続きです。
生まれ育った街へ戻ってきたと言ういづみ、何はともあれ実家に帰るのかと思ったが、早速組織の放った刺客に襲われ、街中を逃げ惑う。
もっとも、彼女は3年前の時点で天涯孤独の身の上だったらしいので、無理に実家に帰る必要はないのだが。
アバンタイトルから流れている「JUST FOR LOVE」はエンディングとは違うフルバージョンなのでちょっと歌い方が異なる。

敵の追跡を逃れつつ、ふと通り掛かったプールバー「バーガー・イン・サキ」のドアをくぐるいづみ。
この何気ない行動が、その後の彼女の運命を大きく左右することになるのだった。
店長の健(湯江健幸)はビリヤード台にいたが、いづみを見てカウンターに入る。
健「いらっしゃい、ご注文は?」
いづみ「バーガーとコーヒー」
健「オッケッ」
と、早速客の男がちょっかいを出してくる。最初はコインを後ろから投げる程度だったが、いづみが動じないのでイスを蹴り倒し、挙句の果てにナイフを突きつける。
いづみ「私を、怒らせないで!」
男「セクシィだぜ、怒った顔が」

健は慣れているのか、男たちの様子を見ても笑ってるだけだが、これって完全な営業妨害になってないか? 笑ってる場合じゃないだろう。相手がいづみだったから良かったものの、普通の女の子だったら逃げ出してるぞ。

いづみは相手がいきがって出したバタフライナイフを奪って、華麗なナイフ捌き(別の人がやってるんだけど)を見せ、テーブルに突き立てる。このテーブルも全然別の場所に刺しているんだと思う。
この店は実際に営業している店舗を借りて撮影していると見え、極力、壁や床に傷が付かないよう配慮されている。

結局男はいづみにボコボコにされ、路上へ叩き出される。ちょうどそこへ、主役の一人・湯浅恵子(土田由美)が子分を三人連れて通り掛かり、男を引き摺って店内に入ってくる。
恵子「あなたね、あたしたちの遊び場随分荒らしてくれるじゃないの!」
いづみ「あなたは?」
シナリオの都合上、いづみがストレートに尋ねているが、本来のいづみの性格なら相手のことなど知ろうとはしなかっただろう。
子分のショウコが本人に代わって名乗る。
ショウコ「暴力だけがワルじゃない、初めてワルの世界に合理精神を持ち込んだ、闇の学生中央委員会会長、湯浅恵子、その人さ!」 恵子「よしなよ、照れるじゃん。……こいつはあたしの子分でね、メンツの手前、このままって訳には行かないんだよ」
高まる緊張感、だが、そこで藤原と言う刑事が店内を覗き込んでいると健が注意を促す。
その顔を見て、いづみが顔色を変え、そのことに健も気付いた様子。健はハンバーガーをいづみに投げて、「お帰りはあちら」と、裏口を指差す。
いづみ「ありがとう」
健「また会いたいね」
恵子「待ちな、名前は?」
いづみ「いづみ」
恵子「いづみ?」
いづみと聞いて、恵子と健が一様に何か思い出したような顔になる。
藤原を避けるようにいづみは裏口から出て行く。その横顔をチラッと見る藤原。

藤原を演じるのは地井武男さん。ほんと、いい役者さんでしたね。
大きなくしゃみをしてから、「おう元気か」と、男たちの横っ面をかなり激しく叩く。さらに、「デカが来たからってしけた面すんじゃねえ、てめえら、ワルなら堂々としてくれよ」と、着ていたコートを男たちに思いっきり投げ付ける。
ここは、まあ最初だから藤原と言うキャラを印象付けるためにややオーバーに演じさせているんだろうが、明らかにやり過ぎ。これじゃ完全なヤクザである。

勤労青年(本業は大学生らしいが)の健に対しても、やたらと乱暴な扱いをするのである。
藤原「おい、今行ったの誰だ?」
健「さあね、知らねえよ」
藤原(健のタイを思いっきり引っ張って)「てめえ、厄年、大殺界ど真ん中のデカを舐めるなよ~」
この
「厄年、大殺界の~」と言う台詞は、藤原が相手に凄む際によく使うフレーズである。
健はそれでも知らないと言い張るが、恵子がぽつりと「いづみだってさ」とつぶやく。
ここまでがAパート。

CMあけから、いづみがトレンチコート軍団に追い掛けられている。ただ、何よりここは、BGMに「セーラー服反逆同盟」の主題歌「SHADOW OF LOVE」が流れている点に注目。初めて見たときはかなり驚かされた。と、同時にとても懐かしい気持ちにさせられた。
しかし、同じ年(1987年)に放送されていた他局のドラマの主題歌を、堂々と流すと言うのはさすがにどうかと思うけどね。いくらA-JARIが音楽を担当しているにしても。まあ、でも、やっぱり良い曲であることは間違いない。ただ、この掟破りの選曲はこのシーンだけである。
ちなみに音楽に気を取られて、大抵の人は、追っ手の一人がファイヤーアクションまで披露していることに気付かない。そもそも昼の屋外なので、火があまり目立たないのだ。
燃え損である。 
「SHADOW OF LOVE」が流れる中、埠頭へ急ぐ健と恵子の姿があった。
健が恵子を乗せて、ぎこぎこ自転車をこいでいる姿が、トホホな感じがして好きなシーンである。
恵子「もっと早くこいでよ」
健「うるさいんだよお前は」
恵子「うるせえんだよ」
悪態をつきながら、最後は可愛らしい笑顔を見せる恵子。土田由美さんは、パッと見、地味だが、見ているうちに段々魅力が開花していくような、そんな女優さんである。

赤い灯台の立つ埠頭の見える場所まで来た二人。
1話の感じでは、二人は恋人同士っぽいのだが、2話以降はあまりそういう雰囲気は見られなくなる。
恵子「あんたもさっき思い出してたでしょ、この埠頭の伝説を」
健「それでここへ来たのか……」
恵子「不思議だね。死んだ奴のこと思い出すなんて」
健「昔、俺たちに真似の出来ない生き方をした奴がいる……それが、いつも語り出しの伝説のな」 二人が回想する形で、いづみの過去が明らかにされる。だが、この辺の会話はいかにも生硬で、わざとらしい。そもそも互いに「伝説」については良く知ってるのだから、二人して改めてそのことを長々と説明する必要はないだろう。ここは、「伝説」について知らない人間に対して健や恵子が説明すると言う形を取るべきだったろう。
それはともかく、健の話で、五条いづみが3年前、15歳のときに殺人罪で藤原たちに追われていたことが分かる。
健「ワル以外の何者でもなかった。街中の奴らに恐れられて嫌われた。けど、ほんとはみんな憧れてた」
また、いづみが殺したとされる18歳の女子高生は、恵子の先輩であり、当然、恵子はそのことでいづみを恨んでいた。
健「五条いづみは死んだんだ。みんな昔の話だよ。……でも、その当時のワルたちは伝説だけを信じたんだよ。この埠頭で起きたラストバトルだけを」
再び健のわざとらしい説明台詞で、いづみの最後が描かれる。

警官隊に埠頭の先に追い詰められ、ボコボコにされるいづみ。この時のいづみの顔、なんか凄いことになっているが、それだけ熱演されていると言うことだろう。
いづみ「誰も、何も分かっちゃいない……」 いづみはそう言い残すと、顔から海へ突っ込んでしまう。
健「それっきり死体は上がらなかった。あんなにワイルドな奴ってもういねえな。偶然同じ名前だったんだよ、それだけのことさ」
しかし、そんな有名人だと言うのに、恵子も健もいづみの顔を全然知らないと言うのがちょっと気になるんだけどね。恵子といづみは同い年みたいだし。
二人が話しているうちに日が暮れてきた。そんな中、「伝説」の場所である例の埠頭を、いづみが敵に追われて走っているのが見えた……。
つづく。