第15話「予告された罠」(1973年10月10日)
冒頭、

ドクッドクと言う、心臓の鼓動の音をバックに、健が何者かに追われて、団地の長い通路を必死に逃走していると言う、サスペンスフルなシーンから物語がスタートする。

しかも、こともあろうに健を追っているのは、仲間である筈のSSIと熊野警部で、
健「やめてくれ、ボス!! よしてくれ!! 撃たないでくれ、やめてくれ!!」
中庭のどん詰まりに追い詰められた健の命乞いにも聞く耳を持たず、ボスは拳銃を構えると容赦なく引き金を引き、健の心臓を一発で撃ち抜く。
もんどりうって倒れる健。
だが、無論、主人公が仲間に撃ち殺される筈がなく、それは健の見ていた悪夢に過ぎなかった。

健「……」
だが、全身汗ぐっしょりになった健がベッドの上に体を起こすと、
デビラーの声「夢ではない、必ずお前は信ずる仲間の手で殺される。それが運命なのだ」
と、紛れもないデビラーの声が聞こえるのだが、それが夢の中でデビラーが言った台詞を健が思い出しているのか、現にデビラーがラジオか何かを通じて喋っているのか、あるいはデビラーが自分のアジトで独り言言ってるだけなのか、その辺が良くわからず、のっけからもやもやしてしまう。
なので、このデビラーの台詞はないほうが良かったと思う。
あるいはデビラーがアジトで喋ってる映像にすべきだったと思う。
つーか、そもそもどうやってデビラーは前以てそんな夢を健に見せることが出来たのか、その点がはっきりしないのである。
あ、まあ、この後、ラジオ体操の音が聞こえるので、ラジオの音波を使って健にそんな夢を見させたのかもしれないが、最後まではっきりした説明はないままだ。
それはともかく、ドアが開いてボスが入ってくるが、
健「……」
ボス「どうしたんだ、健」
健はなんとなく不機嫌そうに、無言で部屋を出て行く。
一方、デビラーはプロトアンデスと言うロボットの改造が終わったと部下から報告を受けると、ロボットを出撃させる前に健を罠に掛けろと命じる。
ちなみにさっきの部屋は、ボスがノックもせずに入っているところを見ると、自動車修理工場の建物内にある仮眠室のような部屋だったのかもしれない。
さて、健がさっきと同じような団地の敷地内のあずま屋に座ってぼんやりしていると、近くを通り掛かった牛乳配達の男が、いきなり掴み掛かって来る。

健「あっ、メカロボ!!」
健は相手の服の下に機械部品を見ると、全力で戦ってこれを倒す。

住民「人殺し!!」
ところが、相手は倒れても人間の姿のままで、しかも、いつの間にか健の周りに大勢の住民が立っていて、健を殺人鬼か狂人でも見るような白い目を向け、口々に糾弾する。
しかし、こんな早朝から住民があっという間に湧くのも変な話なので、彼らもメカロボが化けたものだったのか?
健「違う、こいつはメカロボなんだ、殺そうとしたのはこっちなんだ」
健は必死に無実を訴えるが、誰も信じてくれない。

健の視界がぐるぐる回転するが、住民たちに混じって数人のメカロボがじっとこちらを見詰めている様子が瞬間的に映し出されるのが、まさに悪夢に迷い込んだような感じで、実に不気味な雰囲気を醸し出すことに成功している。
と言うことは、やはりメカロボは一部だけで、他の人間は本物で、メカロボたちに扇動されただけだったのかもしれない。
と、そこへ熊野警部が通り掛かり、人垣を掻き分けて被害者のそばにしゃがみ込む。
熊野「紅君、君は……」
健「違う、違うんだ!!」
健はろくに説明もせずにその場から逃げ出す。
しかし、男の体をちゃんと調べれば済むことなのに、健も熊野もそうしようとしないのはいささか不自然である。
まあ、恐らく、ちょっと調べただけで分からないほど巧みに人間に化けたメカロボだったのだろう。
それが本物の人間で、鉄面党に操られて健を襲ったのなら、正当防衛とは言え、健が人を殺してしまったことになって、後味が悪過ぎるからね。
当然、熊野や警官たちが健を追い掛け回すが、

この竜の背中のように長い歩道橋は、「新マン」のヤメタランスの回に出て来たのと同じものだよね。
健は、前方から来た警官と揉み合いになるが、その体がメカだったので、またしても手加減をせずにどつきまわし、殴り殺してしまう。
殺さずに捕まえれば無実が証明できたのに、学習能力ゼロである。

健「違う、違うんだ、みんな俺を殺人犯にしようとしてるんだ、違うんだーっ!!」
四方から浴びせられる住民の「人殺し」と言う声に、耳を塞いで絶叫する健ちゃん。
今更だけど……いえ、なんでもないです。
熊野「紅君、またも君は……こらっ、大人しくするんだ!!」
そこへ熊野警部が駆けつけるが、健は抗弁すらせずに逃走する。
熊野警部は神奈川県警のパトカーに後を任せて健を追いかけるが、

警官「デビラー博士、死体処理終了、万事うまく運んでいます」
その警官たちも鉄面党の一味であることが示され、今回の罠がかなり周到な計画の下に進められていることが分かる。
健を見失った熊野は自動車修理工場に行き、ボスに事情を説明する。
ボス「なんですって、健が連続殺人事件を? 冗談にもほどがありますよ、警部」
熊野「冗談ではない、早く探し出さないとさらに罪を重ねるぞ」
ボスは健が殺人犯などと信じたわけではないが、とにかく健の居所を突き止めるよう、真理たちに命じる。
色々あって、健は操車場で熊野警部に見付かり、銃を突きつけられる。

健「違う、俺は人殺しじゃない。これは罠なんだ、奴らメカロボなんですよ」
必死に訴える健であったが、熊野は無情にも健の右手に手錠を掛ける。
これが「悪の組織」の仕掛けた罠とは言え、特撮番組の主人公が手錠を掛けられるというのは、なかなか衝撃的なシーンである。
熊野警部が乱暴に健の右手を引っ張って歩いていると、向こうからSSIのメンバーが険しい面持ちでやってくる。

ボス「警部、申し訳ありませんが、健を預からせていただけませんか」
熊野「なんだって」
ボス「こいつ、朝からちょっとおかしなことがあったんです。頼みます、一時間で良いんです、二人で話をさせてください」
実相寺的アングルで、熊野警部に無理を承知でお願いするボス。
次のシーンでは、SSI本部で、ボスが健と二人きりで話している。
SSIのリーダーの懇請を、さすがの熊野も断り切れなかったのだろう。
ボス「そこで牛乳屋に化けたメカロボに襲われたって訳か」
健「ボス、奴ら、俺を殺人犯にして動きが取れないようにするのが狙いなんです」
ボス「罠か……罠ね」
健「ボス!!」
ボス「健、罠には罠だ」
ただ、ここでボスがあっさり健の言い分を信じ、さらに鉄面党に対し、今度は自分たちが策略を仕掛けることを視聴者にバラしたのは、いささか勿体無かったような気がする。
これでは、この後に健の身に何が起きても、どうせ馴れ合いだと分かって面白味が半減してしまう。
なので、そのことは視聴者にも最後まで伏せておくべきだったと思う。
たとえば、
健「本当なんです、信じてください」
ボス「健、仮にもSSIのメンバーが殺人犯として逮捕されるなどあってはならないことだ」
健「そうなんです。俺が人殺しなんてする筈が……」
ボス「いや、お前には死んでもらわねばならん」
健「ボス!! そんなバカな!!」
みたいな思わせぶりなやりとりの後に、本編と同じく、健が手錠をつけたまま脱走しているカットに繋げば、視聴者も騙せていたのではあるまいか。

ボス「健が脱出した、○○方面へ逃走中、逮捕せよ」
大作「了解……どうなってんだ、こりゃ」
それはそれとして、二人の計画のことは知らされていない真理たちは、首を傾げつつ、健を追いかける。
と、まだ健の脱走を知らない熊野が自動車修理工場に妙な顔をしてあらわれ、
熊野「おい、大郷君、おかしなことが分かったんだ」
ボス「おかしなこと?」
熊野「紅君が殺害した被害者はほとんど死体処理班が片付けたはずなんだが、当局は全くそんなものは関知しとらんと言うんじゃ」
ボス「やはり……」
熊野「とにかく紅君に会わせてもらおう」
ボス「警部、申し訳ない!!」
さして反省してない顔つきで、健の逃走を打ち明けるボスであった。
しかし、健が殺したのは二人だけなのに、わざわざ「ほとんど」などとつけるのは変だよなぁ。
シナリオでは、実際はもっとたくさんの人間(メカロボ)を殺しているのだが、撮影ではカットされたのかもしれない。
また、死体が当局に運ばれていないと言うことは、やはりあの被害者たちは健の主張どおりメカロボだったのだろう。
ほんとの人間の死体だったら、何も隠す必要はない筈だからね。
だから、最初に熊野が牛乳屋の体を仔細に調べていればすぐメカロボだと分かった筈で、ある意味、今度の事件の元凶は熊野ではなかったかと言う気がしなくもない。
まあ、錯乱して逃げ出した健も悪いけど、これは事前に、あのラジオの音波によって(?)悪夢を見させられて精神的に不安定になっていた(と思われる)のだから、仕方のない面もある。
しかし、デビラーにしては、この辺、詰めが甘かったと言わざるを得ない。
肝心の死体がなければ、健を殺人犯として逮捕させることなど土台無理な話だからである。
どうせなら、メカロボに死体のふりをさせたあと、あらかじめ用意していた本物の人間の死体と摩り替えるくらいの小細工をして欲しかった。
警官もすべてメカロボが化けていたのだとすれば、その程度の偽装はたやすかっただろう。
さて、逃走を続けた挙句、健は手錠を嵌めたままレッドバロンを呼び出し、それに搭乗する。
CM後、殺人容疑者の乗るレッドバロンが接近中とのことで、例の団地はパニック状態に陥り、住民が我先にと避難している。
哲也たちも団地に急行し、
大作「健、やめるんだ」
哲也「健ーっ!!」
真理「健!!」
てっきり健がヤケになって団地を破壊しようとしているのかと危ぶみ、口々に思いとどまらせようとするが、健は無言でレッドバロンの操縦を続ける。
やがてボスも到着し、レッドバロンの前に立ちはだかる。

健「どいてくれ、ボス、その団地はメカロボに占領されているんだ」
ボス「健、やめろ、降りて来るんだ」
健「いやだ、どうせみんな俺を分かってくれないんだ」
ボス「ようし、どうしても行くと言うのなら、この俺を踏み潰してから行け!!」
一同(うわぁ……) 安い青春ドラマみたいなやりとりで真理たちをいたたまれない気持ちにさせると、ボスは恐れる色もなくレッドバロンに向かって歩き出す。
健「ボス、どいてくれ」
ボス「……」
健「お願いだ、ボス」
ボス「降りて来い、健」
健がどうするのか、固唾を飲んで見守るメンバーの顔がひとりひとりアップになる。

無論、管理人に選ばれたのは綾鷹、いや、真理タンの男前のお顔でした。
が、意外にも健はあっさりレッドバロンから降りると、観念したかのように淡々と歩き出す。
熊野「今度は逃がさんぞ」
ボス「警部、俺に任せてください」
近付いてくる健の姿と、メンバーの緊迫した顔がカットバックされるが、

無論、管理人が貼るのは真理タンただひとりなのでありました。

ボス「健、覚悟は出来てるな」
と、何を血迷ったか、ボスは拳銃を取り出して、健を自らの手で射殺しようとする。
しかし、ボス、顔の割りに可愛らしい銃持ってはりますね。
健「ボス、見逃してくれ!!」
ボス「健!!」
熊野「くーっ、また逃げられた!! 逮捕するんだ」
再び逃げ出した健をボスが追いかけ、熊野もそれに続くが、熊野はすでに健が殺したはずの死体が存在しないことを知ってる筈なんだけどね。
一体何の容疑で逮捕するつもりなのか……

それはともかく、熊野と一緒に走り出した真理が、妙に嬉しそうな顔をしているのが可愛いと思いました。
ここで、冒頭の、健が見た夢と全く同じ状況になるのが、さすが名匠・藤川桂介さんである。
しかし、そもそもあの夢は、一体なんだったのだろう?
仲間に追いかけられて殺されるなどと言う不安を、健が理由もなく抱くのはおかしいので、やはり鉄面党が何らかの仕掛けで健の心を操り、人工的に作り出した夢だったのだろうか?
ともあれ、健は団地の通路を駆け抜け、中庭に出て、そのどん詰まりに追い詰められる。
健「ボス、やめてくれ、やめてくれ、お願いだっ」
ボス「……」
熊野「大郷君!!」

健の必死の命乞いも、熊野の制止の声も無視して、ボスは拳銃の引き金を引き、夢と同じく、健の心臓を正確に撃ち抜く。
真理「はっ!!」
思わず息を呑む真理。
健はもんどりうって倒れると、それっきり動かなくなる。
慌てて健に駆け寄る仲間をよそに、ボスは周囲に鋭く視線を飛ばし、団地に潜り込んでいるメカロボたちが素早く姿を隠すのを確認する。
熊野「全く狂っとるよ、大郷君、君を殺人の現行犯で逮捕する」
何も知らない熊野は、嘆かわしげに吐き捨てると、今度はボスの手に手錠を嵌める。
デビラー「ふふふふ、万事うまく行ったぞ、レッドバロンが動かないばかりか、キャップの大郷まで逮捕とはな……ゆけ、プロトアンデス、関東石油コンビナートを破壊し全ての生活機能を麻痺させてしまうのだ」
部下からの報告を受けたデビラーは、それが罠とも知らず、プロトアンデスに出撃を命じる。
プロトアンデスの出現を緊急通信で知ったボスは、しめしめとばかりに笑い出す。

ボス「引っ掛かったな、デビラーめ、健、起きろ」

ボスの言葉に、担架で運ばれていた健の死体がむっくりと起き上がる。
しかし、健が死んだと言うのに、真理や哲也たちの悲しむ様子がないのは不自然だよなぁ。
ま、あまりに突然の出来事で悲しむ余裕もなかったのかもしれないが、ほんとは、健、みんなから嫌われてたりして……(註・断じてそんなことはありませんっ!!)
真理「あ、健!!」
哲也「健!!」
熊野「お、おい、大郷君、こりゃ一体?」
ボス「奴らの罠を逆にかけてやったんです、さっきのは空砲です、さ、外して下さい」
熊野「ちっくしょう、仲間まで一杯引っ掛けやがって」
健「ボス、お先に!!」
真理「ボス!!」
自分たちも騙されていたことを知り、ムッとする真理たちだったが、すぐ気を取り直して任務に就くのであった。
視聴者にほぼネタばらしがされていたのは惜しいが、敵の仕掛けた罠を逆用して敵を引っ掛けるとは、見ていて実に爽快でカタルシスのあるオチである。
改めてレッドバロンに乗り込み、関東石油コンビナートまでひとっ飛びして、破壊活動を行っているプロトアンデスと対峙する健。
だが、プロトアンデスはかなりの強敵で、左手には盾、右手には着脱式のドリルがつけてあり、攻守とも隙がなく、レッドバロンはドリルで左胸を抉られ、そのドリルの回転によって旋回しながら空中に舞い上げられる。
熊野「大郷君、あのままじゃレッドバロンは爆発されるぞ」
ボス「哲也、真理、マグネチックパワーだ」
ボスの命を受けた二人はアイアンホークに乗り込み、車両に搭載されているマグネチックパワーと言う特殊兵器を作動させる。

哲也「電源増幅OK」
真理「照準OK」
哲也「発射!!」
と、アイアンホークから青色のビームが発射され、レッドバロンを振り回しているドリルに命中、これを引き離して地面に激突させて爆破する。

作戦が成功して喜ぶ真理タンが可愛いのである!!
この後、レッドバロンが一方的にプロトアンデスを叩きのめし、最後はエレクトリッガーで粉砕する。

にしても、今まで何度も書いてきたが、真理の白のミニスカ&白のロングブーツの組み合わせ、
最高だね。 おまけにパンツも白と来ているのだから、言うことなし。

また、エピローグであの団地を訪れた際、ジーンズ姿まで披露してくれている。
と、向こうから熊野警部がやってきたので、健が改めて頭を下げる。
健「警部、大変ご迷惑をおかけいたしました」
熊野「いやぁ、良かった、良かった、あれが鉄面党の罠じゃなかったら、わしゃこの手で紅君と大郷君を逮捕するところだった」
以上、善と悪の騙し合いをダイナミックに描いた、緊迫感溢れる力作であった。
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