第12話「この一撃に命を賭けろ!」(1973年9月19日)
※この記事は2014年4月19日に公開した記事を全面的に書き直したものです。 冒頭、ボスを除く4人が屋外で射撃訓練をしている。

大作「おお、さすが哲也だよ、また満点だぜ」
哲也「大作、お前の番だ」
大作「ようし」
SSI随一の射撃の名手・哲也はさすがに抜群の成績を上げるが、続く大作は見事なくらいに的に当たらず、哲也に軽蔑の眼差しを向けられる。
哲也「お前それでもSSIのメンバーか」
大作「なにぃ」

真理「二人ともどうしたの?」
大作「哲也があんまりうるさく言うんでね。SSIの使命は人を殺すことじゃない、守ることなんだよ。そうだろう、健」
健「ああ」
大作が横で撃っていた健に同意を求めると、健は迷うことなく首肯する。
哲也「俺は違う、やられる前にやれ、正確に敵を倒す……」
大作「違うね、SSIは攻撃する為にあるんじゃない、守る為にあるんだよ」
話はSSIの存在理念にまで及ぶが、ちょうどそこで車の無線の呼び出し音が鳴ったので議論は噛み合わないまま終わる。
もっとも、専守防衛だろうと、先制攻撃だろうと、射撃の腕が正確であることに越したことはないので、それは、大作の射撃が下手なことの言い訳にはならないような気がする。
ボス「国家警部本部より指令が来た、直ちにSSI本部に集合せよ」
健「了解」
それはともかく、通信はボスからで、4人は訓練を中断して本部に戻る。
あ、大事なこと言うの忘れてた。
真理のミニスカ&ロングブーツ姿ってサイコーだなぁあああああっ!! 特に、風が吹いてスカートがピッタリ足に張り付いているところがたまりません。
さて、ボスはロボットの設計図らしきものをみんなに見せ、

ボス「これが小田切博士の設計による、スーパーロボット・ジンライだ」
大作「強そうですね」
ボス「うん、レッドバロンと互角の能力を秘めてるそうだ」
真理「それで小田切博士の出迎えはどうします?」
ボス「鉄面党に気付かれない為に博士の到着は報道陣にも伏せてあるんだ。だから、出迎えは健と真理に行ってもらう」
と言う訳で、何が「だから」なのか良くわからないが、そういうことになるのだった。
だが、小田切博士の帰国はすでにデビラーの知るところとなっていた。

デビラー「奴はレッドバロン以上のスーパーロボット・ジンライを作るために帰ってくるのだ。キラーQ、お前は小田切博士を殺せ、なんとしてもジンライを作らせてはならん」
キラーQ「はっ、必ず小田切博士を暗殺して見せます」
いや、殺しちゃっていいの?
序盤でやっていたように、捕まえて奴隷人間にして自分たちのためにジンライを作らせるんじゃないの?
しかもレッドバロン以上と折り紙が付いているスーパーロボットを作れる逸材だと言うのに、ひとおもいに殺しちゃえと言うのは、なんか勿体無い気がする。
そりゃ、博士を捕まえるより殺す方が簡単ではあろうが、常に最高の成果を欲張って結局失敗するのが得意な「悪の組織」にしては、あまりに手堅すぎて「らしくない」感じだ。
デビラー「しかし、小田切博士、今何処にいていつ帰国するか我々には分からん」
キラーQ「作戦は出来ております、小田切博士の身辺を守る為に必ずSSIが動くと思います。そこで……」
作戦の具体的な内容については説明されぬまま、次のシーンへ。
指揮官キラーQは、大きなビルにオフィスを構える女社長っぽい姿に化けると、スーツを着こなした哲也をにこやかに出迎える。
哲也「お電話いただきました、坂井です」
キラーQ「ああ、車のセールスの方ね、どうぞお掛けください」
哲也は、普段は自動車のセールスマンとして働いているのである。
哲也は勧められるまま、キラーQの真正面の椅子に座り、
哲也「早速ですが、カタログをどうぞ。これは西ドイツのスポーツカー、こっちがイタリア製です」
キラーQ「ああ、そう」
キラーQ、カタログを開きつつ、机の下の隠しボタンを押す。

すると、哲也の座っている椅子の背もたれから金属製のアームが飛び出して哲也の両肩をがっちり押さえ込み、さらには両手首も手錠のようなリングで肘掛に固定されてしまう。
哲也は抵抗する間もなく意識を失い、その顔に視力検査の時に使うトライアルフレームに似た奇妙なアイテムを装着される。

キラーQ「坂井哲也、あたしの質問に答えなさい、小田切博士は何処に何時に着きますか」
哲也「知らない」
キラーQ「あなたは知っています、答えなさい。小田切博士は何処に何時に着きますか」
哲也「知るもんか」

キラーQ「答えなさい、答えなさい、答えなさい……」
念仏のように同じ言葉を繰り返すキラーQ。
久しぶりの女性指揮官なのだが……人生なんてこんなもんである。
馬鹿みたいな顔になりつつ、不屈の精神力で秘密を守ろうとあらがう哲也であったが、結局機械の力には勝てず、キラーQの欲する情報を漏らしてしまう。
しかし、警備を担当していない哲也もそのことを知っていたとは、SSIにしては機密保持が甘かったようである。
あと、前回の真理同様、二週続けてSSIメンバーの一人が催眠状態にされて鉄面党の手先になると言うプロットなのは、いささか芸がないなぁ。
ついでに、ふと思ったのだが、SSIメンバーの顔はすべて鉄面党に知られているのだから、無理にカムフラージュとして普通の仕事をする必要はないと思うんだけどね。
特にセールスマンの哲也などは、一人で外を歩き回ることが多く、鉄面党に恰好の標的を提供しているようなものである。
今回の例を見れば分かるように、職業柄、おびき出そうと思えば簡単におびき出せるしね。
さて、問題の小田切博士が日本に帰国し、健の運転する車で空港から移動を開始する。
しかし、これも、私服とは言え、鉄面党に顔を知られている健と真理が一緒では逆に目立つので、SPに任せておいたほうが無難だったような気もする。
だいたい、要人の護衛など、SSIの本務ではあるまい。

健「博士、ジンライの設計図は大丈夫でしょうか、鉄面党に奪われでもしたら大変ですからね」
小田切「いや、そう思いましてね、全て僕の脳細胞の中にしまいこんであります」
真理「それならば安心ですわ」
いかにも頭脳明晰を思わせる小田切博士の言葉に、「この人の赤ちゃん産みたいわぁ」とでも言いたげに、うっとりした眼差しを向ける真理タンでした。
しかし、小田切博士、そもそも今まで何処で何をしていたのか、何故このタイミングで帰国したのか、色々と不可解な点の多い人であるが、最大の疑問は、なんでわざわざ鉄面党の暗躍している日本でジンライを作ろうと思ったのかと言う点である。
鉄面党に奪われた各国のロボットの性能を見る限り、たいていのロボットは別に日本じゃなくても作れるんじゃないかと思うんだよね。

それはともかく、キラーQは、引き続き催眠状態にある哲也を伴って、小田切博士の乗る車の行く手にあるビルの屋上に移動し、哲也自身に博士を狙撃させようとする。
つまり、最初から哲也の射撃の腕を見込んで哲也に狙いを付けたわけで、「悪の組織」にしてはなかなかクレバーな作戦であった。

ここでキラーQがその本来の銀粉メイクになるのだが、素顔より、こっちの方が若干美人に見えるのが、なんとなく悲しい……
哲也、ライフルを構え、スコープを覗き込み、安心しきっている小田切博士の顔を捉える。
キラーQ「発射前、三秒……」
哲也「……」
キラーQ「何をしている、撃ちなさい!!」
だが、健の顔を見たせいか、哲也の動きが止まり、なかなか引き金を引こうとしない。
……
今気付いたのだが、小田切博士じゃなくて、健を撃った方がよくね?
もっと言えば、バズーカ砲で車ごとふっ飛ばせば、小田切と一緒に健と真理も始末できていたのではあるまいか。
結局、キラーQが代わりに引き金を引き、見事に小田切博士の心臓を射抜く。
まあ、いくら操られていたとは言え、善玉が人を殺すのはまずいとの判断だろうが、そんな方法で良く命中したなぁ。

メカロボ「こいつも始末しましょうか」
キラーQ「いいえ、生かしておきなさい」
だが、例によって例のごとく、確実に敵を殺せる機会を得ながら、キラーQはあえて哲也を殺さず、かと言って同行させるでもなく、その場に放置してさっさと引き揚げてしまう。
のちに、哲也を囮にレッドバロンをおびき寄せる計画だったと分かるが、別にそんなことは哲也を使わずとも出来ることなので、ここは普通に哲也の命を奪っておくか、引き続き暗殺任務、それも今度はSSIメンバーの暗殺をさせたほうが鉄面党にとってお得だったろう。
哲也はほどなく正気に返るが、
哲也(鉄面党に利用されるなんて……俺にSSI隊員の資格はない)
SSIのワッペンをライフルの上に置くと、姿を消してしまう。
しかし、これも、前回の真理同様、哲也の精神状態がどうなっているのかが不明瞭なので、なんかもやもやしたものが残るんだよね。
つまり、催眠状態にある間も本人の人格が維持されているのか、それともその間の記憶が全くないのか……
何故そこに拘るかと言えば、その違いによって、哲也が自分で小田切博士を殺してしまったと思い込むのか、それとも単に鉄面党に利用されたことを悔しがるだけなのか、ストーリー上の重要な分岐が起きるからである。
まあ、哲也がすぐ状況を飲み込んでいることから見て、催眠状態時の記憶は残っていると考えるのが普通だが。
それはともかく、SSIが現場に駆けつけると、すでに熊野警部たちによって射撃地点が特定されていた。

熊野「ワシの思ったとおりだ、犯人はここから小田切博士を狙撃してるんだよ」
大作「ここから? ここから一発で仕留めるなんて、相当な腕の奴だな」
ボス「狙ったのはやっぱり鉄面党ですか」
熊野「いや、このライフルで撃ったんだが、困ったことに坂井君の指紋が残ってるんだ」
大作「えっ、じゃあ哲也が?」
ボス「いや、そんなことは考えられない、これはきっと鉄面党の罠だ」
真理「隊員を辞めるつもりなんだわ」
現場に残された哲也のワッペンを見て、真理がつぶやく。
しかし、ここも、ボスは簡単に罠で片付けているが、刑事の熊野にしてみれば、事情はどうあれ哲也を実行犯として指名手配&逮捕せねばならないと思うのだが、この後のシーンを見ても、全くそういう様子は見えないし、仲間に手錠を掛けねばならないことへの葛藤や苦衷なども感じられず、ドラマとして、もうひとつ盛り上がらないんだよね。
その代わりと言うか、ここから、歩行者天国や路地裏などを舞台に、キラーQを追う哲也の姿が、刑事ドラマみたいなリアルなタッチで4分くらい続く。
スタッフやキャストは大変だったろうが、見てるほうはあんまり楽しくない。
また、夜、ベンチか何かに座って休んでいた哲也の前に熊野警部があらわれ、
熊野「狙撃犯人はワシが捕まえる、君はSSIに帰ったらどうだね」
と、にこやかに話し掛けるシーンがあるが、さっきも言ったように、状況証拠的には哲也が実行犯としか考えられないのに、熊野が頭から別に真犯人がいると信じ込んでいるのが、なんとなく釈然としないのである。
今回のケースでは、熊野たちは狙撃事件に鉄面党が関与しているという証拠すら握ってないんだから、なおさらね。
その辺が、設定の割りに、今回のストーリーにあまり緊張感が感じられない原因にもなっているように思う。
哲也がキラーQを追いかけつつ、自分も熊野や警官たちに追われるシーンなどを想像したら、ゾクゾクするほど面白いのだが。
CM後、哲也は最初にあの女と会ったビルに再び足を運び、そこでとうとう車で逃げていくキラーQを発見、SSIのジープで追跡する。
追跡は夜通し続き、夜が明け、土砂採石場まで来たところで女は車を捨て、土砂を削り取られた岩山を登っていくが、それを哲也がライフルで撃つ。
いや、そんなもん、どこで手に入れたんだ?
あと、ジープも……

それはともかく、平地にいる哲也と、

山の上にいるキラーQが共にライフルで撃ち合うと言う、特撮ドラマと言うよりスパイアクション映画のクライマックスみたいなハードなシーンとなる。
やがて、キラーQはエレキアマゾンと言う戦闘ロボットを出撃させ、開閉式のアームが先端についたワイヤーを伸ばし、哲也を噛み砕こうとする。
戦闘ロボットの出現を知り、直ちに健がレッドバロンで飛んでくるが、それこそキラーQの思う壺であった。
何の気なしに着地したレッドバロンの両足を、前述したアームが真下からがっちり銜え込み、土の中に引き摺り込もうとする。
レッドバロンもジェット噴射で振り切ろうとするが、その牽引力は凄まじく、見る見る足が沈んでいく。

キラーQ「はははは、我らが罠にまんまと落ちたな」
哲也「その声は……」
キラーQ「お前を生かしておいたのは、レッドバロンをこのアリジゴクに誘い込むためだったのだ」
哲也「なんだと」
キラーQ「そうとも知らずにお前は私を追ってきた、はははははは」
自分が囮にされていたことを知り、歯噛みして悔しがる哲也。
考えたら、ちゃんと小田切暗殺を果たした上、自らを餌に哲也とレッドバロンを目的の場所までおびき出すことに成功しているのだから、キラーQってかなり優秀な指揮官だよね。
これでもうちょっと美人だったらなぁ……

キラーQ「アリは獲物を蟻酸で溶かして食べる、アリジゴク・エレキアマゾンもレッドバロンを溶解してスクラップにするのだ」
エレキアマゾン、今度は胸部からパイプを伸ばし、白いガスを身動きできないレッドバロンに浴びせかける。

真理「はっ、溶解液!!」
大作「健、飛べ、スクラップにされるぞ!!」
少し遅れてやってきた真理たちの危ぶむ声に、

健「なあに、兄さんが作ってくれたレッドバロンだ、溶解液に溶けるほどチャチじゃないぜ」
健は、余裕綽々でコックピット内を見回していたが、

左斜め後方を振り向くと、おもいっきり煙が出ていた。
健「あれ?」 とでも言いたげな顔で固まる健を見て、管理人大笑い。
実際は「おっ!!」なんだけどね。
しかし、仲間の一人が催眠術で鉄面党の手先にされるというプロットだけじゃなく、レッドバロンのコックピット内で異常が起きるというシチュエーションまで前週と同じと言うのは重ね重ね芸がない。
と、ここで哲也がライフルでパイプの先端を撃ち、溶解液の噴射を止める。
さらに、無謀にもエレキアマゾンに接近する哲也。
熊野「哲也、逃げろ!!」
真理「哲也ぁっ!!」

仲間の悲鳴も無視して、哲也は自分を押し潰そうと迫るアームの中に手榴弾を放り込む。
哲也「うわっ!!」
その爆発に巻き込まれ、吹っ飛ぶ哲也。

真理「哲也!!」

哲也の身を案じて隠れ場所から飛び出す真理の股間で、今回唯一のチラが炸裂する!!
エレキアマゾンが怯んだ隙に、レッドバロンは漸くアリジゴクからの脱出を果たす。
この後、レッドバロンがエレキアマゾンを倒し、哲也が、走って逃げていくキラーQとメカロボたちを一人残らず射殺して、事件は解決する。
ま、解決と言っても、現に小田切博士を殺されているのだから、SSIの敗北に等しいが……

哲也は仲間のところに戻ると、ライフルをボスに返し、
哲也「ご迷惑をおかけしました」
一礼して踵を返し、その場から立ち去ろうとする。
責任を取ってSSIを辞める気なのだ。
が、ボスは哲也を呼び止めると、あのワッペンを哲也に渡す。

哲也「ボス!!」
ボス「お前の勇気がレッドバロンを甦らせたんだ」
熊野「まさにそのとおり、わしゃ坂井君の行動に真のSSI魂を見たよ」
と言う訳で、予定調和的に哲也はみんなに引き止められ、そのままSSIに残ることになったのだった。
しかし、これ、一応ハッピーエンドのつもりらしいが、なんか素直に喜べないんだよね。
催眠術に掛けられたとは言え、哲也が敵の罠に落ちて機密をばらし、むざむざ小田切博士を死なせてしまったのは事実だし、仲間にも連絡をせずに一人で敵を追いかけた挙句、レッドバロンをおびき寄せる餌になって、危うくレッドバロンをやられるところだったのだから、辞職とまでは行かないまでも、謹慎処分くらいは食らっても文句は言えないような気がするのである。
SSIとしても、小田切博士の護衛に完全に失敗しているのだから、これが「新マン」とかだったらMATの解体論にまで話が及んでもおかしくないほどの失態だろう。
ストーリー的にも、誰も哲也を責めないのでかえって物足りないし、冒頭の哲也と大作の意見の相違も、あれっきり立ち消えになっちゃったしね。
とにかく、「悪の組織」の計画が見事に成功するという、かなり珍しいエピソードであった。
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