金田一耕助をアピールする2回目は映像編。
筆者も見たことないが、横溝正史の戦後の代表作はほぼ執筆直後に映画化されてるんだけどね。片岡千恵蔵主演で。
で、1976年の市川崑による「犬神家の一族」が決定版になったのはいまさら言うまでもない。
しかもその作品で、初めて金田一耕助が原作に忠実な、和服スタイルで登場してるのだ。
上のボックスは、今は亡き市川崑と、石坂浩二の対談などの鼻血モノ映像が入った特典ディスクや、ブックレットがついていて、このお値段なのでとてもお徳。ただ、「犬神家」だけは収録されていないので、下のように別個に買う必要がある。買わなくても借りればいいんだけどね。高いから。
ここでも以前紹介したが、2006年の「犬神家の一族」リメイク版はひどかったなぁ。あらためて考えると、よくあんな企画が実現したものだと。
初期5部作にしても、4作目の「女王蜂」は明らかな失敗作だし、3作目の「獄門島」も、原作の面白さからするとかなり物足りない出来だった。
結構忘れられがちだが、市川崑は、1996年にトヨエツでも撮ってるんだけどね。ファンの間ではなかったことにされている不憫な作品だが、自分は割と好きである。万人にはすすめられないけど。
同じ原作なら、
渥美清が金田一を演じる1977年版の方が遥かに映画として迫力がある。もっとも、ミステリーと言うよりオカルト映画になっちゃってるのが残念賞。それでも、山崎努の虐殺行脚は死ぬまでに見ておきたい秀逸なシーンなので、是非。これもレンタルで十分。
そう言えば、今日の朝刊に、高林陽一さんが亡くなったと出ていたが、その高林監督が、市川崑の「犬神家」より前に撮ってスマッシュヒットした「本陣殺人事件」も外せない。これも、ミステリーとしては原作の妙味を60パーくらいしか引き出せていないが、美しくも悲しい映像と音楽に浸れる佳作だ。とりわけ、高沢順子の存在が光る。
最近は、1979年の「悪魔が来りて笛を吹く」なんかもDVDになって、ファンとしては嬉しい限り。
1970年代の横溝ブームとしては最後になる、1980年の「悪霊島」は、金田一を鹿賀丈史が演じているが、これも一般的にはマイナーだけど、金田一映画としてはかなりレベルの高い作品。少なくとも、原作よりは面白い。
ビートルズの曲がカバーに差し替えられているので、昔、テレビでオリジナルを見ている身としては、どうしてもエンディングで膝から落ちそうになる。これはそのうち詳しくレビューしたいと思う。
テレビ版でも無数の作品が作られているが、やっぱり古谷一行の「横溝正史シリーズ」が質、量とともに最高だろう。
その中でも、作品としてはマイナーな「不死蝶」が個人的にはベストだね。
他は、「仮面舞踏会」「悪魔が来りて笛を吹く」「真珠郎」「夜歩く」「三つ首塔」「悪魔の手毬歌」あたりが優れている。
金田一の映像化作品って、原作の面白さ・知名度と反比例することが多い。稲垣吾郎の5部作でも、一番良かったのは「女王蜂」だった。
それにしても、稲垣版の金田一シリーズって、なんでDVD化されないのだろう。謎だ。
しかし、稲垣版ももう作られることはないだろうし、映画も犬神リメイクがコケてから、一切ないので、金田一ファンとしてはいささか寂しい。この頃はテレビドラマの予算も厳しくなってるから、金のかかる金田一ものは一層難しいだろう。