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「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」


 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(1968年6月16日)

 管理人の特に好きなエピソードである。

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 冒頭、珍しくアマギが声を荒らげている。ポインターの中から、本部のソガに対して怒鳴っているのだ。
 アマギ「何をぼやぼやしてるんだ、落下地点くらい確認できないのか」
 ソガの声「防衛基地のレーダーには何千と言う怪事件がキャッチされてるんですよぉ」
 アマギ「だからコンピューターがあるんだろう、お前みたいなウスノロが良くウルトラ警備隊になれたもんだ」
 フルハシ「オイいい加減にしろ、我々は警察からの連絡を頼りに探そう」
 ソガの声「そうして頂きたいですね。ウスノロの僕じゃ……」
 アマギ「うるさいっ(通信を切って)奴と話してると頭に来る」

 彼らは未確認飛行物体の情報を得て、調査に来ているのだ。それにしても隊員たちがこれだけ感情をあらわにして会話するのは珍しい。しかし、「ウスノロ」って今じゃNGだよな。

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 彼らが車を走らせていると、一台のダンプカーと擦れ違う。その運転席には似つかわしくない若い女の子が乗っていた。
 フルハシ「今の、女に見えなかったか?」
 アマギ「ああ、イカス女の子だった」
 フルハシ「ちくしょう、ダンプなんて運転しやがって」

 冷静に考えなくても、こんな夜中にうら若い美少女がダンプを運転してたらごっつい怪しいのだが、彼らは露ほども疑わないのだった。

 やがて彼らは宇宙船が離着陸したと思われる現場へ到着。と、ダンプの運転手らしき男が血まみれになって倒れていた。そこでようやく、二人はさっきの少女が臭いと気付き、山の下にいるダンに検問をするよう指示する。ダンはダンプカーを追跡するが、宇宙船に攻撃され、崖から落ちてしまう。しかもダンが倒れている間に、さっきの少女が近付いてウルトラアイを盗んでしまう。

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 ダンの目にぼんやりと映る謎の美少女マヤ。演じるのは吉田ゆり(香野百合子)さん、当時、17才くらい。

 翌日、とあるプラネタリウムの中。視界を埋め尽くす星空をたくさんの観客が見上げている。

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 そこのナレーターが別の星にも地球人と同じような人間がいるかもしれないと語るが、意外にもその中に、先ほどの美少女マヤが座っていた。

 「マゼラン星、マゼラン星、第一任務完了しました。迎えの円盤を送って下さい」

 彼女はそこから密かに通信を送るが、それは宇宙ステーションV2にキャッチされる。V2からそのことを知らされたウルトラ警備隊の面々は、電波の発信された地区に厳重な監視の目を光らす。

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 アンヌ「ボウリング場にジャズ喫茶、地下に潜ればアングラバー」
 フルハシ「こいつは若い子ですねえ。ダンプに乗ってた子も17、8でした」

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 3日後、遂に通信を捉えたと聞いて、作戦室に入ってくるアマギ。入り際に前髪を整えているが、これはちゃんと演出された仕草なのか、役者が無意識にやったのか、気になる(なるな)。

 発信源はスナック「ノア」(モア?)だと分かり、ダンたちはそこへ張り込む。

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 そこはスナックと言うか、まさにアングラバーと言った感じの店で、今風(と言っても1968年だけど)の若者たちがバンドの鳴らす音楽の中、気だるそうに踊り狂っていた。

 マヤが無表情のまま、他の若者同様、体を揺らしているのがとても印象的である。
 フルハシたちは制服のままだが、ダンだけちょっと変装している。ダンはマヤに気付いて、テレパシーで呼びかける。マヤも踊りながら受け答えする。

 ダン「聞こえるか」
 マヤ「誰? 地球人ならテレパシーは使えないはずよ。分かったわ、あなたはセブンね」
 ダン「ウルトラアイを何故取った?」
 マヤ「それがあたしの任務だから」
 ダン「地球を侵略するつもりなのか」
 マヤ「こんな狂った星を? 見て御覧なさいこんな狂った星、侵略する価値があると思って?」

 マヤは不意に逃げ出すが、ダンはホールに置いてあるリズムボックスが、通信機だと見抜く。ダンからそれを聞いたソガはいきなり天井に向けて発砲し、店内は真っ暗になる。ムチャするなぁ。

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 彼らはリズムボックスを回収し、マゼラン星からの(マヤへの)返信を解読する。

 アマギ「恒星間弾道弾、既に発射せり、迎えに及ぶ時間なく……」

 この穴開きテープ、昔の特撮には欠かせないアイテムである。しかし、これってコンピューターに読み取らせるためのもので、人間が直かに読むもんじゃないと思うんだけどね。

 アンヌ「迎えに来ないってどういうことなの?」
 ダン「裏切られたんだよ、自分の星に」

 しかし、なんでマゼラン星はいきなり地球を吹っ飛ばそうとしたのだろう? なんとなくムカついたからとしか思えないのだが。

 で、巨大ミサイルはあっという間に地球に近付き、軌道上にあるV2を破壊する。キリヤマたちはウルトラホークで迎撃に出ようとするが、ダンはそれよりもウルトラアイをマヤから取り戻すのが先だと、無断で基地を出て行く。

 当然、キリヤマ隊長はカンカンだが、代わりにアンヌが乗り込んできたので機嫌が直る。

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 ダンが再びさっきのスナックへ行くと、客たちがウルトラアイのニセモノをつけて一斉にこちらを見る。彼らは恐らくマヤによって操られているのだろう、ダンに襲い掛かってくる。

 ダン、意識を失う。

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 やがて目覚めると、無人の店内にゆっくりとマヤが入ってくる。

 この時のスチールが、「ファンタスティックテレビコレクション」に載ってるんだよね。白黒だけど。

 その頃、ウルトラホークはミサイルを途中で壊そうとしていたが、あまりにでかくて頑丈なので全く歯が立たず、泣きそうになっていた。

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 静寂の中、時計の秒針だけが響く。

 マヤ「この星の命も午前0時で終わりです」
 ダン「君も死ぬのか」
 マヤ「私は仲間が迎えに来てくれるわ」
 ダン(テープを取り出して)「誰も来ない、君は初めから見捨てられてたんだ」
 テープを読むマヤ、愕然として声を失う。

 ダン「この星で生きよう。この星と一緒に」

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 マヤは、髪の間に隠していたウルトラアイを取り出し、そのままダンに差し出す。

 ダンはセブンに変身し、ミサイルの中に飛び込んで、進路を変更する。元来た方向へ戻っていくミサイル。結局ミサイルがどうなったのか、具体的に語られていない。まさか、セブン、「倍返しだ!」とか言いながら、マゼラン星へ送り届けたのではあるまいな。

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 マヤは、ダンの帰りも待たず、ジュークボックスのボタンを「J-7」と押す。と、機械から白いガスが噴出して、マヤの体を包む。仲間に捨てられ、異郷にひとり取り残されたマヤは、自ら死ぬ道を選んだのだ。

 ダンが店に戻ると、床に、マヤのつけていたペンダントが落ちていた。

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 ダンの声「何故他の星ででも生きようとしなかったんだ。僕だって同じ宇宙人じゃないか」

 夜の雑踏の中を制服のまま歩くダンの姿が印象的だ。無論、通行人がガン見してくる。

 と言う訳で、着ぐるみの怪獣や宇宙人は出てこないが、極めて叙情的で胸に滲みるお話であった。これは予算の都合で、怪獣の出てこない話にせざるを得なかったと言う事情があるらしいが、逆にその為に、ドラマとして質の高い作品になっているのが皮肉である。

 なにより、マヤを演じた吉田ゆりさんの存在が光る。セブンの中では屈指の美少女であろう。

 (2015年7月13日加筆訂正)


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コメント

私もこの話が一番印象に残ってます。

既出だったら余計な話ですが、
マヤ役の「吉田ゆり」さん、
今は「香野百合子」という名前で俳優座でご活躍ですね。

Re:吉田ゆりさん(02/09)  

とんび様
コメントありがとうございます。
>私もこの話が一番印象に残ってます。

ラストの、なんともいえない物悲しさが最高ですね。

>既出だったら余計な話ですが、
>マヤ役の「吉田ゆり」さん、
>今は「香野百合子」という名前で俳優座でご活躍ですね。

そうですね。でも、大人になられてからはマヤとはかなり印象が違いますね。
この間、テレビ版の「座頭市」に出ているのを見ましたが、世間知らずのお嬢様を演じている香野さんがとても可愛かったです。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

この話は、ウルトラマンシリーズの中でも悲しい話としてよくあげられるようです。自分の星に裏切られて、マヤは自ら自分の命を絶ってしまいました。ダンの言うように地球の人間として生きててほしかったです。悲しくてとてもせつないなって思いました。マヤ役の吉田ゆりさん、綺麗です。

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

むらっち様
コメントありがとうございます。

>この話は、ウルトラマンシリーズの中でも悲しい話としてよくあげられるようです。自分の星に裏切られて、マヤは自ら自分の命を絶ってしまいました。ダンの言うように地球の人間として生きててほしかったです。悲しくてとてもせつないなって思いました。マヤ役の吉田ゆりさん、綺麗です。

自分も大好きなエピソードです。
いずれ、大幅に書き直したいと思っていますが。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

仲間に裏切られたマヤが哀れですね。ダンの“何故地球人として生きようとしないんだ”
とゆうセリフも印象深いですね。それにしてもダンはよくウルトラアイを盗まれますね😅

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

ふて猫様
>それにしてもダンはよくウルトラアイを盗まれますね😅

確かに……。

しかし、久しぶりにこの記事を見たらかなり手抜きですね。そのうち手直ししたいと思います。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

ダンにとって、地球は命懸けで守るべき星
マヤにとって、地球は狂った、侵略する価値もない星

ダンの「この星で生きよう。この星と一緒に」という言葉がマヤに響かないのは当然・・・
だから、彼女には死ぬより他に道はなかった・・・

なんとも胸に突き刺さる話ですよね。

当初、ブームの「巨人の星」のパロディで「他人の星」というタイトルだったそうですが
やはり現行のタイトルの方が良い気がします。

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

影の王子様
>ダンにとって、地球は命懸けで守るべき星
>マヤにとって、地球は狂った、侵略する価値もない星
>ダンの「この星で生きよう。この星と一緒に」という言葉がマヤに響かないのは当然・・・
>だから、彼女には死ぬより他に道はなかった・・・
>なんとも胸に突き刺さる話ですよね。

基本的に暗い話ですけど、素晴らしいエピソードですね。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

この回はWikiで調べたら視聴率は17・9%と下降気味だったそうですね😅それはさておき(何でやねん)ストーリーとしては素晴らしいと思いますけどね。セブンの作品は子供向けではなく、大人も楽しめるような作品が多いですね

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

ふて猫様
>この回はWikiで調べたら視聴率は17・9%と下降気味だったそうですね😅それはさておき(何でやねん)ストーリーとしては素晴らしいと思いますけどね。

ま、言ってもメイン視聴者は子供ですからね。

Re:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

こうして観るとフルハシとアマギが一番肝心なとこを見逃したばかりにダンに災い(とばっちり)が及んだようですがね😅ソガのダンに対する気遣いも立派ですね

Re[1]:「ウルトラセブン」傑作選 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(02/09)  

ふて猫様
>ソガのダンに対する気遣いも立派ですね

ソガは優しい人ですからね。

このレビューももう一度加筆したいと前から思ってるんですけど、なかなかやれません。

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