第5話「死神の子守唄」(1968年10月13日)
4話に続いて、実相寺監督がメガホンを取ったエピソード。ただ、実相寺作品が2つ続くと、正直目が疲れる。
冒頭、夜の公園を何者かに追われて逃げ惑う若い女性。大声で助けを求めるが、

襲撃者にこういう近未来的なデザインの銃で撃たれ、

哀れ、一瞬でカチカチに凍ってしまう。そのまま後ろの噴水に倒れる。
冷凍される際の「チーン」と言う音が、電子レンジの音みたいでやや間抜けだ。
その後、別の女性も冷凍され、転落して死亡。

翌日、早速SRIメンバーが調査に乗り出し、最初の犠牲者の遺体を調べる。
野村「一瞬で人間を冷凍にする機械か。牧さん、そんなものがあるんですか?」
牧「ああ、現代の科学では液化ヘリウムに断熱消磁作用を繰り返すことによって0.000001絶対温度まで下げることが可能だと言われてるんだ。……しかし、この現象はそれよりもっと低い冷却力を持った何かが……」

遺体に小さな計測機械を近付けると、ザーザーと言う雑音が聞こえる。
三沢「先輩、これは物凄い放射能です」
機械にはちゃんと「放射能測定装置」と書いてある。
昔の特撮では、とりあえず異変が起きたら意味もなく放射能が計測されることが多いが、今回に限ってはちゃんと意味があるのだ。
三沢は、現場の様子を窺っている若い女を見掛け、後をつける。
女は高木京子と言う歌手で、バーで物悲しい歌を歌っていた。
「10人の娘が旅に出た~滝に打たれて1人目が死んだ~9人の娘が旅をした~滝から落ちて2人目が死んだ~♪」 ……く、暗い。 客が文句を言わずに聴いているのが不思議だ。
客席で聞いていた三沢は、歌詞が冷凍殺人を暗示していることに気付く(やや強引)。

大学の研究室で、被害者の血のサンプルを顕微鏡で覗いている牧。
牧「なんですか、この黒い粒子は?」
小田博士「簡単に言えば、赤血球と白血球がせめぎ合いながら、入れ替わろうとしている。しかしその作用は十全ではなく白血球がどんどん死んで行っている……」
牧「もしかしたら、スペクトルG線を当てられたんじゃないでしょうか?」
小田「だが、原爆や水爆を遙かに凌ぐ熱量が必要だ」
牧「逆に、冷却することでスペクトルG線を作り出した者がいたとしたら?」
牧の仮説を、小田博士は一笑に付した……。

高木京子は森の中の一軒家に行き、兄である吉野貞夫(草野大悟)に会う。高木京子と言うのは芸名なのだ。
京子「兄さん、とうとう人体実験を! あたし確かめに行ったのよ。凍り付いたあの人たち……兄さん、あたしそんなにまでして生きていたくはないわ!」
吉野「バカ、生きるんだよ! お前は幸せになるんだ! お前が幸せになるんだったら、俺は……」
京子「狂ってる、兄さん、兄さんはキチガイだわ!」 妹の制止を振り切り、吉野は例の近未来的な銃を持って出掛ける。
そして3人目の犠牲者が京子の歌の続き「崖から転げて死んだ~♪」になぞらえて殺される。
その体からも放射線が検出され、牧はやはりスペクトルG線によるものだと確信する。
町田警部「スペクトルG線と言うのは確か原爆病を治すための方法だと言っていたね?」
牧「ええ、しかし実用化には原爆以上の熱量を必要とするので、世界でも諦められてたんです。それを逆に冷却することを考え付いた奴がいる」
町田警部はSRIの的矢所長の親友で、SRIの協力者と言う位置付け。小林昭二氏が演じている。

牧は、スペクトルG線を研究していると言う、東大病院の放射線科の医長・麻生博士(戸浦六宏)に会って話を聞く。
博士は、冷却によってスペクトルG線を作り出せる者がいるとしたら、5年前に行方をくらました吉野貞夫と言う研究者だけだろうと話す。そこへ、バーで歌っている最中に倒れた高木京子が、三沢によって担ぎ込まれてくる。三沢を見て、驚く牧。

麻生「実はあの人も、東京にいる白血病患者のひとりなんだ。かわいそうに、胎内被曝なんだよ。お母さんがあの子がお腹にいるときに広島を訪れて、不幸にも原爆に遭ったらしいんだな」
牧「胎内被曝か……で、治る見込みは?」
麻生(首を振って)「本当はステージに出ることも無理なんだ。しかし最後まで歌い続けたいと言う希望を止めることは出来ないよ」

三沢は、犯人を知っているらしい京子にその名前を教えてくれるよう懇願するが、
京子「あたしは一生お嫁に行けない女、子供も産めない女、いいえ、間もなく死ぬ女なんです」
三沢「京子さん!」
三沢「さよなら、あたし、忘れません今日のこと」
その後、吉野は工事現場で4人目の女性を冷凍化する。
その死体は、ショベルカーのアームの下に倒れ、あたかも、「クマに食われて死んだ~♪」と言う4番目の歌詞通りに殺されているように見える……かなぁ?
直後、牧が現れる。

牧は友達にでもするように吉野に語りかける。
牧「吉野、待て、お前も科学者なら、俺の言うことを聞け」
吉野「ふふ、科学者? 科学者が何をした? 原爆や水爆を発明しただけじゃないか」
牧「そうかもしれん……しかし、君のやり方は」
吉野「間違ってるって言うのか? いや、間違ってるかもしれない。しかし俺がやらなかったら、誰が京子の白血病を治してくれた? 日本がか? それとも原爆を落としたアメリカがか? 誰も何もやってくれはしない」
牧「だからって、罪のない子を……」
吉野「じゃあ、京子に罪があったって言うのかい? 君に答えられるか?」
牧「吉野クン、やっぱり君は間違ってる……話し合えば」
吉野「ふふふふ、話し合って京子が治るか?」
夜の工事現場で、追う者と追われる者が親しく話し合う。極めて印象的なシーンだ。
で、いろいろあって、吉野は警官隊に包囲され、大立ち回りを演じた挙句、連行される。
しかも、残された京子は三沢の前で「死ぬのはイヤ」と、一縷の望みを掛けて、兄の残した銃で自らを撃つが、やはり、冷凍人間になる。そして下に落ち、鉄柵のトゲに貫かれて死ぬ。これも「蜂に刺されて死んだ~♪」と言う歌詞通りであった。
……く、暗い。 これほど救いようのないラストは、他にはあるまい。
さて、このエピソード、歌詞通りに人が殺されると言うストーリーは面白いが、いまひとつ活かされていない感じだ。
早い段階で、犯人やその動機が(視聴者に)分かってしまうのも興醒め。
「原爆症」と言う重いテーマを扱っているのは賞賛に値するが。