「破れ傘刀舟悪人狩り」

[DVD] 破れ傘刀舟 悪人狩り DVD-BOX 1 価格：36,625円（税5%込、送料別）

　最近と言うか、だいぶ前からだが、「破れ傘刀舟」にはまっている。1974～77年に放送された萬屋錦之介主演の痛快娯楽時代劇である。時は天保時代、蘭医学の名医にして剣の達人だが、瑞光院と言う荒れ寺に住み、自らメスをふるって（貧乏人には）無償で治療を施す叶刀舟の活躍を描く。全131話。

　気力があれば全エピソードを紹介していきたいところだが、さすがにちょっと無理なので、今回は第1話をメインにその見所をさらっと紹介するにとどめる。そのうち、ベストエピソードだけをピックアップしてネタにするかもしれない。

　さて、記念すべき第1話「闇に光る眼」である。

　まずＯＰ。ちゃーーーちゃ、ちゃちゃーちゃちゃちゃちゃちゃーーーと言う勇ましいオープニングテーマが流れる（わかるかっ）。

　

　襲い来る敵をガシガシ薙ぎ払う刀舟先生。いかにも強そうですねえ。

　他のレギュラーは、寺男の半兵衛（桂小金治）に、

　

　刀舟の弟子で、同じく蘭学医の卵である伊庭弥九郎（織田あきら）。めちゃ好み。

　

　壺振り師やストリップなど、いかがわしいことばかりして日銭を稼いでいる「むっつりお竜」（ジャネット八田）。

　この二人は、どちらも途中で別のキャラと交代する。

　

　様々な商売を手掛け、顔の広い「稲妻のお蘭」（江波杏子）。

　江波杏子さん、とても綺麗で素晴らしい女優なのだが、このＯＰのこの顔だけは何度見てもちょっと笑ってしまう。顔と言うか、仕草と言うか。

　と言う訳で、1話から最後まで通して出るのは、刀舟、半兵衛、お蘭の三人だけである。

　錦之介の豪快な演技とたちまわりもだが、脇を固める彼らの個性的なキャラクターの織り成す雰囲気がこの作品の魅力である。

　冒頭、掘っ立て小屋に済む貧乏人の治療をしている刀舟。顔見知りの仙吉と言う遊び人に会い、高級そうな財布を預けられる。
　しかし、仙吉は家を出た途端、追ってきた武士に斬殺される。

　その刀舟も、帰りがけに、複数の武士に囲まれる。

　

　刀舟「たかが紙入れひとつ、仙公を何故斬った？　たたっ斬るぞこの野郎！」

　あまりの迫力に刺客たちが飛んで逃げてもおかしくないが、シナリオには「一斉に斬りかかる」と書いてあるので、泣く泣く斬りかかる刺客たち。8秒で全員殺される。

　瑞光院、通称「棺桶寺」に帰ってきた刀舟、財布をあらためると、義眼といくつかの家紋を描いた紙が入っていた。

　

　弥九郎は、正確にはこの寺には住んでおらず、正式に弟子入りを許されているわけではないが、刀舟とは実質、師弟の間柄である。

　刀舟「ギヤマンの目玉か。こいつは恐らく長崎のオランダ人に作らせたもんだろう。大身の大名かよほどの金持ちでなければ手に入らねえ代物だぜ」

　

　そこへ米問屋の上総屋の主人が寺を訪れ、7つの娘の目を治してくれないかと頼みに来る。刀舟は貧乏人ならタダで喜んで診るのだが、金持ちの場合は逆になるべく関わらないようにする傾向があり、ここでも一度は断ったのだが、ちょうどそこへやってきたお蘭の口利きで、刀舟に診て貰えることになる。

　初回と言うことで、お蘭自身の長台詞で彼女のことが説明されている。

　お蘭「示談屋のお蘭、夫婦喧嘩から離婚復縁浮気の後始末まで揉め事八方丸くおさめるお節介屋、渡り中間から人足女中子守まで即座に集めてお目に掛ける口入屋。家賃から借金の取り立て、遺産相続の立会いから○○の方法まで、面倒な仕事は一切お引き受けしております。よろず相談承り屋の、お蘭ですよぉー」

　あまりに早口なので、○○の部分はよく聞き取れない。

　お蘭や半兵衛はちょくちょくこうやって小遣い稼ぎに余念がないが、若い弥九郎は対照的にクソ真面目で、

　

　弥「お蘭さん、あなたは金が目当てで！　金儲けのために！　上総屋がどんなに破廉恥な商人かあなたは一度でも考えたことが……私は断るべきだと思います！」
　と、吠えるように叫んで行ってしまう。

　お蘭「どうしたのかね弥九郎さん……でも今時珍しい人よね」
　半兵衛「ウブなんだな」

　

　怒りの収まらないヤクさん、裏の竹林で罪のない竹を切りまくって憂さを晴らしていた。

　刀舟ほどではないが、彼も剣の腕には覚えがあり、しばしば仲間のピンチを救う。

　竹を切って、まるで一発出したように（何と言う下品な表現だろう）スッキリしたヤクさん。

　

　刀舟は上総屋に赴き、娘の目を診察する。

　実は、上総屋は義眼の持ち主である幕府の高官と結託しており、刀舟から（仙吉がスッた）義眼や紙切れを奪い返すため、わざと刀舟に治療を依頼したのだった。ただ、娘が目を患っているのは事実である。

　刀舟の見立てでは、手術をすれば娘の目は見えるようになると言う。ま、時代劇では目の手術は100パーセント成功するようになっているのだが。

　弥「先生私が間違っておりました。親はどうあれあの娘に罪はありません」
　刀舟「あの目に光を与えてやりてえなぁ」
　弥「先生の深いお心も知らずに恥じ入っております」
　刀舟「ふふっすぐ感激するのがおめえの癖だ」

　しかし、上総屋からまた掘っ立て小屋に診療に寄った刀舟を殺そうと黒幕の部下が火薬を仕掛ける。だが、タイミングがあわず、刀舟たちは無事だったが、5歳の子供が巻き添えを食って殺されてしまう。激しい怒りに身を震わせる刀舟。

　

　いよいよ上総屋の娘の手術が瑞光院で行われる。だが、その最中、上総屋の手引きで刺客たちが大挙して乱入してくる。刀舟は刺客には目もくれず手術を続ける。上総屋はどうせ娘の目は治らないと諦めていたが、刀舟の「治る」と言う言葉に、しばし、刺客たちを制止する。

　手術は無事成功し、武器のない刀舟はメスで応戦するものの、窮地に陥る。だが、お蘭が刀を投げて寄越し、刺客たちは刀舟とヤクさんに斬り殺される。

　上総屋は娘の父親と言うことで、殺されずに済む。

　最後、ひとりで黒幕のところへ出向いた刀舟、問答無用で黒幕をぶっ殺す。

　ただ、決まり文句の「てめえら人間じゃねえ、たたっ斬ってやる」と言う台詞は、1話ではないんだよね。2話以降をざっと見ていたが、ほとんど無言で殺す場合が多い。場合によっては条件をつけて相手を見逃している場合もある。「仕事人」のように罠を仕掛けて黒幕だけ始末するケースも見られた。

　それにしても刀舟先生は強い、強過ぎである。

　

　何話かはっきりしないが、ある立ち回りのシーン。

　背後から「うぉーっ」とザコが斬りかかろうとするが、

　

　ギロッと振り向いた刀舟先生の眼光の前に、思わず後じさりしてしまう。

　刀を振るう速度も尋常ではなく、だいたい1秒で3人くらい殺している感じだ。

　で、決め台詞だが、自分がチェックした限りでは第17話「他人の顔」で、原型と思える台詞が出てくる。

　

　刀舟「人の命をなんだと思ってやがんでぇ！（中略）てめえなんか人間じゃねえ、たたっ斬ってやるよ！」

　刀舟先生は、こうして毎度毎度、幕府の役人や大名・旗本の屋敷に乗り込んで、斬って斬って斬りまくるのでありました。目撃者がいようがお構いなしである。それでいて、一切何のお咎めもないのが凄い。ほっといたらそのうち将軍まで斬ってしまいそうである。