっ、それ、雪乃への……」
お京の抗議も空しく、サキは水風船を持って、さっさと行ってしまう。
(註1……正しくはデューク南郷)