第13話「しりとり連続殺人事件」(2003年12月28日)
超久しぶりの「銭形舞」のお時間です。
この作品、数年前に一通り紹介はしているのだが、とても満足の行く内容ではなく、以前から書き直したいと思っていたのだ。
ただ、正直、ドラマとしてはいまひとつの作品で、レビューしたいと思えるようなエピソードがあまりなく、結局、最終話である13話だけをリライトすることにした次第である。
冒頭、港区麻布十番の路上で、秋野也寸志と言う、中年男性の他殺体が発見される。
五代は直ちに現場に駆けつけるが、なかなか舞があらわれない。
五代「おっせーな、あいつ、なにやってんだ、銭形の野郎は」
柴田「舞ちゃんなら今頃、銭形警視総監に呼ばれてるんじゃないかな」
五代「警視総監? あ、そうか、また小遣い稼ぎに肩揉みだな、子供だねー、あいつも」
柴田「知らないの? 舞ちゃん、能力を買われて来週からフランスインターポールに派遣されることになるらしいよ」
五代「フランス?」
柴田「恐らく三年は帰ってこない」
五代「三年か……」
情報通の柴田の言葉に、さすがに寂しそうな顔になる五代。
噂をすれば影、その舞がやっと到着する。
五代はあえて平静を装い、
五代「良かったじゃないか、行くんだろう、インターポール」
舞「どうして知ってるんですか」
五代「俺は何だって知ってるんだよ、そうだ、向こうに行く前に一緒に飯でも食うか、お前の好きなもん、ドーンとご馳走してやるよ」
最後のはなむけにと、五代は太っ腹なところを見せる。
舞「やったー、初めてですねー、五代さんがなんか奢ってくれるなんて」
五代「ただしな、この事件がきっちり片付いてからな」
二人はまず遺体の状況を検分する。
柴田によると、死因は刃渡り15センチほどのナイフで胸を刺されたことによる失血死、犯行時刻は昨夜の11時ごろだと言う。

五代「物取りによる犯行じゃないぞ、恨みによる犯行だ、財布が残ってる」
舞「ほんとだ」
……と言うのだが、西部署のデカだって、ここまで粗雑な推理はしないだろう。
せめて「物取りではない」でやめときゃいいのに。
遺体の写真をパシャパシャ取っていた舞は、秋野の右手の甲にマジックで「PM」と書かれてあるのに気付く。
さらに、コートのポケットには、犯人が残したと思われるオレンジ色の封筒があった。

五代「無能な警察諸君へ……なんだこりゃ」
舞「挑戦状、私は退屈な毎日に飽き飽きしている。だから暇潰しにゲームをすることにした。その名もしりとり連続殺人……もう分かるだろう、被害者の名前でしりとりをしようって訳さ、最初は
あから始めてみたよ」
五代「しりとり殺人だー?」
舞「動機なき無差別殺人は絶対に止められない、だから君たちに一つハンディを上げよう、私は苗字だけを尋ね、次のターゲットを選ぶことにする。つまり、下の名前を聞かずに選ぶと言う訳だ。運よく私の選んだターゲットの名前の最後に
んがつけば、そこでゲームオーバーだ」
丁寧にワープロで打たれた文章の最後には、署名のように「P・M」と記してあった。
五代「P・M? なんだそりゃ」
舞「パーフェクトマーダー、完全犯罪って意味ですよ」
ま、要するに、今回の犯罪、クリスティーの「ABCマーダー」をアレンジしたものだが、あちらはただアルファベット順に人が殺されるのに対し、こちらは被害者同士がしりとりで繋がっている分、本家以上に人の命を軽んじている感じがして、ミステリーのプロットとしてはなかなか魅力的だ。
ただ、挑戦状の文面からして、犯人PMは、直接相手に「あなたの苗字は?」と聞いているらしいのだが、昭和の下町じゃあるまいし、見ず知らずの人間にいきなりそんなこと聞かれて自分の名前を告げる奴がいるだろうか?
ま、「○○さん」と、適当な名前で呼びかけて、相手が「いいえ、△△です」と自然に名前を名乗るように仕向けているのかもしれないが、それだって確実とは言えまい。
それに、仮に名前を聞き出せても、しりとりが成立する名前に巡り会えなかったら、延々と同じとを繰り返さねばならず、怪しまれて警察に通報されるのではあるまいか?
舞「確か被害者の名前は」
五代「秋野也寸志さんだ」
舞「と言うことは、次は
しから始まる苗字の人が狙われるってことですね」
舞の何気ない言葉に、近くにいた柴田が震えながら振り返る。
五代&舞「柴田ーっ!!」

柴田「舞ちゃん、僕と結婚して下さい」
舞「はい?」
柴田「僕、養子になります、苗字変えます、一生懸命働きます、もう合コン行きません、お願いします!!」
舞「ごめんなさい」
柴田、しりとり殺人から逃れるために、いきなり舞に婿入りプロポーズをするが、あっさり断られる。
などと三人が遺体の前で遊んでいると、またしても緊急入電があり、品川区で下平かおると言う女性の刺殺体が発見されたと言う。
五代「おいおい、一日に二件も殺しかよ、世も末だな」
舞「五代さん、被害者の名前、下平かおるさんって言ってましたよね」
五代「ああ」
舞「
しで始まってます!! これってもしかして……」

果たして、下平かおるの右手の甲にも「PM」と言う文字が書かれていた。
舞「やっぱりこれは、しりとり連続殺人……」
柴田「心臓ひと突き、凶器はなし、ただし、傷口の大きさは秋野也寸志さんのものと完全一致」
舞「死亡推定時刻は?」
柴田「午前10時、ついさっきってことだね」
最初の事件と同じく、現場には、犯人からのメッセージが残されていた。
舞「まだまだしりとりは続くよ……五代さん、PMは本気です、本気で
んの人に辿り着くまで、殺人でしりとりをしようとしてるんですよ」
五代「ふざけやがって、人の命をなんだと思ってんだ」
お気楽な五代も、このゲーム感覚の殺しには激しい怒りを隠せない。
舞「次に狙われるのは
るから始まる苗字の人……なんとかしなくっちゃ」
舞たちは警視庁に戻り、電話帳と首っ引きで、次のターゲットになりうる人間をリストアップする。

五代「おい、銭形、ラッキーだ、
るのつく人は意外と少ない」
……いや、全然意外じゃないです。むしろ予想通りです。
舞「恐らく犯人は次も東京近郊で犯行を犯す筈です、
るのつく苗字で東京近郊に住むすべての人に護衛をつければ……」
と言う訳で、珍しく舞たちは警視庁の組織力を生かして、東京に住む38人の「る」から始まる苗字の人全員に警察官が張り付くと言う、身も蓋もない、もとい、堅実な作戦を取る。
もっとも、PMがいつ次の犯行を行うか分からないのだから、やや現実味に欠ける方法のように思える。
なので、PMのほうから、「一日一善」ならぬ「一日一殺」みたいな条件を提示した方がもっと盛り上がったように思う。

五代「そうか、わかった、護衛の配置が完了したそうだ」
日本刑事ドラマ史上、もっとも狭いと思われる捜査本部で指揮を取る五代。
巡査部長の五代がなんでそんなポジションにつくのかなどと、突っ込んではならない。
何故なら、このドラマ……と言うか、「ケータイ刑事」シリーズにおいては、ケータイ刑事とその相棒及び柴田とは、警視庁の捜査機能や権限を擬人化したものだからである。
なので、劇場版など、一部の例外を除いて、どんなに重大な事件が起きても、合同捜査本部などと言うものは設置されず、すべてはこの二人の合議によって捜査が進められるのである。
ちなみに、38人のうちのひとり、留守良男と言う人物だけは、その名のとおり日本を留守にしてインドに出張中とのことだった。
五代「留守番の男がそう言ってたそうだよ」
舞「海外なら狙われる心配はないですね」
五代「ああ」
ちなみにこの五代の台詞、さりげない伏線になってるんだよね。
だが、警視庁の総力を挙げての警戒も空しく、翌朝、青森県で瑠萌和葉(るもえかずは)と言う女性の他殺体が発見される。
死体の状況から、PMの仕業であることは明白だった。
舞「青森?」
五代「ちくしょう、裏掻かれたんだ、俺達にPM止めること出来ないのかよ」
机を叩いて悔しがる五代。
もっとも、次の犯行も東京で行われるというのは五代たちの勝手な思い込み(と言うか、願望)なので、裏を掻かれたと憤るのは、筋違いのような気もする。

舞「次は
はから始まる苗字の人が狙われる……どうして青森なんでしょう」
五代「うん?」
舞「どうしてそんな遠くで殺したんでしょう、東京にだって
るから始まる苗字の人はいたのに」
五代「護衛に気付いたかな、ようし、こうなったらもう公開捜査だ、柴田、マスコミ!!」
柴田「はい」
五代、上着をつかむと、柴田を引き連れ部屋を出て行く。
さっきはああ言ったけど、やっぱり鑑識の柴田がマスコミの交渉役を務めると言うのは、さすがにどうかと思う。

五代「連続殺人犯PMが狙うのは、苗字の頭に
はのつく人です、該当する方はなるたけ外出を控え、ひとりになるのを避けて下さい、知らない人から声を掛けられたら偽名を使うようにしてください」
五代は、一般市民にそう呼びかけてから、
五代「おい、PM、見てるか、お前は絶対にな、この五代潤と銭形警視が逮捕して見せる、覚悟しとけ!!」
正体不明のPMに向かって叫ぶ。
それを見ていた舞は、
舞(いや、私服はあかんやろ……) 心の中で突っ込みを入れるのだったが、嘘である。
嘘だけど、仮にも警察を代表してテレビに出るのに、ブルゾンはまずいんじゃないの? と管理人が思ったのは事実である。
せめてスーツくらい着なさいよ。
それはともかく、テレビを見た舞は、祈るように両手を握り合わせていたが、無情にも、その直後、今度は港区赤坂のビジネスホテルで、羽田ひろゆきと言う男の他殺体が発見されたとの知らせが入る。
無論、PMの仕業であった。

柴田「死亡推定時刻は今日の正午頃」
五代「PMは青森で瑠萌和葉さんを殺した、そして東京にとんぼ返り、で、今度は羽田ひろゆきさんを殺したんだな。次は
きで始まる苗字だ」
舞「どうして今度は東京?」
五代「うん?」
舞「確か、被害者は1週間前に帰国したばかりなんですよね」
五代「ああ」
舞「でも、このホテルにチェックインしたのは昨日、その間、何処にいたんでしょう」
五代「それは他のホテルを転々としてたんじゃないのか?」
舞の素朴な疑問に、テキトーに答える五代。
ま、このドラマ、尺が短いせいもあり、被害者の足取りを辿るとか、交友関係を洗うとかいう地道な作業は、まず行われないのである。
と、舞が部屋にあったスーツケースを開けると、中は空っぽであった。
その代わり、鍵が一本と、PMからのメッセージおよび小さな薬瓶が入っていた。
舞「警察は私の想像を遥かに超えて無能だったようだね、こんな一方的なゲームでは暇潰しにも何もならない、だから特別に二つ目のハンディをあげよう、この瓶に入っているのは南米産の猛毒ウラリだ」
五代「こ、これ?」
舞「銭形警視、五代刑事のどちらか片方が明日の午後三時までにこれを飲んで自殺すれば、しりとり殺人を終わりにしてあげるよ……」
犯人からのメッセージを読み上げる舞。

どうでもいいが、いちいちルビまで振らなくても良いのでは?
犯人からのとんでもない要求に、顔を見合わせる二人。
五代「明日の午後三時まで、お前と俺のどちらかが死ねば」
舞「この悪夢は終わる……」
五代「あと24時間だぞ」
舞「はい」
普通の刑事ドラマなら、その24時間の間に何とか犯人の正体を割り出そうと奮闘する姿が描かれるところだが、このドラマは普通じゃないので、舞のケータイの時計が刻々と進む映像が映し出された挙句、

舞「あと1時間ですね」
五代「ああ」
翌日、さっきと全く同じ状況にいる二人の姿となる。
丸一日、何してたんだぁああああーっ!! いや、嘘でも、二人がなんか捜査している様子を挿入すべきだったろう。
これじゃあ、犯人からの要求が「1時間以内にどちらかが自殺しろ」でも、同じことではないか。
しかも、

舞「あれ、このシーツ、裏になってます……あれ、これってウォーターベッドだったんだ」
残り1時間となって、舞がようやく犯行現場の違和感に気付くものだから、ますます二人がこの23時間、何の仕事もしなかったように見えてしまう。
それはそれとして、ベッドを調べていた舞の左手に五代が無言で手錠を掛け、もう片方を、窓のカーテンレールに固定する。

舞「五代さん、まさか」
五代「もうすぐ午後3時だ、PMは全く姿の見えない犯罪者だ、さすがのお前だってな、見付け出すことは不可能だよ」
舞「……」
五代「だがな、俺は警察官だ、このゲームに負ける訳に行かないんだよ、もうこれ以上罪のない人たちを犠牲に出来ないんだよ」
そう、五代、自分の命を投げ出して、PMの犯行を止めようと言うのである。

舞「待ってください、あと1時間もあるじゃないですか!!」
何とか五代を思いとどまらせようとする舞だったが、23時間ほど棒に振った(ように見える)人に言われてもねえ……
五代「短い間だったけど、結構楽しかったよ、じゃあな、姉さんによろしく」
さばさばと別れの言葉を告げ、敬礼して部屋を出て行く五代。
何気に、シリーズ通して一番カッコイイ五代ではあるまいか?
舞「五代さん、待って、死んじゃダメ、五代さん!!」
CM後、舞が病室に飛び込むと、五代がベッドに横たわっていた。
そう、どうやらほんとにウラリを飲んだらしいのである。
しかし、五代がほんとに自殺したのかどうか、犯人だって確かめようがないのだから、この辺は、五代が死んだと報道させて犯人or舞を騙す……くらいで良かったように思う。

舞「五代さん、五代さん、目ぇ開けてよ、五代さん、こんなの絶対いやだ!! すん……約束したのに、一緒に御飯食べに行くって約束したのにっ!! 嘘つき……」
てっきり五代が死んだと思い込んだ舞、五代の枕元に駆け寄り、なじるように叫ぶ。
この、相棒が死んだと思って泣き叫ぶと言う演技は、「ケータイ刑事」シリーズのヒロインが必ず一度はやらされる、女優としての通過儀礼のようなものなのである。
柴田「五代さん、死んでないよ」
舞「えっ?」
盛り上がっているところを部屋にいた柴田に指摘され、キョトンとする舞。
柴田「致死量のウラリを飲んだにも拘らず、即死しなかった。ラグビーで鍛えたボディーが彼を救ったんだ」
シリーズ通して、ウラリを飲んで死ななかったのは、この五代のケースだけではないかと思うが、体を鍛えてたからって死なないと言うのもなぁ……

舞「はぁーっ……良かった」
ともあれ舞は、五代が生きていると知って、全身の力が抜けたようにその場に座り込む。
舞「ずるいよ、五代さん、ひとりでかっこつけて、勝手にこんなことして……私たち、相棒なのに」
すすり泣きながら、恨めしそうな目で五代の顔を見詰める舞。
柴田「舞ちゃん、こんなときにどうかと思ったけど……」
柴田、遠慮がちに言いながら、例の封筒を舞に差し出す。
柴田「さっきナースステーションに届けられたそうだよ」
舞は涙を拭って、手紙に目を通す。
舞「どうやら悪運が強かったようだね、だったら私はしりとりを続けるしかなさそうだ……次は
きからだったね……」
舞は怒りのあまり手紙を握り潰すと、
舞「PM、お前だけは、この舞様が絶対に許さない!!」
宙を見据えてPMへの怒りを燃やすのだった。
しかし、舞たちが犯行現場周辺で丹念に聞き込みをして目撃者探しをしていれば、犯人らしき人物のモンタージュぐらい作れそうなもんだけどね。
が、さっきも言ったように、ケータイ刑事は、そう言う地道な作業……と言うより、地道な作業で事件を解決するのが死ぬほど嫌いなので、意地でもそういうことはせず、
舞「気になるのは3番目と4番目の事件、どうして犯人は青森まで行ったのか、どうしてスーツケースは空だったのか、どうしてこのベッドのスーツは裏表だったのか、そしてあのスーツケースに入っていた鍵は一体何処の鍵なのか」
舞、あのビジネスホテルに戻り、腕を組んで、事件について考え込む。
そこへホテルの従業員が入ってくるが、

それが、シリーズの常連で一番の出世頭、二朗さんなのだった。
意味もなく足を前後に動かすと言う、余計な小芝居をしてから、
二朗「失礼します、お掃除良いですか?」
舞「あ、どうぞ」
……
「どうぞ」じゃないでしょおおおおっ!! ここ、仮にも犯行現場でっせ?
つーか、普通は立ち入り禁止のテープが張ってあると思うんだよね。
それにしても、改めて見ると、二朗さん、顔でけーなー。
堀北さんが小顔なので、余計に大きく見える。
二朗「変なことばっかり続いてほんとにイヤになりますね、あ、そう言えば、食堂から氷が盗まれたんですよ」
舞「氷?」
二朗「ええ、氷なんか盗んで何に使うんでしょうね」
世間話をしながらベッドメークをする二朗。
ここで、舞が何かに気付いたようにシーツをはぐり、氷を入れるための栓を発見するシーンとなり、そこに「バーン!!」的な効果音が入るのだが、これってちょっと変だよね。
そのベッドがウォーターベッドだということは、すでに気付いていた筈なのだから……
それはともかく、舞は、その従業員がシーツの裏表を間違えることは決してないと断言するのを聞いて、一気に事件の真相に辿り着く。
舞「謎は解けたよ、ワトソン君!!」
続いて、アパートの部屋から出てきた中年男性に、いきなり舞の「お仕置き」が発動する。

舞「野上ショウゴ、自称推理小説家、あなたがしりとり連続殺人犯、PMね」
野上「なんのことだよ」
舞「とぼけないで、あなたはとっくにしりとりゲームに負けてるんだから」
野上「……」
ここから舞の謎解きとなる。
舞「一番目の被害者、秋野也寸志さん、二番目の被害者、下平かおるさん、ここまではあなたのしりとりは順調だった、だけど次のしりとりを間違えてしまったんです、
るから始まる苗字の人物を殺さなければならないのに間違えて4番目の被害者である羽田ひろゆきさんを殺してしまったんです」
野上「……」
下平かおるを殺した後、その名前の最後が「る」だと知った野上は困った。
「る」から始まる苗字の人間は、そうはいないからである。

で、アパートの隣に住んでいるのが、「留守良男」だったことを思い出した野上は、面倒臭くなったので、その男を殺してしまったというのである。
……
そんな殺人犯がいるかぁああああーっ!! 自分の隣に住んでる人間を殺すなんて、めちゃくちゃ危ないやん。
それはともかく、野上は隣人を殺した後で、重大なミスに気付く。
部屋の主は確かに留守良男だが、住んでいたのは別人だったのである。

舞「これは4番目の被害者、羽田さんの持っていた鍵です」
舞が例の鍵を取り出して、その場で留守の部屋の鍵穴に差し込むと、ドアは見事に開いた。
舞「本物の留守さんはインドに長期出張中だった、ここに住んでいたのは留守さんの友人で、外国から戻って来たばかりの羽田さんだった」
つまり、留守良男は自分がいない間、友人の羽田に部屋を貸していたのだ。
どうしてもゲームに負けたくない野上は、自分の失敗を糊塗するため、すなわち、間違って殺した羽田を4番目の被害者に仕立てるため、羽田の遺体をスーツケースに詰め、羽田自身に成り済ましてあのビジネスホテルへチェックインしたのだ。

舞「食堂から盗んだ氷をウォーターベッドの中に入れ、その上に羽田さんの遺体を載せた、そうやって羽田さんの死亡推定時刻を遅らせたんです」
出ました、「ケータイ刑事」シリーズには欠かせない、死体を温めたり冷やしたりすることで、死亡推定時刻を誤魔化すトリック!!
ま、実際は、死後硬直や死斑など、他の判定要素もあるので、まず不可能なトリックなんだけどね。
だいたい、氷を入れたウォーターベッドぐらいでは、大して冷却できないのでは?
舞「そして、その間に3番目の被害者にふさわしい人物を探し始めた」
野上は、ネットで、2番目と4番目の間に入れることの出来る名前、すなわち「る」で始まって「は」で終わる人物を探すが、そんな名前は滅多になく、結局、青森まで行って、瑠萌和葉を殺さねばならなかったのだ。
ちなみに、再現シーンの、野上のパソコンに表示された名簿では「瑠萌」となっているが、刑事部屋にあったホワイトボードには「流萌」と書かれていた。
舞はトドメとばかり、
舞「本物の留守さんがインドに出張へ行ったのは一ヶ月前、そのあと、このアパートに越してきたのはあなた一人、つまり本物の留守さんの顔を知らないのはあなたしかいないんです」
と言う事実を突きつけるが、野上が「そんなことが証拠になるのか」と言ってるように、全然意味のない指摘だよね。
何故なら、犯人が留守と間違えて羽田を殺したとしても、それが、このアパートの住人と言うことにはならないからである。
それに、人間関係の希薄なこの世の中で、アパートの住人が他の部屋に住んでる人間の顔を知らなくても不思議はなく、むしろ、野上以外の人間が全員、留守の顔を知っていたと言うことのほうがマユツバだろう。
野上はあくまでシラを切るが、

舞「いいえ、あなたです、今から、次のターゲットを探しに行くところだったんですよね、そのカバンに凶器が入っているはずです」
野上「……」
舞に単純且つ決定的な証拠を指摘され、観念したようにカバンを放り投げる。
舞、思わずそのカバンに駆け寄るが、

野上「ふっふっふっふっ、終わりにするのはまだ早過ぎるよ、こんなところへひとりで来るなんてバカだよねえ」
ごもっとも。 仮にも刑事が、ひとりで凶悪な殺人犯を逮捕しに来るなど、刑事失格と言われても仕方あるまい。
あ、言い忘れたが、野上役は、劇場版1作目などにも出ている田中要次さん。
野上「君の名前、銭形って言ったっけ、しりとりにはならないけど、もう、この際、どうでもいいや!!」
3番目の時には、危険な工作までしてしりとりにこだわった野上さんだが、急に雑になり、舞の首にナイフを突きつける。

野上「このゲーム、僕の勝ちだな」
舞「……」
野上に捕まり、首根っこを押さえられた猫のように大人しくなる舞。
五代「待てえっ!!」
が、そこへ颯爽とあらわれたのが、瀕死の筈の五代であった。
五代「俺の相棒に怪我でもさせてみろ、地獄に叩き込んでやるからなぁっ!!」 野上「……」
五代の凄まじい気迫に、気を呑まれて立ち竦む野上。
その隙に、舞が野上の腹にエルボーを食らわせてその腕から逃れ、入れ替わりに突進した五代が野上を数発殴ってから手錠を掛け、事件解決となる。
しかし、ミステリードラマでこの手のプロットだと、動機なき無差別殺人……と見せかけて、実はその裏に別の目的が隠されていたと言うパターンが多いと思うのだが、今回のように、ほんとに純粋にゲーム殺人だったと言うのは珍しいのではあるまいか。
それに、尺の短いこのドラマで、4人もの人間を殺した犯人と言うのは、ちょっと他では思いつかない。
さて、今回は最終回と言うことで、一旦「済みマーク」が出てから、約束どおり、五代が舞に「回らない寿司」を奢ってやっているシーンとなる。
店から出た五代、散財させられたとぼやいていたが、
五代「ま、いいか、また日本に帰ってきたら、いつでもご馳走してやるよ」
舞「ほんと?」
五代「ああ、だから、元気でな」
舞「五代さんもお元気で」
五代が差し出したグローブのような手を握り返すと、舞はいつものように自転車にまたがる。
と、何か思いついたように、
舞「あ、じゃあ来週は焼肉ね」
五代「ああ……はっ? 来週?」
舞「一週間後には帰ってきますから」
五代「「一週間後? おいおい、お前三年じゃないのか」
舞「一週間だけですよ。もうすぐ冬休みだから、おじいちゃまとインターポールとか見学しに行って、フランスに遊びに行くんです」
五代「遊びに行くだとーっ? はっ、柴田の野郎、出鱈目言いやがったんだな」
五代、その場にいない柴田を罵るが、今更手遅れであった。
どうでもいいが、今日は12月30日か、31日だと思われるので、「もうすぐ冬休み」と言う言葉には強烈な違和感を覚える。
舞、悔しがる五代の顔を上目遣いで見て、
舞「へーっ、五代さん、もしかして私がずーっとフランスに行くと思ってたのか」
五代「……」
舞「だから、すっごく寂しいなーって、思ってんだ」
五代「なにをお前、そんな……俺がどうしてお前のために」
五代、わざとぶっきらぼうに答えると、いま食べた寿司を返せと言い出す。
舞「そんなの無理ですよー、あ、宿題やんなきゃ」
五代「ちょっと銭形、待ちなさいよ!!」
いかにも今思いついたような口実を口にして、自転車で走り出す舞。

舞「ご馳走様でした、五代さん、行って来ます!!」
途中で止まって振り向くと、敬礼しつつ、別れの挨拶を告げる。
五代「おい、気をつけて行って来いよ!!」
五代も最後は笑ってエールを送り、舞を送り出すのだった。
最終回ではあるが、1クール13話と、他のシリーズと比べてスパンが短い上、ドラマの中でも二人の関係は変わらないので、他と比べると、かなりあっさり風味な別れのシーンとなっていた。
以上、色々と不満はあるが、無差別殺人犯と舞たちの息詰まる戦いを描いた、「銭形舞」の中では出色の出来のエピソードであった。
おまけ 「銭形舞」に限らず、このシリーズにおいては、どんなにヒロインのスカートが短くても、どんなに強い風が吹いても、絶対にチラは発生しないことになっているのが、キャプ職人の私にはとても悲しいのだが、それはこの作品に限らず、21世紀のドラマに共通する点だと思うので、仕方あるまい。
だが、暗黒の中にも、微かな希望の光が差すことがある。
それは第2話のこと。

2階のテラス部分で、事件の関係者に話を聞いている舞と五代。
この日はとても風が強い日だったので、めくれないかなぁと、はかない望みを抱きながら見ていたが、

もう、ガバァッと音がするくらい、豪快にめくれたのである!!
ただし、前ではなく後ろだったので、肝心なブツは見えなかった。
それでも、視聴者には見えなくても、真後ろに立っていた山下さんには、目の端にちらっと白いものが見えたのでないかなぁとゲスいことを考え、これを「隠れパンチラ」or「可能性パンチラ」と命名したいと思う。
と、同時に、こういうのを見ると、つい、

「イナズマンF」の第17話で起きた、テレビ史上に燦然と輝く「奇跡」を思い出さずにいられない管理人であった。

そう言えば、この女優さん、なんとなく堀北さんに雰囲気が似てるんだよね。
終わりです。
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